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ヒノキ量産工場に賭ける!(株)佐藤製材所

ここ数年、大手国産材製材の規模拡大が進んでいるが、そこに共通しているのはスギを原料としていることだ。では、国内針葉樹丸太生産量の15%を占めるヒノキはどうなのか。これまでヒノキ製材業は、小規模ながらも“役物”の製材で利益をあげてきたが、年々縮小を余儀なくされている。その一方で、戦後造林ヒノキは徐々に主伐期に入ってきた。では、ヒノキの量産製材は可能なのか。可能だとすれば、時代に見合ったヒノキ製品とは一体何なのか。そこで、遠藤日雄・鹿児島大学教授が(株)佐藤製材所(佐藤佑一会長、大分県日田市)を訪ねた。同社は、「新生産システム」への参画を契機に、「日田の佐藤」から「九州の佐藤へ」、さらに「全国の佐藤」へと存在感を増しつつある。 

南洋材と役物に見切り、台車を売りツインソー導入

 ヒノキと言えば、高級材の代名詞。したがって、ヒノキ製材の基本は、丸太を台車に乗せて、どう挽けば単価の高い製品がとれるかを追求することにあった。しかし、この製材スタイルは、今や時代遅れになってきている。 

遠藤教授
 佐藤製材所も、もともとはヒノキの役物製材だった。

佐藤会長
 正確にいえば、ヒノキ役物製材と南洋材製材の二本立てだった。日田市街地を流れる筑後川の下流・大川市は箱物(家具)産地、上流の日田はソファーや椅子などの脚物産地だった。弊社は、南洋材製材で大川へタンスの板材を、地元の日田にはソファーの構造材を販売し、ヒノキは旧来からの役物製材が中心だった。 

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ヒノキKD土台角の説明をする佐藤会長(右)

遠藤
 しかし、南洋材は入手困難になるし、箱物も脚物も中国からの輸入品に押されている。ヒノキ役物の出番も少なくなった。

佐藤
 そこで南洋材は平成13年に見切りをつけ、台車を売却して新たにツインソーを導入した。ヒノキの役物製材も将来性がないと判断して、平成9年と13年にツインソー各1台を購入した。これが生産性重視の足がかりになった。

遠藤
 三段跳びでいえばホップだ。では、次のステップは。

佐藤 
 今振り返ると、10年前頃だったと思う。この頃から、営業に力を入れるようになった。一言でいえば、「製材品を売り切る力」をつけようと思った。 

「製材品を売り切る力」をバックに年間5万㎥体制へ 

遠藤
 「製材品を売り切る力」とは、具体的にどういうことか。

佐藤
 弊社は南洋材製材もやっていたが、外材を入手するのがいかに難しいかを身をもって体験した。これに比べれば、国産材は資源が豊富にある。そのぶん営業にウエイトを置けば、ヒノキ量産製材はやっていけると考えた。そこで、それまでの製品市売市場への委託販売から、プレカット工場や住宅メーカーへの直接販売にウエイトを移した。これによって売り上げが年々2割アップし、営業が工場を引っ張る形の製材業に転換できた。

遠藤
 「営業が工場を引っ張る形」で製材規模を拡大したというわけだ。当然、丸太消費量も増える。

佐藤
 丸太の集荷範囲は拡大した。鹿児島県を除く九州全域と、山口県で立木購入や市場買いをしている。現在、年間4万㎥の丸太消費だが、来年の今頃には5万㎥の増産体制に入る計画だ。「新生産システム」の丸太の安定供給事業とも効率的に連携していきたい。 

遠藤
 次のステップへの準備は。

佐藤
 「新生産システム」の関連事業で、人工乾燥機2台、ツインソー2台、モルダー1台を導入した。これに自社の設備をあわせると、ツインソーは3台、乾燥機は5台になる。1日180㎥(年間約5万㎥)の丸太を消費できる体制ができてきた。
 この生産体制をバックに、営業にさらに力を入れている。工場が退けた後、丸太仕入れ、製材、営業のスタッフが毎晩6時から10時頃まで協議している。

4寸KD土台が「売り」、競争相手は少ない

 第322号で報じたように、新栄合板工業(株)(熊本県水俣市)が、高騰する北洋カラマツの代替材としてヒノキを使い始めた。さらに、佐藤製材所がヒノキの量産工場を立ち上げたことで、九州におけるヒノキを巡る様相が大きく変わり始めた。今後、ヒノキの使用量は確実に増加していくと予想されている。

遠藤
 ヒノキ量産工場の主力製品は何か。

佐藤
 末口径16㎝以上の丸太から、3m(柱)、4m(土台)、6m(通し柱)を製材する。中でも、16〜18㎝丸太から製材するグリーン(未乾燥)土台、20〜24㎝丸太から製材する4寸(12㎝角)4mのKD土台が主力だ。とくに、4寸KD土台は、弊社の「売り」になる。また、背板(「側」)は、集成材のラミナや内装材として販売している。 

遠藤
 製品の販売先は。 

佐藤 
 住宅メーカー、木材商社、プレカット工場などを介して遠くは秋田や宮城まで販売している。

遠藤
 受注型の量産ということになる。これだと短期の納入が必須条件になる。

佐藤
 KD材を増やすことによって在庫が可能になる。また、これとは別に、3寸角KDの大引や母屋なども製材して、住宅メーカーに提案している。 

遠藤
 ヒノキ土台角の競合製品は。

佐藤
 3寸5分角(10・5㎝角)では米ツガ注入土台、あとは米ヒバぐらい。スギは外材との真っ正面の競争になるが、ヒノキは今のところ競争相手が少ないのが特徴だ。 

新生産システムへの参画を機に工場の規模を拡大

遠藤
 雌伏の時を経て、国産ヒノキが文字どおり「檜舞台」に躍り出るということか。

佐藤
 まあ、そんなところだ(笑)。今後、ヒノキとスギの価格差はますます縮まるだろう。また、大型、中型、小型の工場にしても、各々個性のある工場でないと、生き残れない時代の到来ではないかと思う。

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『林政ニュース』第324号(2007(平成19)年9月12日発行)より)

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