見出し画像

サーカスの子

『サーカスの子』は、ノンフィクション作家の稲泉連さんが、幼いころ母とともにキグレサーカスで暮らした経験をもとに書いた私的ノンフィクションです。
著者は、四十年近い歳月を経て、当時の芸人たちの物語を聞きにいくとともに、自分の記憶をたどっていきます。

> 僕がそのときいた「サーカス」という一つの共同体は、華やかな芸と人々の色濃い生活が同居する場所、いわば夢と現が混ざり合ったあわいのある場所だった。 (本文より)

この一文は、本書のテーマである「サーカスの時代」を象徴するものだと思います。
著者は、サーカスの魅力とともに、その裏側にある苦労や葛藤も赤裸々に描いています。
サーカスという特殊な環境で育った著者の視点は、読者に新しい発見や感動を与えるはずです。

- プロローグ ひとかけらの記憶の断片から1
- 第一章 終わらない祭りの中で
- ひとかけらの記憶の断片から2
- 第二章 サーカス芸人、女三代
- ひとかけらの記憶の断片から3
- 第三章 サーカスの男たち
- ひとかけらの記憶の断片から4
- 第四章 二人の道化師
- 終章 最後のサーカスの子
- エピローグ ひとかけらの記憶の断片から5

私が一番興味深かったのは、第四章の「二人の道化師」です。
この章では、著者が幼いころ慕っていた二人の道化師の人生が描かれます。
一人は、サーカスを離れて芸能界で成功したが、その後自殺したという悲劇的な運命をたどります。
もう一人は、サーカスに残り続けたが、その後廃業に追い込まれます。
二人の道化師は、サーカスという夢の世界と現実の世界の狭間で揺れ動いた人々の代表であり、その姿には深い哀愁が感じられます。

本書は、夢と哀愁に満ちたサーカスの世界を、著者の繊細な筆致で描いた名作だと思います。
サーカスに興味のある方はもちろん、人生の様々な局面に立ち向かう人々の姿に共感できる方にもおすすめします。
ぜひ、読んでみてください。📚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?