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国連総会の一般討論会でのミレイ大統領の演説【日本語文字起こし全文】

【9月29日追記】
ミレイ大統領の国連での演説の動画に、日本語字幕をつけました。
(下記のyoutubeからご覧いただけます)
字幕の内容は、このnote記事とほぼ同じです。


アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、2024年9月24日にアメリカ・ニューヨークで行われた第79回国連総会の一般討論で演説しました。
ミレイ大統領は、その場で国連を「複数の触手を持つリヴァイアサン」と呼び、国連が「社会主義」アジェンダを押し付けていると非難しました。


今回は、その演説全文を日本語に翻訳して紹介いたします。

※下記からスペイン語全文が読めます。
※太字は筆者です。

第79回国連総会一般討論会でのハビエル・ミレイ大統領の演説


国連当局の皆さん、国連を構成するさまざまな国の代表の皆さん、そして私たちを見守っている世界のすべての国民の皆さん、こんにちは。

ご存じない方のために言っておきますが、私は政治家ではありません。
私は経済学者であり、自由主義のリバタリアン経済学者であり、政治を志したことは一度もありませんでした。しかし、我が国を破壊した一世紀以上にわたる集産主義政策の大失敗に直面して、アルゼンチン共和国大統領という地位に就きました。このことは光栄に思っています。


国連総会での演説はこれが初めてですが、この場をお借りして世界のさまざまな国々に、国連が何十年にわたって歩んできた道と、この組織が本来の使命を果たせないことの危険性を、謙虚な気持ちで警告したいと思います。

私は世界に何をすべきかを伝えるためにここに来たのではありません。
私がここに来たのは、一つは、国連が2030年アジェンダの使命の下で推進してきた集産主義的な政策を推進し続ければどうなるのか、そしてもう一つは、新しいアルゼンチンが擁護する価値とは何なのかを、世界に伝えるためです。


私はまず、謝意を表したいと思います。国連という組織は、世界史上最も血なまぐさい戦争の恐怖から、二度とこのようなことが起こらないことを主な目的として誕生しました。
そのために、国連はその基本原則を世界人権宣言に明記しました。そこでは「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利と について平等である。」という格言に基づく基本的な合意が定められました。

この組織の指導の下、このような考え方が採用されたことで、過去70年間、人類は史上最長の世界平和の時代を経験し、それは史上最大の経済成長の時代でもありました。各国が即座に武器に頼るのではなく、協力によって紛争を解決できる国際的な場が生まれ、世界の5大国が、まったく対立する利害を持ちながらも同じテーブルに座り、それぞれが同じ拒否権を持つという、考えられないことが実現したのです。


これによって戦争の惨禍がなくなったわけではありませんが、世界的な規模で紛争がエスカレートすることはありませんでした。その結果、40年足らずの間に2つの世界大戦が起こり、合わせて1億2千万人以上の命が奪われた状態から、全世界が商業的に統合され競争し繁栄することを可能にする秩序の下で、70年もの間、相対的に平和で世界的に安定した状態が続いたのです。

「貿易あるところに弾丸なし」。フレデリック・バスティアは何度もこう言いました。貿易は平和を保証し、自由は貿易を保証し、法の下の平等は自由を保証するからです。

要するに、預言者イザヤが書いたこと、そして向かいの公園で読むことができることが成就したのです。「神は国々の間を裁き、多くの民のために仲裁をなさるだろう。彼らは剣を打ち直して鋤にし、槍を打ち直して鎌にするだろう。国は国に対して剣を取ることはなく、もはや戦うことを学ばない」。

これは、主に国連の指導の下で、最初の数十年間に起こったことであり、したがってこの観点からすれば、私たちは国家の歴史において見過ごすことのできない驚くべき成功について語っているのです。

しかし、私たち人間が作り上げる官僚主義的な構造の多くで通常起こるように、ある時期からこの組織は創設宣言に概説された原則を守ることをやめ、変節し始めました。本来、人間の王国を守る盾として意図されていた組織は、各国家が何をすべきかだけでなく、世界のすべての市民がどのように生きるべきかを決定しようとする、何本もの触手を持つリヴァイアサンへと変貌したのです。
こうして国連は、平和を追求する組織から、社会における人間の生活を左右する無数の問題についてイデオロギー的な議題を加盟国に押し付ける組織へと、変貌を遂げたのです。


