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「ネタバレ投稿」どこから違法? 広告主に責任は グレーゾーンに迫る【時事ドットコム取材班】(2022年02月21日10時30分)

 作品の内容や結末を書き起こし、無断で公開して広告収益を荒稼ぎする「ネタバレサイト」の被害が後を絶たない。2022年2月には、漫画のせりふを丸写ししていたサイトが著作権法違反容疑で摘発されたが、せりふや結末に触れつつ感想をウェブ上に投稿するファンは少なくない。作品の内容を明かす行為はどこから「違法」になるのだろうか。サイトの収益化を許す広告主側に責任はないのか。問題のグレーゾーンに迫った。(時事ドットコム編集部 太田宇律

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「感想」や「引用」免罪符に

 福岡県警は22年2月3日、漫画「ケンガンオメガ」のせりふや情景などを詳しく文字起こしし、無断公開したとして、ネタバレサイト「漫画ル」=閉鎖=を運営していた東京都内のIT関連会社と、金沢市在住の代表者の男を著作権法違反容疑で書類送検した。文字起こしと共に無断公開していたコマの画像はスクリーンショット機能を使って漫画アプリから複製したとみられ、男は「引用の範囲で、自分が著作権を持っていると思っていた」と容疑を一部否認したという。

漫画のせりふやコマの一部を無断で複製し、福岡県警に著作権法違反容疑で摘発されたネタバレサイト「漫画ル」の記事。サイトは既に閉鎖されている(小学館提供)

 閉鎖前の「漫画ル」のトップページには「漫画の感想・ネタバレ・考察・批評・レビュー・予想して展開を楽しむサイト」との記載があり、男は「漫画が好きな人同士で情報交換できるサイトを作りたかった」とも供述した。しかし、実際には多くが他人の著作物の丸写しで、独自の感想や考察が占める割合はわずかだったようだ。実際、「ケンガンオメガ」53話については、漫画の内容やせりふが35行にわたって詳述されていたのに対し、感想はたった1行だけだった。

悪質ネタバレ「海賊版と同じ」

 「行きすぎたネタバレサイトは、漫画をそのまま無断転載している海賊版サイトと何も変わらない」。そう憤るのは、ケンガンオメガが連載されている小学館の漫画アプリ「マンガワン」編集長の和田裕樹さんだ。小学館では現在、作品の内容を無断で文字起こししているネタバレサイトをおよそ300件確認しており、削除するよう順次警告しているという。

 「マンガワン」では基本無料で漫画が読めるが、無料公開に先立って最新話を楽しめる有料サービスもある。和田さんは「漫画ル」の摘発を「画像転載だけでなく、文字をそのまま抜き出すネタバレサイトも著作権侵害に当たるという先行事例を作ることができた」と評価し、「被害額の算定は難しいが、漫画家に入るべき収益を勝手にかすめ取られているのは確かだ」と説明。悪質なネタバレが作家の創作意欲を減退させてしまうことも懸念し、「他人の著作物を無断使用して収入が得られるなら、苦労して創作する意味がなくなってしまう。漫画家は本当に大変な仕事なのに」と嘆いた。

小学館の漫画アプリ「マンガワン」公式サイトに掲載された、ネタバレサイト「漫画ル」の摘発に関する告知

「早バレ」で荒稼ぎ

 ネタバレの中でも特に悪質なのが、何らかの方法で発売日より前に作品を入手し、内容を明かす「早バレ」と呼ばれる行為だ。こうした「早バレ」情報をサイトやユーチューブ動画などで紹介すれば、物語の展開が気になるファンが殺到し、多くの広告収益が見込める。実際、2017年に熊本県警などが摘発した「早バレ」サイトは、閉鎖までに3億円を超える広告収入を荒稼ぎしていたことが分かっている。

 記者が確認したある早バレサイトは、週刊少年ジャンプ(集英社)の人気漫画「ONE PIECE」最新話の展開を発売4日前の時点で詳述しており、正規の漫画購読サービスの広告が複数掲載されていた。早バレを読みに来た人が広告を通じて正規サービスの有料会員になると、サイト運営者は広告仲介業者から「成果報酬」が得られる仕組みで、サイトには「ONE PIECEがお得に読める」などと、正規サービスを宣伝する文章も添えられていた。

広告主の責任は?

 海賊版サイトへの広告掲載をめぐっては、広告費の支払いを「著作権侵害のほう助に当たる」と認定した判例もある。この早バレサイトへの広告出稿について、広告主側はどう考えているのだろうか。サイトで宣伝されていた漫画購読サービス「Amebaマンガ」と、書籍や動画の配信サービス「U-NEXT」それぞれの運営会社などに見解を尋ねた。

漫画、動画配信サービス会社のほか、広告を仲介した業者も取材しました。合法と違法の境目はどこにあるのか。後半では、専門家の話も紹介します。

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「ネタバレ投稿」どこから違法? 広告主に責任は グレーゾーンに迫る(時事ドットコム)