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住宅メーカーの国産材シフトがあぶりだした光と影

国産材業界の様相が激変している。大手住宅メーカーの国産材シフトが明確になり、新しい需要に挑戦しようとする製材・加工メーカーやプレカット工場が存在感を増してきた。その反面、十分な供給体制が整っていない国産材の弱点も露呈してきている。このままでは、不況脱出のチャンスを掴めるのは、一部の企業に限られる。どうしたらいいのか。その答えを求めて、遠藤日雄・鹿児島大学教授は、ランバー宮崎協同組合(宮崎県宮崎市、北條誠・理事長)を訪れた。

年明けからの大量注文に応えきれず、底の浅さを露呈

ランバー宮崎協組は、プレカット事業(構造材、羽柄材、合板)はもとより、KD(人工乾燥)材、防腐処理材の生産も行い、年間2000棟前後のプレカットの実績をあげている。遠藤教授を迎えたのは、同協組の川上泉・専務理事。また、九州を代表するスギ集成材メーカーであるウッドエナジー協同組合(宮崎県日南市)の吉田利生・理事長(吉田産業合資会社代表社員)も駆けつけ、議論に加わった。川上、吉田両氏とも、大手住宅メーカーの最新動向について熟知しているエキスパートだ。

遠藤教授
年明け早々、九州の大型国産材製材工場数社に取材を申し込んだら、「忙しくて対応できない、4月以降にしてくれ」と断られた。

吉田理事長
弊社も断ったと思う(笑)。

遠藤
なぜか?

吉田
大手ハウスメーカーの国産材利用量が一挙に増えたからだ。昨年12月段階ではそんな気配はなかったが、年が明けて急に大量注文がきた。受注に応じきれないほどだ。

遠藤
例えば、タマホームの間柱の注文は、6割が九州に集中していると聞いている。その意味では、今の九州は国産材業界の縮図でもあり、今後を占う試金石だ。

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川上泉・ランバー宮崎協同組合専務理事

川上専務
懸念しているのは、ここ数カ月で国産材業界が底の浅さを露呈してしまったことだ。大手住宅メーカーからの大量注文に2シフト、3シフトで対応している製材工場はまだ限られている。

遠藤
九州の国産材製材大手をざっと思い浮かべただけでも、西九州木材事業協組、佐伯広域森林組合、玉名製材協組、木脇産業、外山木材、持永木材、吉田産業など10指に余る。丸太消費量は優に100万m3を超え、九州の製材用国産材丸太の30%を占める。それでも受注に応じきれないというのか。

川上
まだまだ足りない。今後は、追加投資も含めて40~50億円規模の設備投資による大型量産工場の出現が待たれる。

間伐一本槍では限界、需要無視のツケが回る

吉田
もう1つ、国産材業界の底の浅さを露呈したのが、丸太供給能力の不足だ。製材工場の能力が十分に発揮できていない。

遠藤
九州では今年に入って丸太価格がジワジワと上昇している。

吉田
山側の素材生産の実態をみると、とくに森林組合は国策の補助金事業により間伐、間伐のオンパレードだ。だが、間伐材だけで今の需要に応じようとしても無理だ。ところが、森林組合は、補助間伐事業をやっていればそれなりの実入りがあるので、リスクを背負ってまで買取り林産事業(皆伐)をやろうとはしない。その結果、需給がタイトになり丸太価格が上がっている。

遠藤
民主党政権下では、さらに間伐一本槍政策が強化されることが予想される。川下の現実を無視した林業政策は、将来大きなツケとなって回ってくるだろう。

川上
将来どころか、もうそのツケが回ってきている。弊社では、大手住宅メーカーから指定された国産材製材品が思うように手当できないので、外材に切り替えようかと真剣に検討している。

