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三陸木材・ランバー、さらなる飛躍への課題

全国の国産集成材工場は10を数えるまでになった。その先駈けになったのが、三陸木材高次加工協同組合(岩手県住田町、佐々木英一代表理事、以下「三木」と略す)と協同組合さんりくランバー(同、曽根哲夫理事長、同「ランバー」)だ。操業(平成11年6月)当初は苦難の道が続いたが、見事それを克服。国産集成材業界のリーダー的存在に成長した。好業績を続ける「三木」と「ランバー」。だが、ここにきて新たな課題に直面している。トップ企業が一段の飛躍を目指すために、何が必要になっているのか。遠藤日雄・鹿児島大学教授が住田町の現場を訪ねた。

ラミナ足りず月2000㎥止まり、乾燥機増設へ

  遠藤教授は、「三木」の泉久雄専務理事に出迎えられた。旧知の二人は、早速、国産集成材生産の現況チェックに入った。

遠藤教授
  「三木」の集成材生産体制はどうなっているのか。

泉専務
  現在は2シフト体制で月産2000㎥。うち25%が平角、20%が土台、55%が管柱だ。これにFJ(フィンガージョイント)間柱などの羽柄材を加えると月産2200_といったところか。樹種はスギとカラマツが半々、現状ではこれで精一杯だ。

遠藤
  なぜ?


  2つ理由がある。最大の理由は、ラミナの集荷が思うようにいかないからだ。もう1つは、ラミナ用乾燥機が足りないこと。このため、現在2基を増設中で、完成すれば月間50㎥の増加が見込まれる。今年度(平成19年度)には3万㎥/年体制を目指したい。

業績好調、ムクKDより高くても集成材にシフト

遠藤
  欧州産ラミナ価格が値上がりし、ホワイトウッド、レッドウッド集成材は品薄状態だ。国産集成材へのニーズはどうか。


  大手商社が頻繁に商談にやって来る。なかには相場よりも価格アップを提示するケースもあるが、お断りしている。スギ集成材が欧州産集成材より高いときでも買ってくれ、「三木」を育ててくれたお得意様に対し、恩を仇で返すようなことはできない。

遠藤
  主な販売先は?


  大手住宅メーカー、木材商社、中堅の地域ビルダー、プレカット工場など10社だ。昨年は「三木」が飛躍的に伸びた年として1つのエポックをなすだろう。
  12月は対前年同月比で生産額、販売額ともに30%増だった。国産材へのシフトが確実に進んでいる。

遠藤
  スギ集成管柱の価格は?


  1本2250円から2300円だ。

遠藤
  ということは、㎥換算で6万7500〜6万9000円だ。スギムクKD管柱の価格(特1等)が5万5000円前後/㎥だから、KD管柱より高くても集成材にシフトしているとみていい。逆に言えば、スギムク製材業界にとっては大きな問題だ。

中目丸太は「ランバー」着で1万1880円/㎥

  「三木」では当初、周辺の製材工場からラミナを仕入れていた。しかし、ラミナの品質が製材工場によってバラバラな上、量の安定的確保で不安があった。そこで、平成14年3月に組織化したのが「ランバー」だった(操業は翌年4月開始)。「ランバー」を仕切る村上昇陽専務理事は、旧大船渡市森林組合参事時代から林産事業を手がけてきた丸太集荷のベテランである。

遠藤
  「三木」にどの程度のラミナを納入しているのか。

村上専務
  「三木」の消費量の3分の1を「ランバー」が供給している。あとの3分の1は県内の製材工場から、3分の1は北海道からカラマツラミナを仕入れている。

遠藤
  ラミナ用丸太の集荷状況と価格を教えてほしい。

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工場の説明をする泉専務(左)と村上専務(右)

村上
  スギ、カラマツで月2000㎥前後。集荷は周辺の森林組合、素生協などから。中目のA丸太(16〜30㎝)は、「ランバー」着で1万1880〜1万2600円/㎥だ。ラミナ製材には22〜24㎝の中目丸太が最適だが、年々山の木が太くなっているため尺上丸太も引き受けざるを得ない。こちらは1万1880円/㎥で買っている。

遠藤
  丸太が太くなると、ラミナ製材の歩止まりが落ちる。

村上
  ラミナ製材だけだと歩止まり50%だ。歩止まりをあげるため「側」から胴縁、野縁、間柱を挽いている。一部は「三木」でFJ間柱にしている。

遠藤
  「ランバー」から「三木」へのラミナの納入価格は?

村上
  グリーン丸太3〜4mで3万円/㎥、乾燥した場合は別途3700円だ。

熾烈な丸太争奪戦、待たれる山元の増産体制

遠藤
  月産2000㎥体制からさらに増産できないか。

村上
  増産したい気持ちは山々だが課題が2つある。1つは「ランバー」の製材ラインがラミナ挽きに特化しているため、間柱、胴縁、野縁などの羽柄材製材が効率的にできない。最近開設された国産集成材工場は、このあたりを改善しているので参考にしたい。
  もう1つの理由は、合板メーカー、製材工場、チップ工場、集成材メーカー間で熾烈な丸太争奪戦が繰り広げられていることだ。東北の場合、カラマツ丸太(4m)だと1万2240〜1万2900円/㎥で合板工場へ入っている。それでも北洋カラマツに比べると格安だ。また、今秋には岩手県にカラマツの大型集成材工場が新設される。さらに針葉樹チップ工場がB材、C材丸太の集荷に乗り出している。大曲のC材などは4000円/㎥でチップ工場に入っていると聞いている。

遠藤
  山元で増産体制をつくれないのか。

村上
  森林組合労務班はともかく、民間の素材生産業界では従事者の老齢化とリタイアが進んでいる。その後を若い担い手で埋めないと、増産は無理ではないか。

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人工乾燥機の増設を予定している

◇        ◇

  国産集成材工場は全国に散在しており、原料の丸太集荷は地域事情に左右される面が大きい。また、工場ごとに製造ラインとコストがまちまちであり、ホワイトウッド集成管柱のように全国一律で価格を提示できない弱点をもっている。
 しかし、「三木」は「ランバー」との連携によって、スギ集成管柱の値上げ提示をするまでに力をつけた。問題は山の増産体制確立だ。

(『林政ニュース』第316号(2007(平成19)年4月18日発行)より)

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