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上級ハムの試験問題を理解する試み

 先日、こんなことを呟いたところ、意外と反響がありました。

高校数学や高校物理をただ受験のためだけに使うのはもったいないので、試しに平成31(2019)年4月期の問題を解いてみることにします。

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この問題は、電気量と電流の関係を理解しているかどうか、そして、オームの法則について正しい知識を持っているかを問いています。

 まず、電流というのはその名前の通り電気の流れで、ある断面を1秒間に通過する電気量として定義されるものです。電気量の単位はクーロン(C)、電流の単位はアンペア(A)です。また、電流が流れるとその周りに磁気が発生します。したがって、選択肢Aは「電気量」となります。

 次に、電位差Vと電流Iは、金属のような導電性物質では比例します。式で書くと、V=RIとなり、このときの比例定数Rを電気抵抗と呼びます。これをオームの法則と呼び、物理的には、電気が伝導体の内部でエネルギーを失いながら通過していることを反映しています。したがって、選択肢Bは「オーム」となります。

 比例関係をI=GVと書くこともできます。この場合の比例係数G=1/Rをコンダクタンスと呼びます。したがって、選択肢Cは「コンダクタンス」になります。

 以上から、正解は1です。

 問題文にはありませんが、電気量Qの電気を電位差Vだけ動かすと、エネルギーQVが与えられます。その理由は、導電体の中の電場の強さEを考えるとわかります。導電体の長さをLとすると、E=V/Lと表すことができます。電気量Qが受ける力の総量はEQですから、この力による仕事はEQL=QVとなって、Lがどんな値であっても変わりません。QVは、電場による位置エネルギーだったのです。

 電気量Qが得たエネルギーは熱となって放出されます。1秒当たり放出されるエネルギーがIVと表されることは、この問題文から理解できるでしょう。これがジュール熱です。オームの法則を使ってVを消去すると、I²Rと書くことができます。



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