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TBS「マツコの知らない世界(自動販売機の世界)」に関する補足

はじめに

2022年8月23日(火)の放送をご覧下さった方々、お時間いただきありがとうございました。皆さまが少しでも自動販売機にご興味をお持ち頂けたのであれば、出演した意義があったと感じます。

さて、放送時間は約30分でしたが、実際のスタジオ収録はおよそ2.5時間近く行われました。秋葉原でのロケを含むと、更に多くの時間を頂戴したことになります。スタッフの皆さま、自動販売機メーカの皆さま、商品を提供してくださった皆さま、改めて御礼申し上げます。

そのため、本記事では「OAには乗らなかったものの収録時にお話しした内容」やその他補足事項について、備忘録的に記したいと思います。

(1)ボタンの押し心地

収録では一番好きなボタンを紹介しており、それがこちらの丸型のボタン(VM161 series)となります。JR東日本のエキナカを中心に展開している「acure」さんの筐体でよく見られます。

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このボタン、ゆっくりと押下して頂くと分かるのですが、プチプチっと「2回」、奥に押し込まれる感覚を味わえます。これが「いま商品を選択したんだな」や「これからこの商品が出てくるんだな」というワクワク感を増幅させてくれます。なお、1本指で押すとこの感覚は味わいにくいので、2本指で押すのがおすすめです。

余談ですが、この画像で紫色のボタンがありますよね。これは「常温」の商品を表しています。放送ではホットとコールドのお話をしましたが、近年はこのように常温の飲み物も販売されておりますので、ぜひ探してみてください。

(2)酪農会館の自動販売機

OAでは触れられなかったものの、この自動販売機は「中で売っている商品」にも特徴があります。

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ご覧の通り、チーズやバター、乳製品飲料がズラリと並んでおり、まさに酪農会館ならではのラインナップとなっています。この自動販売機は、ロケーション、見た目(ラッピング)、中身(商品)、リサイクルボックス、すべてにおいて隙の無い、ハイレベルな筐体となっています。

(3)リサイクルボックス

マツコさんも問題提起してくださった通り、リサイクルボックスの入り口をプラスチックカップで塞ぐ行為は、断じてNGです。

一方、伝わりきっていなかったと感じたのは「あれはゴミ箱ではなくリサイクルボックスなので、ビン/缶/ペットボトル以外は絶対に入れてはならない」という点です。

要は「入口さえ塞がなければ良い(=奥まで突っ込めば良い)」ということではなく、そもそもプラスチックカップは回収対象外なのです。

リサイクルボックスは、定期的に業者さんによって回収されます。その際、対象外のゴミが入っていると、それを手動で分別しなければなりません。また、ペットボトル等に飲み残しがあると、回収時の負荷が非常に高まります。

そのため、「指定された資源以外は入れない」「飲み残しは入れない」この2つを守ってご利用いただけると幸いです。

なお、よく「投入口が2つに分かれているのに、中のゴミ袋が一つになってるので、意味が無いのでは?」というご質問をいただきます。これについては「回収効率向上のためわざとこうしている」という回答になります。

例えば、中に仕切りを設けてビン・缶の袋を分けたとします。仮に缶の売上が多かった場合、缶の袋はすぐに一杯になってしまいます。一方、ビンの袋にはまだ余裕があるため「ボックス全体の容量は空いているにも関わらず、缶が回収できない」という状態に陥ります。そのため、ビン・缶は分けずに一緒に回収した後、業者さんサイドで分別するというプロセスとしています。

また、仮に分けたとしても、ユーザが完璧にビン・缶を分別して投入することはあり得ません。この場合も、結果的には業者さんで再分別する必要があるため、前述の方式を採用しても負荷は大きく変わらない、ということになります。

「だったら、投入口は1つでも良いのでは?」というご意見もありますが、これは投入口をあえて2~3つに分け、それぞれ「ビン/缶/ペットポトル」と明記をすることで、ユーザに対して「これら以外の物は入れてはいけませんよ」という注意を、暗に促しているのです。

(4)世界各国の自販機データ

「台数はアメリカが世界一」という部分にフォーカスしましたが、人口比率、国土面積、売上、総合的に勘案すると、自動販売機が「最も普及しているのは日本がダントツで世界一」ということになります。

マツコさんは「中国が意外と少ないのね」と驚かれている様子でした。ちなみに中国は治安の問題、硬貨の普及率、紙幣の汚れが読み取りの障壁になる等の理由から設置台数が伸びていなかったのですが、ここ数年で急増しています。これは同国内でキャッシュレス決済が普及し始めた結果、自動販売機も完全キャッシュレスとなり、前述の問題がクリアできるようになったからです。キャッシュレス決済は便利なだけではなく、自販機荒らしや偽札利用などの犯罪、あるいはお釣りの補充などの問題を解消する事ができるのです。

