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【昭和】固定電話

家に電話が来たのは中学生の時だった。
クラスの名簿には氏名、住所そして電話番号が記載されていたが、我が家の欄に電話番号が入ったのは一番最後で、それまで正直恥ずかしかった。電話が来たことよりもその名簿の欄が埋められてことの方がうれしかった。

小学生の時はアパート住まいの我が家。電話が無いので、連絡先の電話番号は大家さんの電話番号。
電話がかかってくると、大家さんの家に伺って使わせていただいていた。
中学の時は一軒家を借りて住んでいたが、大家さんの家までは50メートル以上あったと思う。呼びに来てもらうのも大変だし、電話口まで行くのも大変だったはずだ。
子供である自分が電話に出ることはなかったので、両親がどんな気持ちで使わせてもらっていたのか分からない。意外に当たり前と位置付ける世代だったのかもしれない。

サザエさんのアニメに出てくるように当時の電話機はダイヤル式でカバーをかけていた。
昭和あるあるである。
テレビにしてもカバーをかけていたが、あの感覚というのはなんなんだろう。大切な物が汚れないようにするためなんだろうなあ。今では考えられないですね。

高校卒業時、これでみんな故郷を離れていくという節目だと感じて、ずっと好きだった中学の時の同級生に最後に会いたいと思い電話した。
勇気を出して電話した。その時のことは覚えていないが、たぶん彼女の親が最初に出るのを恐れたんじゃないだろうか。でも親と会話した記憶はない。平日の日中で、仕事で外出しているであろうと確信して電話したんだと思う。
固定電話にはそんな勇気が必要だった。

社会人になり独身寮に入っていた。
寮にある電話機は2台だけ。
寮に住んでいる社員は数十名。
だから夜は電話機の取り合い。みんな付き合ってる女性と電話したい。
電話の側にいて順番を待ちたいところだが、ボックスがあるわけでもないから話は筒抜けになってしまう。会話を聞くわけにはいかないので、時間を空けて自分の部屋から電話が空いているか見にいく。
恋愛がうまくいくかは固定電話に影響されていた。

今や誰でも携帯電話を持ち、気軽に電話できる時代。
実にうらやましい。

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