「コミュニティの一生」と「イノベーションのジレンマ」

「コミュニティの一生」という有名なコピペがあります。

【コミュニティの一生】

面白い人が面白いことをする

面白いから凡人が集まってくる

住み着いた凡人が居場所を守るために主張し始める

面白い人が見切りをつけて居なくなる

残った凡人が面白くないことをする

面白くないので皆居なくなる

ところで、このコピペで「面白い人が面白いことをする」とされているような勢いのあるコミュニティからは様々な流行語が生まれます。新興のインターネットコミュニティには必ずと言っていいほど、そのコミュニティ発のミームがあります。

一時期多くのインターネットミームを生み出していたコミュニティの一つは通称「なんJ」、2ちゃんねるの「なんでも実況J」で、このコミュニティ発のミームの代表的なものは語尾につける「ンゴ」です。

「ンゴ」は、2017年の「JC・JK流行語大賞」の5位に選ばれるなど、広く流通しました。

しかし、よくよく考えてみれば「ンゴ」がなんJで流行り出したのが2008年。2017年にギャル語として再ブレイクするまで、10年近く流行り続けていたことになります。自分の印象でも「ンゴ」は使われ続け、逆に「ンゴ」並みのミームは2010年代のなんJには登場しませんでした。

こう考えると「コミュニティの一生」の「残った凡人が面白くないことをする」には、実は「イノベーションのジレンマ」のような要素があるのではないかと思います。

この本はイノベーションのジレンマをゲーム開発に拡張した本です。既存のノウハウを流用することによって生産性が向上するが、そのために新奇性の高いイノベーションが生まれなくなる現象を解説しています。(書名からは想像がつきませんが、がっつりゲーム業界の本です。国内ゲーム企業の経営・開発トップへの横断的なアンケートなど、興味深い資料もあります)

これをさらにインターネットコミュニティに当てはめます。新興のコミュニティには共通言語がなく、メンバーはコミュニティ内部のみで通用し、盛り上がれる言語や行動様式を求めています。ここに新しいミームやムーブメントが生まれる余地があります。
しかし、一度ミームや行動様式が確立すると、それに従うことで当面は快適なコミュニケーションを行うことができます。新奇性の高さを好む人は新たなコミュニティを開拓した方が幸せでしょう。

このことは「古い」コミュニティが「つまらない」要因が必ずしも人の質にないことを意味します。再び「イノベーションのジレンマ」に戻って考えると、ある企業から新奇性の高い製品やソリューションが生まれないことは、企業の従業員個人のせいとは必ずしも言えません。

翻って、コミュニティの魅力を維持するという観点では、やはり定期的に新しいムーブメントが必要になります。新しいムーブメント…ミームのイノベーションをどうやって起こすか。例えばゲームのコミュニティであればパブリッシャーがどう介入すればいいか。この辺は中々興味深いテーマで、答えがあるわけではありませんが、何か思いついたらnoteに書きたいと思います。

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