(5)自動販売機の内部機能

番組で紹介したゾーンクーリング・ゾーンヒーティングの他にも、様々な省エネ機能があります。代表的なものが「ヒートポンプ機能」です。

飲み物を冷やす際、そのエネルギーが熱となって排出されます。旧来の自動販売機の場合、この熱はそのまま外に排出していたのですが、現在の自動販売機の多くはこの熱を内部にため込みます。そして、ため込んだ熱をホット飲料を温めるために使用するのです。要は、自動販売機の内部で空気を循環させるイメージです。これによって、ホット飲料を温める際の消費電力を大幅に減少させることに成功しました。

また、近年のヒートポンプ機能はさらに進化をしており、自動販売機の外部の空気から筐体を通じて熱を吸収し、そのエネルギーをホット飲料を温めるために使うという方式も出てきています。

その他、ピークシフトや人感センサー等、省エネ化はほぼ極限レベルまで進んでいるといっても過言ではありません。自動販売機は消費電力が多いというイメージを持たれがちですが、各メーカーさんの企業努力によって、その数値は右肩下がりで減少を続けています。

(6)ど冷えもん

ど冷えもんは、その運用の手軽さがヒットの要因の一つです。例えば、電源は通常の家庭用電源(100V)でOKですし、売上や在庫をスマホやPCからリモート管理できます。また、冷凍食品は鮮度が命というニーズに応え、業務用の冷凍庫レベルである-25℃まで冷やすことができます。加えて、消費期限を設定してその時刻になると販売停止する機能(ど冷えもんNEOにて搭載)や、-15℃以上の温度が90分間以上続くと全商品を販売停止にする機能等も備えており、その鮮度の確保を盤石なものとしています。

なお、「1食1,000円を超えるのは高い」と思った方も少なくないと思います。確かに、中価格帯に位置する商品が多い印象を受けますが、ど冷えもんには「全国各地の味が楽しめる」「行列に並ばないと行けない名店の味がスグに手に入る」「24時間365日簡単に楽しめる」という利点があります。その味も、例えばラーメンであればインスタントラーメンやカップラーメンとは一線を画しており、非常に高い再現度となっているため、是非一度お試し頂ければと思います。

(7)自動販売機の歴史

「日本の自動販売機の歴史」と銘打ち、1800年代~現代に至るまでの自動販売機の歴史を年表ベースで語るコーナーを予定していたのですが、収録時間の都合上、割愛となりました。ほんの一部ではありますが、以下に話す予定であったトピックを記載しておきます。

1800年代:たばこの自販機、切手の自販機等が誕生。この時からすでに「偽硬貨を見破る機能」「自動的に売切表記に変えてくれる機能」等が搭載されており、これが現代の自動販売機の仕組みの礎となっている。

1960年代:噴水型ジュース自販機「オアシス」が爆発的にヒットする。この筐体がもたらした役割は「自動販売機の台数の増加」ではなく、人々の間で「自動販売機で飲み物を買うという意識を根付かせたこと」が重要。それまでは、前述のたばこや切手、あるいはガムやお菓子など、飲み物以外を販売するイメージが強かった。

1970年代:グルメ系自販機と呼ばれる、いわゆる「レトロ自販機」が流行。うどんやラーメン、トースト等、未だに愛好家の方が多い分野。そして1976年頃に登場したのが「ホット&コールド自販機」。この筐体は、自動販売機の歴史上で最も価値のある発明だといっても過言ではない。まさにエポックメイキングとも呼べる発明で、飲料の自動販売機の台数は1975年時点で90万台であったものの、1980年には何と216万台まで急増している。もちろん、全てホット&コールドのおかげである訳ではないが、その一翼を担ったことは間違いないと言える。ホット&コールドの誕生は、自動販売機の歴史上に燦然と輝く金字塔であり、10カラットのダイヤモンドよりも価値のある大発明である。

(8)秋葉原でのロケ

秋葉原のロケでは、その他多くの自動販売機を見て周りました。

万カツサンドの自動販売機に行ったり…

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昆虫食自販機でサソリを食べたり…(ピーナッツのような味わいでした)

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カードキャプターさくらの自動販売機に行ったけど全部売り切れだったり…

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ゲーム?アニメ?の自動販売機を複数見つけたりと、なかなか濃密なロケとなりました。

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なお、かの有名な「怪文書自動販売機」にも行ったのですが流石にセンシティブ過ぎたため見学だけに留まりました。

(9)自動販売機のうんちく

自動販売機で飲み物を購入すると、その多くは「飲み口が左向き」で出てきます。

これは、日本人の多くが右利きであるということが関係しています。右手で商品を取り出した場合、飲み口が左向きであれば、持ち上げた時に飲み口が上向きになるのです。

なお、これは自動販売機の内部構造で決まっているわけではなく、飲料を補充する方々の善意で成り立っているサービスです。このような細かな気遣いが、日本の自動販売機のおもてなし力に繋がっているのです。

ここは「何故左向きで出てくるのでしょうか?」とクイズ形式でマツコさんにお伺いしたのですが、見事正解されていました。流石です。

おわりに

上記以外にも、企画段階で見送りとなったテーマやネタが複数あります。限られた時間の中で最大限自動販売機の良さを伝えるために、今回のような構成となりましたが、もし次回がある場合は、更に良いものとするためにブラッシュアップをして行きたいと思います。

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