吉田
製材工場にしても、丸太価格がアップすると、生産すればするほど赤字が出て追加投資ができなくなる。悪循環だ。

遠藤
国産材業界とは、実に不思議なところだ。買ってくれ買ってくれと懇願しておきながら、いざ注文がくると売るモノがない。世界の7不思議に入る資格十分だ(笑)。

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吉田利生・ウッドエナジー協同組合理事長

間柱とラミナは互換可能、だがスタッドは無理

遠藤
木造軸組住宅メーカーだけでなく、2×4住宅メーカーも国産材を採用し始めている。これをどうみたらいいのか。

吉田
住宅メーカーの国産材シフトといっても、国産針葉樹合板を除けば、今のところ土台回りが中心だ。ウッドエナジー協組でも、三菱地所ホームへ90㎜角の大引(スギ集成材)を供給している(「林政ニュース」第387号参照)。かりに、2×4部材をSPFから国産材へ替えたいという注文が来ても、現時点では木造軸組住宅への対応で精一杯だ。2×4用のFJ(フィンガージョイント)設備へ投資すべきかもしれないが、その前に人工乾燥設備を拡充したい。

遠藤
2×4住宅の年間建築数は10万戸を超え、木造軸組住宅よりも木材使用量が多い。国産材が入り込める条件を探ることは、将来的にみて決してマイナスではない。何がネックになのか。

吉田
木造軸組の場合、間柱と集成管柱のラミナには互換性がある。間柱のサイズはバラバラだが、スタンダードな幅30㎜は4寸(12㎝)角集成管柱(4プライ)のラミナのサイズと同じだ。弊社でも、ラミナが不足すると間柱を挽いている工場から買うケースが少なくない。一種の水平連携が形成されているといえる。

ところが、2×4で木造軸組の間柱に相当するのはスタッド(縦枠材)になる。そのスタッドの寸法は2インチ=38㎜×89㎜で、間柱・ラミナとスタッド間に互換性がない。

遠藤
なるほど。間柱・ラミナとスタッドのサイズの違いが障壁になっているというわけか。では、FJ間柱の可能性はどうか?

吉田
2×4住宅で要求されるFJ間柱のレベルは極めて高い。端材の継ぎ合わせによる間柱では、精度の面で使ってもらえない。どうしてもバージン(直材)から欠点除去したFJ間柱が求められる。となると、製材・加工コストの面で合わない。

遠藤
集成化の可能性はどうか?

吉田
集成材も基本的には同じだ。丸太から集成材への歩留まりは20~25%と極端に低い。これをカバーするためには、加工段階で出てくるチップの価値を高める必要があるが、今の値段は5000~6000円/m3だ。これがラミナベースになればいいのだが。

遠藤
一方、丸太の供給面からのネックは何か。

吉田
スタッド用として2・4mの採材(造材)をすることは可能だが、スタッドを製材した後の背板から何を採るのか。ニーズと結びついた製材方法が確立されていない。

日本版2×4住宅(新木造軸組住宅)が突破口になる

遠藤
木造軸組住宅をみていると、ネダレスや筋交いをなくしたパネル工法が普及し、軸組と2×4の境目がファジーになっている。軸組の2×4化とでもいえようか。

吉田
そういう意味では、製材工場間で部材の互換性をもたせた日本版2×4住宅(新木造軸組住宅)を考えてみるのもおもしろい。

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プレカット工場は運送・保管業的側面を強めているが…

遠藤
最後に1つ聞きたい。大手住宅メーカの国産材シフトによって、住宅部材の選択権は住宅サイドが握った。また、そのアッセンブル機能は商社が担うようになった。これまで木材流通の要であったプレカットにも微妙な変化が生じている気がするが。

川上
お説のとおりだ。一言でいえば、住宅部材の運送・保管業的な側面を強いられている。大手住宅メーカーの部材を大量に保管するためには、雨に濡れないように屋根付き倉庫が必要になるが、その分のコストを負担してくれるわけではないので厳しいところだ。

遠藤
今後の生き残り策は?

川上
地場の中小工務店支援なども選択肢に入れながら,プレカットの強みであるCAD/CAMや邸別配送機能を活用して、単なる部材供給から物件(住宅づくり)に参画していく可能性を探っていきたい。

(『林政ニュース』第388号(2010(平成22)年5月12日発行)より


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