上級ハムの試験問題を理解する試み(補足)
令和元年8月期の問題です。
この問題を解くにあたって、交流電流、電圧のベクトル表示について説明します。交流は時間とともに電流や電圧が変化するので、時間の要素をどう扱うかについて、ちょっとした図形的なトリックを使います。
まず、電流や電圧が振幅と等しい円を用意します。x軸から反時計回りにθをなす、半径I₀の円周上の点(矢印の先端=ベクトル)はI=I₀ sinθと書くことができます。ここで、θ=2πft+αとすると、時間tとともに円周上をベクトルが回転運動するイメージが湧くことでしょう。電圧についても同様に半径V₀の円周を回るベクトルを考えます。ここで、オームの法則よりV=RIですから、電流ベクトルと電圧ベクトルはθが同じになります。図形的には2つのベクトルの向きは等しいと考えれば良いのです。
次に、コイルについて同様の考察を行ってみましょう。
レンツの法則によってV=-L(dI/dt)が成り立ちますので、電流の向きと電圧の向きには、つねに90°の差ができます。なので、電流と電圧の比にリアクタンスという名前をつけることにします。単位は抵抗と同じですが、コイル(やコンデンサ)に由来するので区別する必要があるからです。
ここまでの準備をして、問題にとりかかってみます。並列回路ですから抵抗とコイルの両端の電圧は等しくなります。全体を流れる電流Iを計算するためには、それぞれに流れる電流がわかればいいのです。抵抗に流れる電流は24[V]/30[Ω]=0.6[A]です。コイルに流れる電流は24[V]/40[Ω]=0.6[A]です。これを、電圧が同じになるように図示してみましょう。
図より、回路全体には1[A]の電流が流れることになります。したがって、全体のインピーダンス(抵抗とリアクタンスの両方を含むとき、こう呼びます)は、24[V]/1[A]=24[Ω]と求められます。
正解は3です。
(別解)
複素平面を使って、抵抗を実部、リアクタンスを虚部に書く方法もあります。これを複素インピーダンスと言います。R=30[Ω]と、X=40[Ω]の並列回路を複素数を使って直接計算することができます。(jは虚数単位です。j²=-1)
並列回路なので、Z=1/(1/R+1/jX)=jRX/(R+jX)=jRX(R-jX)/(R²+X²)=RX(X-jR)/(R²+X²)と言う計算ができます。これに、R,Xを代入すれば、
Z=30[Ω]×40[Ω](40[Ω]-j30[Ω])/(40[Ω]²+30[Ω]²)=(12/25)(40[Ω]-j30[Ω])となります。求めたいのはインピーダンスの大きさ(絶対値)|Z|ですが、辺の長さが3:4:5の三角形は直角三角形になることを使うと|Z|=(12/25)×50[Ω]=24[Ω]が得られます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?