その起源は「勝利なき平和の社会」について語ったウィルソン大統領の思想にまで遡ることができますが、この国民国家の協力に基づいていた国際連合の成功モデルは、放棄されました。それは、世界の国民に特定の生活様式を押し付けようとする国際官僚の超国家政府モデルに取って代わられているのです。

今週、ここニューヨークで開催される「未来サミット」で議論されていることは、この機関が採用したこの悲劇的な路線をさらに進めることにほかなりません。つまり、国連事務総長自身の言葉を借りれば、2030年アジェンダの公約を倍加させ、世界規模で新たな社会契約を定義する必要があるモデルを進めようとしているのです。


ここでアルゼンチン・アジェンダの立場をはっきりさせておきたいと思います。2030アジェンダは、その目標こそ善意によるものではありますが、社会主義的な性格を持つ超国家的な政府プログラムにすぎません。つまり、国民国家の主権を侵害し、人々の生命、自由、財産に対する権利を侵害する解決策で、近代の問題を解決しようとするものなのです。貧困、不平等、差別を解決するふりをして、それらを深めるだけの法律で解決しようとするアジェンダなのです。
なぜなら、世界の歴史は、繁栄を保証する唯一の方法は、君主の権力を制限し、法の下の平等を保証し、個人の生命、自由、財産に対する権利を擁護することだと示しているからです。

まさに、特権的利益に従うこのアジェンダを採用したこと、国連の世界人権宣言に概説されている原則を放棄したことが、この機関の役割を歪め誤った道を歩ませたのです。
こうして私たちは、人間の権利を擁護するために生まれた組織が、例えば2020年の世界的な隔離のように、人道に対する犯罪とみなされるべき、自由を組織的に侵害する主要な推進者の 1 つとなっていることを目の当たりにしました。


人権を擁護すると主張するこの同じ議場で、キューバやベネズエラのような血塗られた独裁国家を、少しも非難することなく、人権理事会に加盟することを許してきました。
女性の権利を守ると主張するこの同じ議場で、肌を見せただけで女性を罰する国に、女性差別撤廃委員会への参加を認めています。
この同じ議場は、中東で唯一自由民主主義を擁護するイスラエルに対して組織的に反対票を投じ、同時にテロリズムの惨禍にまったく対応できないことを示しています。
経済分野では、経済成長を脅かし、財産権を侵害し、自然な経済プロセスを妨げる集産主義的政策が推進され、世界で最も恵まれない国々が前進するために自国の資源を自由に享受することを妨げています。規制や禁止事項は、まさに、今日彼らが非難しているのと同じことをやったおかげで発展した国々によって推進されています。さらに、グローバル・ガバナンス政策と国際的な融資機関との間には有害な関係が築かれており、最も無視されている国々は、必要のないプログラムに必要のない資源を投入することを要求され、グローバル・エリートたちのアジェンダを推進するために、永久に借金を背負わされる立場に追いやられています。


また、世界経済フォーラムの指導も役に立っていません。そこでは、マルサス的な目隠しをして、特に貧しい国々に害を及ぼす「ゼロ・エミッション」政策など馬鹿げた政策が推進されています。西側諸国では出生率が急落し、すべての人に暗い未来を告げているのに、性と生殖の権利に関連する政策に。
また、マルビナス諸島との関係で私たちアルゼンチン人が身をもって知っているように、加盟国の領土主権を守るという使命も十分に果たしていません。そして、常任理事国の拒否権が一部の国の特定の利益を擁護するために行使されるようになり、本会議場の最も重要な機関である安全保障理事会が歪められた状況にまで至っているのです。


