働きアリはなぜ働くのか?

真社会性の不思議

働きアリもヒトも自分の遺伝子を多く残す為に働く

突然ですが、皆さんはなぜ働きますか?

働く理由はさまざまでしょうが、進化心理学的にはヒトが働くのは「より多くの資源(お金など)を獲得し、より多くの配偶者を見つけ、より多くの子どもを産む為」です。

では、働きアリはなぜ働くのでしょうか?

アリやハチは真社会性昆虫と言います。

真社会性の種では労働の分化が完全に進んでおり、働きアリ子育てを、女王アリは出産をします。

つまり、働きアリたちは、自分の子を持たず、巣を守り、女王アリの子を育てることに一生を捧ぐのです。

よくこの話が出ると、自分の身を犠牲にしてでも仲間を助けようとするような姿勢に感動される方が多いようですが、1つ注意が必要です。

それは、アリにとっての仲間とヒトにとっての仲間は異なるということです。

働きアリたちは全て同じ巣の女王アリから生まれた姉妹ですが、ヒトにとっての仲間とは血縁関係がありません。

さらに、ヒトにおいて、自分と子の血縁度は50%、自分と兄弟(もしくは姉妹)の血縁度は同じく50%ですが、働きアリと子の血縁度は50%なのに対し、働きアリ同士(姉妹)の血縁度は75%です。

つまり、女王アリから生まれてくる姉妹を育てる方が、自分で子を産むよりも多くの遺伝子を残せる為に働きアリは働き続けるのです。

もちろん、ヒトにとっては仲間(遺伝的には赤の他人)を助けても遺伝子を残せるわけではないので、ヒトは働きアリのようにはならないのです。

参考文献;

Johannes Gutenberg Universitaet Mainz. (2018, September 7). A study of ants provides information on the evolution of social insects: One gene in particular determines whether an ant becomes queen or worker. ScienceDaily. Retrieved March 29, 2020 from www.sciencedaily.com/releases/2018/09/180907110434.htm

BOURKE, A., & FRANKS, N. (1995). Social Evolution in Ants. Princeton, New Jersey: Princeton University Press. doi:10.2307/j.ctvs32s3w