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古傷を勲章に

寝て起きた時の腰痛が気になって、ふと主治医にそのことを話したら、整形外科医へ繋がった。

整形外科にかかるのは、数年前の事故以来。
痛いのは、やはりあの時の後遺症なのだろうか。


ずっと気になっていた。
やっと、明らかになる。

...ところがだ。

問診の直前になって、わたしは、正座して立った後の膝も時々痛く、膝が真っ直ぐに戻らない時があることをふと思い出した。

そうだった。

わたしの膝と、4番目、5番目の背骨。
それから、股関節も、時々。

いつもではないけど、あちこち痛いんだった。

院内とはいえ、せっかく主治医に紹介してもらったのだから、聞きたいことは全部聞いてしまおう。

好奇心というか、貧乏性というか。

わたしは、問診の時に、自分から名前を名乗って挨拶してくれた医師に、好感を持って、ついつい、日頃疑問に思っていた痛みをすべて、投げかけてみたのだ。

「先生、これって、歳ですかねー?」

「イヤイヤ、まだ早いでしょう」

そしてそのタイミングで、

あ、そういえば、歳を取ればいつか痛むと、言われたんだっけ。

と、ふと、思い出した、あのセリフ。

そういえば、わたしはかつて、ジュニアアスリートだったのだ。

あの競技で、膝と腰を散々酷使したのだ。

世間話程度に、整形外科医にそのことを伝え、レントゲン室へ。

いつものレントゲンのイメージとは違って、さまざまな体勢で、腰のレントゲンを撮り、膝のレントゲンを撮った後。

再び診察室に戻ると、その整形外科医は、こう言った。

「背骨も膝も、だいぶ骨と骨の間隔が狭いですね。これが痛みに繋がっているんです。」

「.....相当、酷使されましたね。」

まさかの、ブーメラン。
青天の霹靂。

年齢か事故の後遺症だと思っていたら、いわゆるスポーツ後遺症だったとは....!!!

そうか、そうだったか。

すべてを悟り、納得した自分が、そこにいた。

「....で、先生。今後はどうやって、うまく付き合っていけば...?」

病院を出た後。
わたしは、妙な清々しさを感じていた。

自分がしていることの意味がわからなくなって、辞めてしまったあの競技だけれど....後悔はないな。

過去のピースと繋がった今。

リアルな痛みすら、なんだか懐かしい。

(...30年後に、こんな風に思っているかは、わからないけどね)

年老いた自分と、痛みを抱えた自分が、今の自分の思いを憎々しく思って、舌打ちしているのを想像して、わたしは、クスッと笑った。

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