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高専プロコン審査委員やってみた

ということで、第34回全国高等専門学校プログラミングコンテスト福井大会で課題部門の審査委員を務めてきました、ウルトラスーパーデラックスエンジニア(自称)の山地です。
高専プロコンの審査委員記なんて今まで見たことがないのでちょっと書いてみようかと思います。
実際の審査の空気感はHACK UさんのYouTube配信などでも見てもらえると思いますが、審査委員の腹の内は見えないのでそのあたりを伝えられればなと思います。

この記事は全国高等専門学校 プログラミングコンテスト OFFICIAL WEBSITEに掲載されている本選実施要項の14ページ、「2.4 本選審査手順について」を片手に読むことが推奨されます。

ちなむと母校の後輩たちの道案内したり先輩と呑みが生えたりもしたので実は0日目が発生していましたが、それはまた別のお話です。

審査委員控室

1日目

審査委員は8:30会場集合です。
会場設営を行ってくれているスタッフの皆さんは小耳に挟んだ感じだと7:30には遅くとも会場に入られているようでした。
スタッフやプロコン委員の皆さんには頭が上がらないなと感謝しつつ、弊社の業務開始時刻より30分早い集合時間にちょっと焦りつつ会場に向かいました。

なんやかんや(開会式とか会議とか)があったあと、10:10〜 ついにプレゼンテーション審査が始まります。
学生の頃の緊張を思い出しながら開始を待ってた気がします。特に審査委員席で横にいらっしゃった和装の似合う吉田先生や、座長の米子高専の河野先生は自分が学生としてプレゼンテーション審査に臨んでいたころからいらっしゃる方だったので、そういう意味でも昔を強く想起しました。

プレゼンテーション審査

さて、審査委員はどういうところに気をつけて発表を聞いているかについて、自分の例を説明しておきます。(もちろん自分と観点の異なる先生もいます)
審査の観点は本選実施要項では以下のようになっています。

独創性(最重点),システム開発の技術力(プログラムソースリストを含む),記述力,発表能力,有用性等を総合して評価します。

これと、自分が学生だったころの経験も踏まえて、自分は以下のような点により注目して発表を聞いていました。

  1. 【独創性】システムの独創的な点や特徴をちゃんと話せているか

  2. 【技術力・有用性】制作上のポイントなど(技術的な課題があればそれをどう解決したのかや、開発に至った経緯など)

  3. 【発表力・記述力】発表が練られているか(質疑応答のスムーズさ、発表の聞きやすさ等から考えています)

  4. 【有用性】対象者が誰か、自分たちが対象者とならないような作品の場合、想定した対象者にヒアリングなどを行っているか

個人的には、原稿を頑張って覚えてきました!という雰囲気のものよりも、今話す内容を紡ぎ出しながらも資料としてスライドを効果的に用いるようなものが好みです。今年でいうと特に熊本高専の転生将棋や、神山まるごと高専のbiblio connectの発表はそれでした。
他に印象に残っている発表は松江高専のJoint Drawです。彼女の発表も、作品の世界観が全面に出ていて聞き入りやすい、わかりやすいものだったと思います。

もう少しメタ的な視点から書くと、彼ら彼女らの発表から感じたのは、解決すべき課題が身近であることがいかに作品にいい影響を与えるか、ということです。
自分の中に課題感も解決策もある状態で進む発表は課題感を聞き手に共有しやすいようです。
また、解決策である作品を作成する過程で経験した技術的な詰まりは質疑応答に生かされているように思いました。
自分が課題の中心にいることで作品にもこだわりが現れていて、ユーザー的な視点から見たときの完成度にも影響がありそうですね。

次回プロコンの作品で解決する課題を選定するときは、ぜひ身近なところから探してみてほしいです。

その他

この日はこの後17:00まで昼休憩1hとセッション間休憩15min x 4を除くと5時間くらい発表を聞いてたようです。
学生のころは自分の緊張で考えたことがなかったですが、審査委員も長時間座りっぱなしで話を聞いていて、やってみると大変でした。
ちなみに、昼に食べるお弁当はXを観測した限り学生の皆さんが頼めるものと同じようでした。

