「『日本の漫画は小児性愛を助長』と糾弾したCNNプロデューサー、女児をレイプし逮捕」はミスリード【ファクトチェック】
ニューヨーク・ポストの英文記事を共有し「『日本の漫画は小児性愛を助長する』と糾弾したCNNプロデュ―サーが女児(9)をレイプし逮捕された」などとするツイートが拡散していますが、逮捕された元プロデューサーが日本の漫画を糾弾していたというのはミスリードです。
検証対象
2022年12月17日、顔写真とともに「『日本の漫画は小児性愛を助長する』と糾弾していたCNNプロデューサー、女児(9)をレイプし逮捕」と書かれたツイートが拡散した。表示回数は12月26日現在、675万回に及ぶ。
ツイートは、ニューヨーク・ポストの英文記事を引用している。「母親に3000ドルを渡し娘(9)をレイプ」「余罪多数、女児へ度々『性的服従訓練』を実施」「『年齢を問わず、女性は女性』『全ての女性は性的に従順で男性より劣っているべき』と語る」とも記している。
リプライやリツイートには「助長された結果やらかした」「こういう主張をしている人達は、当人がそういう嗜好を持つ人間だという証明」というコメントがある一方で、デマであることを指摘するコメントも多かった。
同様の情報については、保守速報やShare News Japanも「日本の漫画を『小児性愛を助長する』と糾弾していたCNN名物プロデューサー、女児への性的暴行で逮捕」などと報じており、BuzzFeed Japanが検証記事を公開している。
検証過程
引用されているニューヨーク・ポストの記事は、「CNNの元プロデューサーが月曜日、9歳の少女をバーモントのスキーハウスに誘い込み、性的暴行を加えた容疑を認めた」という内容。記事中には、元プロデューサーのJohn Griffin被告が過去に「『日本の漫画は小児性愛を助長』と糾弾した」という記述はない。
CNNの過去記事をネット上で検索したところ、2014年6月18日に公開された「児童ポルノに関する新法を回避した、性描写を含む日本漫画」という記事が見つかった。他にも、2014年6月18日に「児童ポルノの所持を禁止する法律が日本で成立」、2015年12月27日に「日本の女子高生文化は暗い側面を隠す?」という記事も公開されている。
記事では、2014年6月に児童ポルノ所有が日本で違法化されたことを取り上げながら、漫画は規制対象に入っていないこと、それに反対する団体があること、子どもへの性犯罪が深刻化していることなどが書かれている。
CNNはこれらの記事で、日本の児童ポルノ所持に関する法律がアニメや漫画を対象外にしていることを取り上げている。だが、CNNや取材者自身の意見は書かれておらず、検証対象のツイートにある「漫画が小児性愛を助長」という直接的な文言はない。各記事の署名に、John Griffin被告の名前はない。
判定
以上のことから、「『日本の漫画は小児性愛を助長する』と糾弾したCNNプロデュ―サーが女児(9)をレイプし逮捕された」は不正確(ミスリード)。
あとがき
人の感情を刺激する派手な見出しはより多くのPVを集めます。「だいたいこういうことを言ってるんだろうから、これぐらい過激に表現しよう」という手法は、行き過ぎればミスリードや人権侵害、名誉毀損にも繋がります。
記事の中のある人物の意見だけを一部切り出し、その記事を出したメディア全体の意見だと言うのも、ミスリードに繋がる可能性があります。例えば、CNNの「日本の女子高生文化は暗い側面を隠す?」の記事の中では、JKカフェ利用者の声も紹介していますが、それがCNNの意見だということではありません。
検証:金子祥子
編集:古田大輔
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