こうして今日すでに30万人以上の命を奪い100万人以上の負傷者を出した異常なロシアによるウクライナ侵攻のような、現実の世界的な紛争に対して解決策を提示する力のない組織になってしまいました。
このような紛争に立ち向かう代わりに、貧しい国々に対して、何をどのように生産し、誰と結びつき、何を食べ、何を信じるべきかを押し付けることに時間と労力を費やす組織、それが現在の「未来のための協定」です。このような誤りや矛盾の長い羅列は、決して無償のものではありません。自由世界の市民の目から見た国際連合の信頼性を失墜させ、その機能を歪ませる結果となっています。

ですので、私は警告したいと思います。私たちはサイクルの終わりに直面しているのです。集産主義や道徳的なポーズをとる 「目醒めた」アジェンダは、現実と衝突し、世界の現実的な問題に対してもはや信頼できる解決策を提示していません。実際、彼らには解決策がなかったのです。2030アジェンダが失敗したとしたら、その推進者たちも認めているように、その答えは、そもそもそれが誤った構想のプログラムではなかったかを自問し、現実を受け入れて軌道修正することです。失敗したアジェンダに再び賭けることで、間違い続けることはできません。左派の思想にはいつも同じことが起こります。彼らは、人間がどうあるべきかという、彼らの言うところの「モデル」を設計します。そして、個人が自由にそうでない行動をとると、個人の自由を制限し抑圧する以外に解決策がないのです。


アルゼンチンに住む私たちは、この妬みと悲しい情熱の道の果てにあるもの、つまり貧困、残虐行為、無政府状態、そして致命的な自由の欠如を、すでに自分の目で見てきました。私たちにはまだ、この道から背を向ける時間があります。

誤解のないようにはっきりさせておきたいのですが、現在、大きな変化の過程を経験しているアルゼンチンは、自由の理念を受け入れることを決意しました。

すべての国民は生まれながらにして自由であり、法の下に平等であり、創造主から与えられた譲ることのできない権利、中でも生命、自由、財産に対する権利を有しているという考え方です。これらの原則は、私たちがアルゼンチンで遂行している変革のプロセスを導くものであり、今後の私たちの国際的な行動を導く原則でもあります。

私たちは、すべての人の生命を守ることを信じています。
私たちは、すべての人の財産を守ることを信じています。
私たちは、すべての人に表現の自由があると信じています。
私たちは、すべての人に信仰の自由があると信じています。
私たちは、すべての人のための自由貿易を信じています。
すべての人のための制限された政府を信じています。

そしてこのような時代においては、ある国で起こったことはすぐに他の国にも影響を及ぼすため、政治的抑圧、経済的奴隷制、宗教的狂信の形態を問わず、すべての国民が専制と抑圧から解放されて生きなければならないと私たちは信じています。
この基本的な考え方は、単なる言葉にとどまってはなりません。外交的、経済的、物質的に、自由を支持するすべての国の力を結集して行動として支持されなければならないのです。

新しいアルゼンチンのこの教義は、国際連合の真髄、すなわち自由を守るための国際連合の協力にほかなりません。もし国際連合が、自身に生命を与えた原則に立ち返り、国際連合が構想された役割を再び果たすことを決意するならば、自由のための闘いにおけるアルゼンチンの揺るぎない支持を期待してください。

また、アルゼンチンは、誰がそれを推進しているか、あるいはその機関がどれだけの合意を持っているかに関係なく、個人の自由や貿易の制限、個人の自然権の侵害を意味するいかなる政策も支持しないことも知っておいてください。
このため、私たちは、日曜日に署名された「未来の協定」に対する私たちの反対を公式に表明し、自由世界のすべての国々に、この協定に反対するだけでなく、この崇高な制度に新たなアジェンダを創設するために、私たちとともに参加するよう呼びかけます。それは、「自由のアジェンダ」です。


この日以来、アルゼンチン共和国は、我々を特徴づけてきた歴史的中立の立場を捨て、自由を守る闘いの先頭に立つことを知ってください。なぜなら、トマス・ペインが言ったように、「自由の恵みを享受しようとする者は、人間として、自由を守るための疲労に耐えなければならない」からです。

アルゼンチン人と世界のすべての皆様に神のご加護がありますように。
そして天の力が私たちとともにありますように。

自由万歳!ありがとうございました。



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