ペットは賢いのか?

賢馬ハンスとモーガンの公準

低次の心的能力によって説明可能な行動は高次の心的能力によって説明してはならない

ペットを飼っている人と飼っていない人とでは話が噛み合わないことがよくあります。

「犬や猫は人間の言葉を理解できると思いますか?」と聞くとペットを飼っている人と飼っていない人では回答に大きな差が出ることが予想されます。

日常会話でも、ペットを飼っている人は自分の飼っている犬や猫がどれだけ賢いのかを力説してきます。

しかし、犬や猫を飼っていない人は右から左へと聞き流していることも多いでしょう。

果たして、ペット(犬や猫)は人の言葉を理解できるのでしょうか?

19世紀末から20世紀初頭にかけてハンスという馬がドイツで話題になりました。

なんと、ハンスは簡単な計算問題を解くことができたというのです。

例えば、3+2という問題が出されると、ハンスは蹄を地面に5回叩きつけました。

人々はハンスを賢い馬だと称賛し、たちまち人気者になりました。

しかし、ハンスは計算問題を本当に解いていたわけではなく、出題者の微妙な仕草から回答を読み取っていたのです。

ここでモーガンの公準という考え方が登場します。

モーガンの公準とは「低次の心的能力によって説明可能な行動は高次の心的能力によって説明してはならない」というものです。

つまり、ハンスの計算能力(高次の心的能力)は仕草を読み取る能力(低次の心的能力)によって説明可能なので、ハンスに計算能力があると考えることは誤りというわけです。

これと同じようなことがペットにも言えることではないでしょうか?

ペットが言われた通りの行動を取った時に(お手など)、人間の言うことを理解できる(高次の心的能力)賢いペットと捉えるのではなく、オペラント条件づけ(低次の心的能力)による行動だと捉える方が妥当ということです。

参考文献:

Sober, E. (1998). Morgan's canon. In D. D. Cummins & C. Allen (Eds.), The evolution of mind (p. 224–242). Oxford University Press.

Morgan C. L. (1894). An Introduction to Comparative Psychology, Revised Edition. London: Walter Scott.

Bruni, D., Perconti, P., & Plebe, A. (2018). Anti-anthropomorphism and Its Limits. Frontiers in psychology, 9, 2205. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2018.02205