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永代供養墓プロジェクト入門5      永代供養墓の規約 ──利用者の義務と権利

お寺と利用者の約束ごと

 永代供養墓を運営していくには、利用者との間に、規約をつくることが必要となります。

 一般的にお寺と檀家との間には、必ずしも規約等の約束事が定めてあるわけではありません。近年は、何らかの約束事を定めるお寺も増えていますが、もともとは檀家の間で何となく伝承されてきた約束事です。ところが永代供養墓の利用者の多くは、新たにお寺と関係を結ぶわけですから、当然、以前からの約束事は知りません。そのため、新たに明文化された規約が必要となってくるのです(現代においては、檀家との間でも規約を定めることが必要でありますが)。

 永代供養墓利用者との間の規約は、概ね次のような項目が必要となってきます。

 お寺が行う永代供養の内容、宗派の問題、会員・檀家としての権利と義務、会費、葬儀や法事の依頼について、納骨時の手続き、使用権の譲渡不可、遺骨返還の可否、等々です。

 こうした規約をつくる目的は、新たな利用者に、お寺との関係を理解してもらうことと、お互いの誤解でトラブルにならないようにすること、などです。

お寺側のひとりよがりの規約

 私は、永代供養墓関連のコンサルティングを多く行っているため、個々のお寺の規約を目にすることは少なくありません。ただ見せていただく規約は、お寺側の一方的な権利を記しているだけのものが多く、その権利も、一般の人の感覚では、かなり強い強制と感じるものが多いのが現実です。おそらく規約を定める時、前述の「お互いの誤解でトラブルにならない」ことを強く意識するあまり、約束事が厳しく定められていることが多いのだと思います。例えば、○○しなければならない、○○を怠ったら契約を解除できる、○○があってもお寺に責任は無いといったことです。

 そうした厳しい約束事を定める気持ちはわからなくもありません。新しい利用者の中には、問題のある人が出てくる可能性も無いわけじゃありません。ただ、大半は常識的な人であります。そういう人が、こうした一方的な規約を見たら、どう思うのだろうか、と思います。

 「やけに厳しい内容だな、私たち利用者はいろいろ義務が多いのだな、何か不義理をしたらすぐに契約解除されるんだ」と感じ、その結果、「これは規約だけじゃないな、このお寺は普段からこういう感じなんだ」となっていきます。簡単に言えば、規約を読むと、お寺の印象が悪くなるということです。

 もちろん、問題のある人が出てきた時に、「規約に書いてありましたよね」と言えるようにすることは大切です。でも、そうしたトラブルを怖れるあまり、他の普通の方々が持つお寺の印象を悪くしてしまっては元も子もありません。

利用者の権利を大切に

 私はお寺が規約を作成する際には、利用者の義務等の項目については、必要最小限にして、その分、利用者の権利についての項目を増やすことを勧めています。

 規約に書かれていないような問題でトラブルになった時などは、ある程度はお寺が譲歩してもいいのじゃないかと思います。お寺が正しいと思うことを押し通すことで、傷口を広げてしまう可能性もあるのです。それにお寺が正しいと思うことの中には、社会の側から見て、非常識と感じるものが少なくありません。だからこそ規約の内容も、そうした一般社会の感覚を意識しながら作成する必要があるのです。

 その意味では、外部の人の意見を聞くことも重要です。永代供養墓の規約に限りませんが、一般の人がお寺にどんな印象を持っているかは、常に意識する必要があると思います。

 

 

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