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世界中の女性を敵に回すという事

「めくじら立てずに、笑って許せば良いんだよ。」
 と したり顔の上司は言った。
「それが、大人の対応だ」と。

 セクハラもパワハラも 男社会の大企業で生き残るためには
 笑って許せって?

 私の中の 何かが壊れて、私の中の 何かが目覚めた。
 追い詰められたネズミは 猫にだって噛み付く。
 へぇ、そうですか。
 じゃあ、私も いつか あなたに同じことしてあげますよ、ってね。

「笑って許せば良いじゃないですか。それが大人の対応なんですよね?」
 一度、上司に面と向かって言ってみた。
 それは 縁故採用で お嬢さんが同じ会社に入社して半年後のことだった。
 娘さんが上司にセクハラされたって。しかも結構 上の人に。
 
 直訴も出来ないほどの立場の方に、ですか? 
 へぇ。それは 大変ですねぇ。
 他人事として 話を聞いた。

「君は、同じ女性として 何とも思わないのか?」
 という上司に 私は ハッキリ言った。

「企業体質なんだから 仕方ないんじゃないですか? みんな、同類。
 セクハラもパワハラも するのが当然って思う人ばっかりじゃないですか。
 昔、私が上の人にセクハラされたと相談した時、ご自分も 
 同じこと、仰ったでしょう? お忘れになったのですか?
 私には、あなたのお嬢さんのように縁故などの後ろ盾もありませんでしたから
 誰も助けてなんてくれませんでしたよ。
 でも 泣き寝入りしないで 笑って許せ、そう言いましたよね。」

 上司は絶句した。何か言いた気だったが、何も言えなかっただろう。

「お分かりになりましたか?
 自分のしたことは 自分に返らなくても 自分の一番大事な人に返る。
 こんなの、世の道理ですよね? 
 そんな基本的なこともお分かりにならずに 人の親になったのですか? 
 それとも この企業で長く勤めて忘れましたか?」

 私は 退職すると決めていた。だから 言えたのかも知れない。
 でも この話は もう20年以上も前 の話だ。
 今になってみれば、本当に 大昔のように感じる。
 だけど あの頃から 世の中は何も変わっておらず
 むしろ もっともっと悪くなっているように感じる。
 いや、感じるだけではなく、本当に悪くなっているんだろうと思う。
 
 それは 笑って許せよ、と言い続けてきた男たちと
 笑って許してきた女たちの 結果だと感じる。

 その後、風のうわさで 上司の娘さんは 早々に結婚退職した、と聞いた。
 その上司も 定年を待たずに 病気で亡くなった、と聞いた。
 上司は 流石に娘さんの事には黙っていられなかったらしく 
 上に楯突いて ずっと単身赴任して あちこち暮らしていたらしい。

 でも娘さんは きっと お父さんを誇らしく思うだろう。
 私のために 正しいことをしてくれた、と分かるだろう。

 世界中の女性を敵に回した発言をするような土壌が 
 今の日本には、まだ存在してます。
 笑って許すことをしていたら、また同じことが繰り返されます。
 女性差別だって同じことです。

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