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カスミの新業態「BLANDE」の会員になってみて感じた、顧客体験をコントロールすることの難しさ

新業態スーパー「BLANDE」

茨城県つくば市に本拠を置くスーパー・カスミが、新業態「BLANDE(ブランデ)をオープンさせました。「成城石井」や「北野エース」といった、ちょっと高級志向な食品スーパーです。つくば市内には以前、西武筑波店の中に「ザ・ガーデン自由が丘」があったのですが、西武筑波店の閉店後、長らく高級志向な食品スーパーがありませんでした。つくば市は着実に人口が増え続けている地域なので、そういう業態のスーパーがあっても違和感がないというか、できるべくしてできたというか。

その「BLANDE」、先月並木店をオープンさせた後、先日研究学園店をオープンしました。並木店は、今や地域屈指の人気を誇る中高一貫校・茨城県立並木中等教育学校のそば。研究学園店は、つくば市内でも人口増加を続ける学園の森地区にできました。きちんと考えたうえで出店を決めたんだろうな、と感じます。

Gold会員になってみた。

その「BLANDE」には、会員サービス「BLANDE Prime」があります。無料のBronze、年間3,000円の「Silver」、年間5,000円の「Gold」の3種類。どんな特典があるか、詳しくはこちらのPDFでどうぞ。先日、研究学園店で思い切ってGoldに入会してみました。

会員になるためには「Scan & Go(スキャンアンドゴー)」の会員になっておく必要があります。「Scan & Go」は、カスミの親会社、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスが開発したスマホアプリで、カメラで商品のバーコードを読ませて精算ができるというものです。最近オンラインデリバリー機能も付きました。

事前に「Scan & Go」を登録しておけば、「BLANDE Prime」の会員登録は5~10分もあれば終わります。もし「Scan & Go」の事前登録に不安があれば、店員さんが教えてくれる、はずです。

Gold会員になると、1日につき1回、コーヒーが無料で飲めるクーポンがもらえます。研究学園店ではGold会員専用のラウンジがあるので、ゆっくりコーヒーを楽しむことができます。ラウンジと言っても、空港にある有料ラウンジとは異なり、飲み物が出てくるわけでも新聞が読めるわけでもなく、Gold会員用に机といすが用意されていますよ、ぐらいのものです。とはいえ、優先座席があるというだけでもありがたい。

コーヒーの右横にあるのは、エコバッグです。畳み方に若干癖があるので使いこなせるかちょっと不安・・・。

Gold会員になった理由:LEBERの有料プランの元が取れるから

「BLANDE Prime」は年会費がかかるサービスですから、どこに良さを見出すかは人それぞれです。私が興味を持ったのは「LEBER(リーバー)」でした。LEBERは、医師に医療相談ができるスマホアプリのことです。

このLEBER、つくば市立の小中学校・義務教育学校に子供を通わせている保護者にとっては必携アプリになっています。毎朝子供の体温を計測して学校に報告するわけですが、その報告で使っているプラットフォームが、このLEBER。保護者の方によっては単なる体温報告ツールとなっているかもしれませんが、元々は医師に気軽に症状を相談できるサービスなのです。「お医者さんに相談したいけど、コロナが怖くて気軽にお医者さんのところに行けない」という時に便利です。

このLEBERのいいところは、すぐに回答が来るところ。私は複数の医療相談プラットフォームを利用していますが、一番早く回答が来るのはLEBERです。ただ、早く回答をもらうためには、有料プラン(2種類ありますが、月額350円のプランで十分)に入る必要があります。ですが、もう悩む心配がありません。Silver以上の会員になっているとLEBERの有料プランが無料で使えるのです。月額350円ということは、年間で4,200円。Gold会員が5,000円で、誕生月に2,000ポイントもらえることを考えると、LEBERを使いこなしているならGold一択です。

設定までがややこしい。

ただ、いざ設定しようと思うと、ややこしいのです。設定方法を紹介すると・・・

(1) 「Scan & Go」を立ち上げる
(2) アプリ右上の三本線をタップする
(3) 自分の名前をタップする
(4) 自分の名前の右横にある「会員ランク」をタップする
(5) 「BLANDE Gold(またはSilver)」のアイコンをタップする
(6) ブラウザーが立ち上がるので「医療費アプリ年会費無料」アイコンをタップする
(7) 「登録する」ボタンをタップする
(8) LEBERのアイコンがあるページが立ち上がるので、LEBERに登録した携帯電話番号を入れて登録する

工程が8つもあります。ちなみに会員登録時に説明は特になく、自分で探しました。ちなみに8つの工程を完了させ、LEBERのアプリで登録状況を確認すると、会員ステータスが「企業プレミアム」になります。

ところが、これで終わりではないのです。

上記の設定が終わった翌日。Appleから領収書というメールが届きました。中身を見ると、LEBERの有料プランを引き落としましたよ、という内容。つまり、上記の設定をしても、既にLEBERの有料プランに入っていた人は別の手続きをしない限り、LEBERの有料プランの支払いが続いてしまうことになります。

LEBERのヘルプセンターの記事を確かめたところ、LEBERの会員手続きとサブスクリプション(支払い)の手続きは別だよ、と書かれていました。この記事に従い、サブスクリプションの契約を解除しました。

顧客体験をコントロールすることの難しさ

私は今、とあるサービスの開発に携わっています。仕事柄、いろんなサービスに触れて参考にすることが多いのですが、この出来事に出くわしていろいろ考えさせられました。

「BRANDE Prime」は、「Scan & Go」というスマホアプリをベースに会員サービスを提供しています。BRANDEやカスミの店内でバーコードをスキャンしてレジの待機列を気にすることなく買い物ができたり、店内の商品を配達してくれるアプリです。このアプリそのものはとてもよくできていて、アップデートを重ねて使いやすくなっていることを実感します。最近私がBRANDEやカスミで買い物をする時には、現金を使うこともレジに並ぶこともなくなりました。他のスーパーにはない、素晴らしい顧客体験を提供していると感じます。

一方で「BRANDE Prime」は様々なサービスを提供しています。LEBERの他、高島屋法人事業部のおすすめ商品が買えたり、お得な旅行情報が得られたりします。これらはいずれも「Scan & Go」の枠からはみ出たサービスです。枠からはみ出たサービスをいかに使いやすく提供するかというのは、かなり難しいことです。会員登録時に懇切丁寧に説明するというのも手でしょうが、そうなると現場が大変です。さりとて、アプリの改修はそう簡単にできるものではありませんし、お金がかかる話でもあります。せめて使い方を紹介するパンフレットやホームページがあったらよかったのかもしれません。

今回カスミがチャレンジしている「BLANDE」という新業態は、カスミの並々ならぬ覚悟を強く感じます。これからどんなところに出店するのか、「BRANDE Prime」はどう進化していくのか。とても楽しみです。

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