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同軸コリニアアンテナを作る

同軸コリニアアンテナは、1/2波長の同軸ケーブルを互いに逆位相に接続することで、水平面には無指向性ながら打ち上げ角を低くして指向性利得を稼ぐアンテナです。同軸コリニア研究会のサイトに行けば詳細な作り方が載っているので、この説明に従ってこれまで何本か作ってみました。しかし、説明に腑に落ちないところがあったので一度自分なりに整理してみると、nanoVNAを利用することで簡単に性能を出すことができることがわかりました。2m用の3段同軸コリニアアンテナを作成しましたので、その概略を紹介します。

1.基準の作成
nanoVNAの機能を有効に活用したいので、まずは測定の基準面を作ります。これは1/2波長の線路長を用意することで実現できます。同軸ケーブルの短縮率を考慮して1/2波長になるような長さに調整します。今回はRG-58A/Uを使いました。70cmほどの長さに切ってM型コネクタをはんだ付けし、変換コネクタを経由してnanoVNAで測定すると次のように表示されました。

基準位置の調整前

カーソルを純抵抗のところに合わせると、136.4MHzで共振していることがわかります。コネクタ込みで144MHzで1/2波長になるように、同軸ケーブルのの長さを調整します。

基準位置の調整後

なお、実際の使用時にはここまでが給電線となりますので、損失が気になる人は5D-2Vなどを使ってもいいでしょう。ケーブルによっては波長短縮率が異なりますので、それに応じて長さも変わります。

2、位相整合部(1)の作成
同軸コリニアアンテナの1段目は1/4波長の位相整合部です。同軸コリニア研究会の製作マニュアルによると、ここは3D-2Vを使った場合0.675~0.68波長にするとあります。要は短縮率を考慮した上で1/4波長よりこころもち長くすればいいということなのですが、この記事ではここを調整箇所としますので、少し長めの0.69波長としておきます。また、同軸ケーブルのインピーダンスは50Ωでなくてもいいので、3C-2Vで試してみます。インピーダンスは異なりますが絶縁体の材質が同じなので波長短縮率は3D-2Vと変わりません。

位相整合部(1)をとりつけたところ

3、放射部の作成
2段目からは1/2波長の共振器をとりつけます。今回は705mm長のエレメントを用意し、nanoVNAで特性を見ながら1段ずつ取り付けていきます。

放射部を3段とりつけたところ

4、位相整合部(2)の作成
最終段は1/4波長の位相整合部です。長さは0.675波長にします。スミスチャートは180°より少し回るはずです。なお、ここで書いた方法で作っていくと、作成時に芯線と外皮をショートさせた場合にスミスチャートの位置が期待した位置から180°ずれるのでミスを検出することができます。もちろん、テスターの抵抗レンジで測定しておくとより安心です。この段階では芯線と外皮はまだ絶縁されています。

位相整合部(2)をとりつけたところ

5、調整
まずは位相整合部(1)、(2)の長さを調整します。スタブを接続していない状態で、中央に移すことができる円との交点に来ていなければなりません。nanoVNAの画面にはいくつかの円弧が表示されていて、そのうちの一つが中央を通ります。位相整合部(1)、(2)の長さを少しずつ短くしていきます。最初は長めに作ってありますので、上の図のようにカーソル位置がそのような円からずれています。少し切ってはnanoVNAで特性を測り、目的のところに来るように調整していきます。

位相調整部を少し短くしたところ

切りすぎてしまうと、目的の点を行き過ぎてしまいます。

位相調整部が短い場合

もし切りすぎてしまったら位相整合部を作り直すことになります。今回はこのまま作ってみます。位相整合部の長さが決まったら、位相整合部の端を接続します。カーソル位置がが180°動きます。オープンスタブの長さが自動的に決まります。円の1周が1/2波長であることを考えると、整合させるための長さは最大でも1/4波長、上の図では1/8波長よりやや短くなることが図形的に理解できるでしょう。調整の余地を残しておくために、計算した長さより少し長くして取り付けます。

オープンスタブをとりつけたところ

オープンスタブをとりつけると、カーソル位置が中心に向かうはずです。あとは長さを調整して中央に近づけていくだけです。長さを少しずつ縮めると次の図のように変化します。

スタブを縮めていくと共振が現れる

このように、変化の様子を見ながら調整することができるのがnanoVNAを使う最大の利点です。ただ今回は、最初の長さが短すぎたようなので、このまま進めていくと共振周波数が高くなってしまうことが予想されます。まずはここで中断して、位相整合部を作り直してみる方がいいでしょう。
de JM8SMO

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