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寂しかった、あの子

ある会で、数回会っただけのあの子。

出身大学ではとても優秀で、進学先のレベルの高さを、周囲は自慢げに話していたっけ。

会の後、偶然会ったあの子と、ホームで会話を交わしたのは、わたしの近い友人。

「寂しいんだよねぇ〜....」

と、その子は言ったんだそうだ。

そして、それを最後に、その子はこの世を去り、その会に二度と姿を表すことはなかった。

最後に会話を交わしたことが忘れられなくて、わたしの友人は、その子の葬儀に行くと言った。

「○○は?どうする?」

と、言われて、

わたしは、一瞬、間を置いて、

「...わたしは、いいや」

と答えた。

そこまで親しかったわけではないし、友人のように、ポロリと本音を聞く機会があったわけでもない。そんなわたしが、ご両親の前に友人ヅラで姿を現すのは、なんだか、違うような気がしたからだ。

それでも。

このことは、わたしの記憶の奥底に刻まれたようで、かなり時が経った今でも、そのことをたびたび思い出す。

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