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ADS-B SAWアンプキットv1.5の組み立て

 航空機がその位置を1090MHzのパルス信号で発信するADS-Bというシステムは、Flightrader24などを使ったことがある人なら聞いたことがあるでしょう。実際にこの電波を受信して位置情報を得ることはそれほど難しくありません。RTL-SDR.comなどのUSBドングルにアンテナを接続し、適当なソフトウェアを使えば自宅のPC上に近くの飛行機の位置が表示されます。また、専用のサーバーを立てて常時受信できるようにしてその情報を送ることで、Flightrader24の無料利用権を得ることができます。
 ところで、人間というのは欲が出てくるもので、単に受信できることに成功しただけでは飽き足らず、できるだけ遠くの飛行機を検知してみたいという気持ちが湧いてきます。そのためにはアンテナの性能を上げることと、受信機の性能を上げることの両方が必要です。この記事では後者について、TT氏が開発した「ADS-B SAWアンプキットv1.5」を使ってみることにします。

 このキットはその名の通りSAW(表面弾性波)フィルタによってADS-Bの1090MHz以外の信号をカットし、その後に信号を増幅する構成になっています。プリント基板と部品のセットで2,500円(送料込み)というお手頃な料金で頒布されています。所定のフォームでメールを送り、送金したら、すぐにキットが届きました。

キットに含まれる部品

組み立て説明書をダウンロードして、さっそく製作にとりかかりました。まずは、指示に従って電源回路のU2周りだけをとりつけます。ここで3.3Vを生成して増幅器に供給することになっています。はんだ付けが終わり、テストしてみようと電源と接続したら、電流計が振り切れ、いやな音とにおいがしました。あわてて電源を切り、確認してみると正負を間違って接続してしまっていました。初手からこんなミスをしているようでは先が思いやられます。
 電源IC自体は通販で手に入るので発注をかけようかと思ったのですが、3.3VのレギュレーターICとして表面実装ではないLP2950を持っていなので、足を曲げてランドの形に合わせ、これで代用することにしました。幸いにこの対処法はうまくいき、無事に電源回路から3.3Vが供給されるようになりました。
 次に増幅器のU1の取り付けです。0.65mmピッチの非常に小さいICで、苦戦しながらもなんとかはんだ付けができたものの、回路に流れる電流を測りながら電源を入れてみると20mAちょっと流れてしまいます。組み立て説明書には6mAくらいと書いてあったのでここでまた原因を究明する必要が出てきました。
 結論を言えば、組み立て説明書はBGA2748というICを使う前提で書かれているのに対してこのキットではBGA2817というICを使っていたことによるものでした。後から思い起こせば、説明書にある写真と実際の部品のマーキング記号が違っていたり、部品を張り付けてある台紙にもICの型式が書いてあるので、気づくチャンスは何回かあったと思います。しかし、一度電源の逆接でU1を壊してしまっているので余裕がなくなっていたのでしょう。ここに半日費やしてしまいました。
 最終的にはBGA2817のデータシートをダウンロードして、消費電流が20mA程度であるという記載を見つけたのでこれで正常動作であるという確信を得て、最後の難関のSAWフィルタの取り付け作業をすることにしました。これもはんだ面が部品の下部にあるためにはんだ付けが難しいのですが、先に部品に薄くはんだを盛ってから、基板とのわずかな隙間にはんだを流し込むことでランドと部品のはんだ付けを行いました。作業のしやすさから言えば、SAWフィルタの入出力にあるC1,C4はフィルタのはんだ付けが終わってからつけた方がやりやすかったかもしれません。
 最後に入出力のSMAコネクタおよび電源端子にUSBケーブルをとりつけて完成です。基板がかなり汚くなってしまっているのはご容赦ください。こびりついたフラックスを除去しきれませんでした。

 さっそく試運転を行ってみました。まずはSAWアンプなしの場合での受信状況を示します。

アンプなし

次にSAWアンプを接続した場合を示します。

アンプあり

図から明らかなように、最大受信距離がそれまでの61nmから111nmに伸びています。また、ヒストグラムより50-100nmの範囲でかなりの回数受信されていることもわかります。十分な効果が認められたと言っていいでしょう。

de JI3XOK/JM8SMO


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