プレゼン発表後、情報交換会に出席して諸高専の先生方や審査をされている他の企業の方に挨拶したりしてました。
学生のころから知っている先生に会えたりするのが楽しかったですね。
写真は壇上で喋る弊社社長です。

2日目

この日も審査委員は8:30集合で、9:00からデモンストレーション審査です。

デモンストレーション審査

再び本選実施要項から審査の観点を引用しておきます。

独創性(最重点),技術力,有用性,操作性,発表能力,発表掲示,完成度等を総合して評価します。

今回の課題部門の作品では、テーマが「オンラインで生み出す新しい楽しみ」であることから、特に独創性はどのチームも見劣りしないものだったと思います。

デモ審査で独創性に次いで重要視されていたものは、システム全体としての完成度だと思います。
自分も一エンジニアとしてUIデザインが洗練されているものには目を惹かれましたし、デバイスなど物理的にモノを使っている作品ではそのデバイスの耐久性等も気になりました。
システムのどこまでを自分で開発して、どこを既存サービスを利用して時間を作るかという点も面白かったですね。特に今回Google Cloud Platformを利用した作品が多く、プロコンの開発体系もよりモダンに、より実運用に近いものに移り変わっているんだなと感じました。

また実際に作品を見るとプレゼンテーションの時点とは良くも悪くも印象が変わります。プレゼンは非常に丁寧だったのに実際の作品は実装できている部分がほぼない作品もありましたし、逆にプレゼンで聞けた内容よりも実物の動きがよく「これプレゼンでもアピールしなよ!」と言われている作品もありました。
デモ審査もプレゼン審査と同じだけの評価点を持つので、ないがしろにせず、ちゃんとデモ審査のストーリーを組めているといいですね。

特に阿南高専のCyber Warsはデモ審査が上手だったと思います。一人が喋りながら他のメンバーが実機を操作して様子を見せてくれるため説明がスムーズで、実際に使うシーンを想像でき、発表時間ぴったりに終わるよくできたデモでした。

審査委員は前日にプレゼンを聞いているため、デモ審査では基本的な説明はほぼ必要ありません。プレゼンの内容を繰り返すような作品もありましたが、次回のプロコンでは実際の動作を見せることを第一にデモを見せてもらえると嬉しいなと思います。

審査会議

デモ審査と同時進行でマニュアル審査が行われており、すべての審査が終了し、全審査委員が評価をつけ終えたところで審査会議が始まります。
この進行については 本選実施要項 2.4 本選審査手順について の II.選考の流れ を見てみてください。
このとき重要なのは新増沢方式が採用されているという点です。評価の点のみではなく、作品を比較したときにどちらがより優れていると審査委員に判断されるかも影響するので、時折審査の点では上回っていても順位決定にすすむと結果が変わっていることもあります。

独創性や有用性をきちんとアピールできていると良いですね。
このようにして最優秀賞、優秀賞、特別賞を決めた後、佳作の選定があります。
佳作とは「本選まで出場したものの、内容がそぐわない作品」に与えるもののことです。基本なさそうな雰囲気でしたが、あまりにも出来が悪いとこういうものをもらってしまうので、最低限本質的な部分だけでも動く状態にできていることが求められているようです。

この後はみなさんと同じく講演を聞いて閉会式参加です。

おわりに

今回プロコンに審査委員として参加して、個人的には面白かったです。
特に自分が参加学生だった頃は全チームのプレゼンを聞くなんて忙しくてできなかったので、それができたのは良かったと感じます。
また、今の学生の技術力を目の当たりにすることで、自分も力をつけなければとモチベーションが高まる良いイベントでした。

来年の課題部門のテーマは「ICTを活用した環境保全」です。今年よりも難しいテーマですし、シングル・ボード・コンピュータ(SBC)などを積極的に取り入れたデバイスを活用したシステムが増えそうで個人的にはワクワクしています。

自分は学生時代ずっと課題部門に出ていたので、来年も課題部門の審査ができるといいなと思います。
プロコン会場で会ったあなた、また来年奈良で会いましょう。会っていないあなた、来年はその技術力を奈良で見れることを楽しみにしています。

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