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「煽る」という言葉にメディア関係者が鈍感すぎる!

昨年12月14日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)で同局社員、コメンテーターの玉川徹氏が

「僕、やっぱり感染症に関してはある種、煽ってるって言われるくらいでいいんじゃないかって、ずっと思ってやってきたんですよ。結果としてアイツは煽るばっかりで、そんなに大したことは起きなかったなっていうんだったら、それの方がいいって思ってる」

と発言したことは大きな話題になりました。また国際政治学者の三浦瑠璃氏が元旦の『朝まで生テレビ』でこんな発言をしています。

玉川氏と三浦氏は著名なマスメディア言論人です。発言はSNS上でもよく取り上げられます。三浦氏はともかく玉川氏については「反日サヨク」という評価がありますが、あれは「反体制芸」というもので右派が釣られています。そして彼を賛美する左派も情けない。90年代までの左翼やリベラルは「テレビを見ない」ということが知的、文化的の証でした。ところが大衆的、商業的の権化とも言える朝のワイドショーの発言に左派が一喜一憂する現象――。むしろ今時の左翼言論が心配になります。

それから玉川、三浦両氏が軽々と「煽る」という言葉を使ったことに愕然としました。本来、マスコミ各社にとって「煽る」「扇動」とはNGワードではないでしょうか。

やはり第二次世界大戦で新聞が戦争を煽ったという批判は根強い。戦後、日本の多くの新聞が反体制色を強めたのもすなわち自身らの過去を隠蔽する意味もありました。「マスコミが煽った」という指摘に対して躍起になって自己弁護、弁明を続けてきました。

この現象、平成初期に話題になったあの事件にちょっと似ているような気がして・・。趣味の世界だけど少しお付き合いください。

八百長発言の元SWS・北尾光司が追放された

優勝経験無しで横綱に昇進した元双羽黒ことスポーツ冒険家、格闘家、プロレスラーの故・北尾光司氏。彼はメガネスーパーが設立したSWSというプロレス団体の試合で外国人選手に「八百長野郎この野郎、八百長ばっかりやりやがって!」と言い放ちました。俗に言う「北尾事件」です。同発言により北尾は解雇処分。同団体、プロレス業界はもちろんファンにも影を落とすことになります。

「プロレスが八百長? 当たり前じゃないか」

そう考える人も多いことでしょう。しかしレスラーたち、いやファンにとっても絶対に看過できない発言なのです。

日本のプロレスの草創期、すなわち力道山時代以来、「八百長」との指摘は根強くありました。だから流血戦だとか「グラスを噛んで食べた」「酒を何升も飲んだ」という不毛な誇示も「レスラーは強い」という必死のアピールだったのです。

そしてアントニオ猪木が「こそ最強の格闘技」を掲げ異種格闘技戦を繰り返したのも一つに「プロレス八百長説」を払拭する意味もありました。北尾発言はこうした長年の苦悩と努力に踏みにじったものです。

もし八百長発言が「観客席」からのヤジだったら大事には至りません。そんなヤジは慣れっこだから。しかし「八百長」という世間のレッテルと戦うレスラー当事者から発された点に問題があるのです。ではこの現象を玉川・三浦発言に置き換えてみましょう。

玉川・三浦というメディアパフォーマー

両氏とも立場、肩書は異なりますがしかし「発信する側」であるのは変わりありません。このため「煽る」「扇動する」という行為の危険性、あるいは歴史的にどういう意味を持つのかも十分理解しているはず。いや理解していなければなりません。

それがいとも簡単に「煽る」という言葉を口にしたのは北尾事件と全く同じこと。大手マスコミが賢明に隠蔽してきた「煽る」をいとも簡単に認めてしまったのです。仮に批評家や視聴者から「煽る」という指摘が起きた全力で反論すべき事柄ですが、ご丁寧にも自身らで「煽る」を認めています。

しかも本来は他メディア側が批判すべきことなのに、玉川発言の支持派の方が多い気がしてなりません。昨年はトイレットペーパー不足やマスクの買い占めも起こりましたが、これもマスコミ報道の影響大です。これも「煽る」という行為に対する自省がまるでないからでしょう。

玉川・三浦発言とはすなわち現状のマスコミ報道の儀表というべきものでしょう。しかも本人たちがまるで「無自覚」というのが何よりも恐ろしいです。

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