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中国で番組制作会社が最強な3つの理由

ありがたいことに、日本でテレビに関わるお仕事(ブイ子のバズっちゃいな!の企画・出演・中国展開)を始めてから10カ月が過ぎようとしています。お陰様で、日本のテレビの裏側を少し覗けて大変勉強になっております。

私はそれまで中国のネット番組の出演や企画に携わっていたため、日本のテレビ局制作と中国のネット番組制作の大きな違いに気づくことができたので、今回はその話をしたいと思います。

中国のテレビ番組については、国営放送なので特に比較はしません。自主制作を手掛ける地方局に関しては多少比較対象となるものの、湖南テレビ以外はあまり日本の参考にならいので、基本ネット番組の制作現場の話をします。

中国の現在の状況を一言でまとめると「制作会社一強」です。この業界図は日本のテレビメディアが衰退していく中での「次の一手」を考える参考になると思いますので、業界関係者の方に届いてほしいなと思って書いていきます!

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↑山下がプロデュースした中国向け旅バラエティ番組「窮豪旅遊記」シリーズトータル2000万回再生を突破した。知られてないけど結構すごい!

①コンテンツを作るのは誰か?

日本では「テレビ局内制作」と「制作会社へ委託」という二種類の制作体系があります。制作者への委託をしつつ、テレビ局のプロデューサーが入るので、最終的な編集権限など含めてテレビ局に帰属しています。

一方中国は基本的に制作会社が最後まで責任を持ちます。最終的にプラットフォームもチェックをしますが、企画したものと大きな違いが無ければ、基本大きな修正が入ることはありません。全面的に任せてくれます。

ちなみに、現状中国でネット番組を手掛けているのは、バラエティ番組制作で有名な湖南テレビ出身のプロデューサーやディレクターが立ち上げた会社が多く、スタッフも制作会社の傘下にあることが多いのです。

つまり、大型ネット番組でヒットを飛ばそうと思ったら、ネット動画のプロがチームを作っていくより、テレビのプロがネット用に鞍替えした方が早いということが証明されています。つまり、ユーチューバーがテレビ番組っぽいものを作るより、テレビマンがネット番組を作る方が効率が良い、という現状だということです。


②スポンサーを探すのは誰か?

次にお金のお話です。日本ではこちらも有名な話ですが、視聴率の多い枠は大体広告代理店がクライアントに販売しています。その結果テレビ局は営業人員を削減しながら安定した広告収入を確保し、番組制作に注力する体制ができあがっています。

一方中国では、スポンサー探しも制作会社が行います(有名IPになるとプラットフォーム側も協力してくれます)。バラエティ番組における広告の種類ですが、日本のテレビと違って、番組の中に広告商品を入れる「プレイスメント」が一般的です。「ひっそりと入れ込む広告」は少なく、「はっきり分かりやすい形でどの会社がスポンサードしているかが分かる広告」が大多数です。番組と分離していないので、広告部分も制作会社が担当することになるわけです。ちなみに、ドラマや映画でこれをやると「さりげなさ」が欠如してネガティブなコメントが湧いてしまう作品も多くありました。

日本は公共電波に乗せる番組故に、番組内にスポンサー企業の商品があからさまに出現させることができません。しかし中国はネット放送ということもあり、CMと本編が分離してません。中国のネット民からは「日本のように広告とCMを分けた方が健康的なのでは?」と言う意見もありますが、広告と言う観点で見ると、番組内の様々なシーンを広告枠として商品開発ができるため、単純に日本よりもマネタイズの方法が豊富であると言えます。


③タレントを囲っているのは誰か?

次に出演者について。日本は芸能事務所がタレントを囲っており、芸能事務所がテレビ局や制作会社と付き合いの中でタレントを売り込み、番組へブッキングしながらタレントの価値を高めたり、有名タレントを提供して番組の価値を高めるという扶助関係が成立しています。

中国は、有名人は基本的に自身の個人事務所で仕事を受けます。日本と同様に有名人が参加することで再生数が上がるので、スポンサーも誰が出演するかを非常に重視しています。番組の内容よりも、誰が出るかでスポンサードをするかどうかを決めるクライアントも多く、それ故に出演料は数千万円にのぼったりすることも珍しくありません。ここはもう基本的に分母が多いのでちょっと天文学的な数字になっちゃいますね。

ここは制作会社が関係ないんだと思うかも知れませんが、そんなことはありません。やはりプロデューサーや現場のディレクターとの相性というものがあります。誰の演出があるとタレントの価値が上がるか、現場でのやり取りなども含めて、最初は金額で決めていた仕事も、結局は人と人の仕事ですから、徐々に誰とやるか、どの制作会社とやるかというのが徐々に重要になってきます。

結局タレントが出演する際に、ヒット番組を作れて、その中で重要な役割を自分に与えてくれる会社があるなら、条件面多少見劣りしても「その制作会社とやりたい!」という意向が働きます。日本でも「あの番組に出られるなら無料でも良い!」と思わせてくれるのは局内の有名番組を多く手掛けるプロデューサーかと思いますが、そういうプロデューサーを、制作会社に所属させることでタレントからの信頼を得ているのです。そしてさらに最近では、制作会社が自社でタレントを囲い込む動きも見られます。

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以上が、中国の制作会社がプラットフォームより強い大きな理由です。日本のテレビというメディアの特性を考えたり、業界慣例を考えると実現不能に見えますが、テレビと言う枠組みを外して、ネット上での展開になり、それがグローバルに広がる動きになるのであれば、実現可能な座組になりえます。

NETFLIXで番組を作るのに、ある制作会社が有能なプロデューサーを抱え、営業もできて現場も回せてキャスティングもできるなら、そういう会社があれば十分ですよね?仲介会社は最初は必要なものの、どんどん不要になります。むしろNETFLIXがその制作会社と提携しながら内製化していく動きもありますもんね。つまり優秀な制作会社が強いのですが、資本力で飲み込むプラットフォームはより強い、という身もふたもない話になってしまいます。実際、テンセントはそこ強いんですね。


テンセントの凄さ

テンセントは「動画プラットフォーム」は勿論のこと、「映画」「アニメ」「ゲーム」「バラエティ」「ドラマ」「漫画」など、様々な領域の原作発掘から、制作、リリースまでを自社内で完結させることのできる恐ろしい生態系を持っています。さらにそこにwechatをはじめとする「SNS」も入っていますし、投資先に様々企業がいるので、IPを生んだ後に自社だけで多方面に展開できるのです。

日本でも話題になった中国版プデュ2021で番組を通じて人気になったユニット「INTO1」のマネジメント会社は「哇唧唧哇娱乐有限公司」なのですが、役員に「马延琨」さんという腾讯视频总经理兼总制片人、つまりテンセント動画の重役が入っており、しっかりと共同体であることが見て取れます。

つまり、番組で新しいIP(タレント含む)を孵化させて、関係企業で多角的にマネタイズしていくエコシステムが完成しているわけです。

テンセントほど盤石な体制ではないにしろ、鱼子酱という制作会社も最近では自社制作の番組で有名にしたタレントの自社化を進めていたりします。ちなみに日本人歌手の橋本裕太さんはその会社の番組に出て有名になった結果、そもそもの所属であるソニーと鱼子酱が合同マネジメントを始めるなど、事業の多角化が進んでいます。

というように、中国の制作会社が様々な要素を包括するようになって圧倒的な存在感を示し始めていることが分かったと思います。

さあ次回はこのテンセントならびに中国の制作会社を取り巻く環境から何を学び、日本式な展開に落とし込んでいけば良いのか考察していきたいと思います。




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