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Magic Spellslingersの特徴まとめ・雑感

『Magic: The Gathering』のスピンオフDCG、『Magic Spellslingers』がひっそりとリリースされていました。

20時間ほどプレイしたので特徴と所感をメモしてみます(8月21日追記あり)。

ルールの概要

ベースは『Hearthstone』です。とは言え、Hearthstone系のDCGの中では特徴的な箇所が多いので、主な違いを列挙していきます。

・戦闘は防御側主導
『Hearthstone』は攻撃側のユニットが自由に攻撃対象を選べるが、『Magic Spellslingers』は『Magic: The Gathering』と同様に、攻撃クリーチャーは相手プレイヤーに対して攻撃し、防御側がブロックを行う。
『Magic: The Gathering』と異なり、1体の攻撃クリーチャーを複数のクリーチャーでブロックすることはできない。また、攻撃してもタップ状態にならず、相手のターンにブロックを行うことができる。

・ヒーロー固有スキル、カード
クラス(色)ではなく、ヒーロー(スペルスリンガー)ごとに固有スキルがある。また、色ごとのカードのほかにヒーロー固有のカードも各3枚ある。初期体力もヒーローによって違う(最頻は24。最小22、最大28)。

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・デッキ構築ルール
デッキは複数の色のカードを使って構築できる。単色のスペルスリンガーは2色目のカードを6枚まで。混色のスペルスリンガーは両方の色のカードを好きなだけ使える。現状、単色のスペルスリンガーが6人(緑だけ2人)、混色のスペルスリンガーが10人(2色の組み合わせごとに1人)居る。
デッキ総数は30枚。同名カード2枚まで、「伝説」は1枚まで(『Hearthstone』と同じ)。

・罠、アーティファクト、土地
独自のカードタイプとして、「罠」、「アーティファクト」、「土地」がある。

罠は『Hearthstone』の「秘策」に近く、貼っておくと条件を満たしたときに自動的に発動する(自分のターンにも発動する)。特徴は、貼る動きが対戦相手から全く見えないこと。対戦相手からはマナもカードも消費していないように見える。また、つぎの自分のターンの開始時までに発動しなかった場合、罠は手札に帰って来る。
秘策に似た実装をされているが、プレイ感は『Magic: The Gathering』の「インスタント」との中間。

アーティファクトは非クリーチャーのパーマネントで、場に置いておくと1ターンに1回、起動型能力をプレイできる。耐久値が設定されており、起動すると1減少し、0になると破壊される。『Shadowverse』のアミュレットと異なり、場のクリーチャー枠(5枠)を占有しない。『Hearthstone』の武器と異なり、同名のものでなければ複数のアーティファクトを場に出せる。

土地は30枚のデッキとは別に、1枚だけ選ぶ特殊なカード。プレイすることはできず、何らかの効果を試合中に発揮する(何も起こらない「基本土地」もある)。
ほぼすべての土地は、一定ターン以降になると数十%(大体30%)の確率で、ターン開始時の最大マナ増加をスキップし、別の効果を発動する。(例:6ターン目以降、あなたは以下のチャンス(30%)を得る:このターン、あなたはマナ・ジェムを得る代わりに、4点回復する。)

プレイの所感

・固有スキルとカードが強い
スペルスリンガーにもよるが、固有スキルはかなり強く設定されている。固有スキルは必ず発動するため、多くのデッキは固有スキルに沿ったカードの選択をしている。
固有カードもスペルスリンガーによるが、通常カードより露骨に強いものがある。また、大抵は固有スキルとシナジーがある。

・ゲームスピードが速い
一部のアグロ(チャンドラ)が速く、序盤にぬるい動きをした相手を4、5ターンで倒すポテンシャルがある。もちろん長引く試合や、長期戦志向のスペルスリンガーも居るが、様々なHearthstone系DCGの中で平均決着ターンが最も早い可能性が高い。

上記の影響か、試合がやや単調に感じられました。

まず、固有スキルにはランダム性が一切ないので、それに頼ったデッキを多く生み、試合展開も似通ったものになりやすい傾向があります。この辺の問題は『Magic: The Gathering』の「相棒」や『Hearthstone』の「クエスト」も同じですが、カードではなくルールに組み込まれている(疎結合ではなく、密結合になっている)のは将来的な不安要素。

また、固有スキルはランダム性がないのが問題ですが、固有カードの方はカードが露骨に強いせいで、ランダム性(引きの影響)を過度に感じられる傾向があります。
ゲームスピードが遅ければ、特定カードや引きのブレの影響を分散させやすくなるため、ゲームスピードが速いことも、この印象を助長していると思われます。

全体的にランダム性が高い・低いというより、嫌な感じを受けるランダム性が多いなという印象で、土地もあまり好きなシステムではないです。ゲームスピードがもう少し遅い方が、面白くなりそうな気はしました。

まだ20時間程度しかプレイしておらず、ランクも最上位のミシックの1つ下(ダイヤモンド)なので、この辺の印象は今後変わる可能性もそこそこあります。そもそも筆者がアグロデッキを使っていたので、ゲームスピードを速く感じやすいバイアスもあると思われます。

エコノミー

・カード分解、生成
カードの分解は余剰カードのみ。また、分解して得られるリソースは色ごとに分けられており、別の色のカードの生成には使えない。

・通貨
通貨は「ゴールド」と「ジェム」がある。報酬で貰えるのは主にゴールド。ゴールドは、日替わりでシングルカードが売られているショップで使えるが、カードパックは購入できない(19日17時追記:1日1パックは購入できる)。
ジェムはたまにしか報酬で貰えず、主にお金を払って入手する。カードパックやゴールドを購入できる。

・報酬
ミッションを達成するとゴールドなどが貰える。また、5勝ごとにゴールド、カード生成リソース、カードなどが入った宝箱を貰えるが、週に7つまでしか貰えない。また、期間限定で開催されているイベントにゴールドを払って参加すると、成績によってカード生成リソースなどが貰える。

・スペルスリンガーのアンロック
初期状態では「チャンドラ」以外のスペルスリンガーは使えず、ほかのスペルスリンガーは「鍵」を使ってアンロックする必要がある。鍵は一定値「名声」を貯めると入手でき、名声はカードを獲得するごとにおまけで溜まっていく。スペルスリンガーをアンロックすると、スペルスリンガー固有カードも支給される。

全体的にお金を支払わないとカードを入手しにくい仕組み。日本のスマホゲームのようにガバガバ配布してくれるわけでもないので、色んなカードを使いたい人はストレスに感じるかもしません。
噂によると、今開催されているイベントが美味しいらしいので、イベントを周回するとマシになる可能性はあります。

無料で使えるカードは強く、スペルスリンガーごとにデフォルト設定されているスターターデッキもかなり「まとも」です。初期状態で使えるカードやデッキがここまで強いDCGはほぼ存在しません。デフォルトデッキを少しずついじりながら、スペルスリンガーをアンロックしていくのが標準的な遊び方になると思います。

前述のように、スペルスリンガー固有スキルが強く、固有スキルに合わせた構築をしてれば大体まともなデッキになるので、開発者側もスペルスリンガー単位で要素をアンロックすることを想定しており、カード単位の工夫は従来のTCGほどは重視していない印象を持ちました。

UI・プロモーション

あまり良い印象がないので、まとめてさらっと書きます。

UIは全体的にテンポが悪く、無駄な演出が散見されます。また、デッキ構築画面なども使いやすいとは言えません。2022年現在サービスされている著名なDCGの中に入れて比較すると、明らかに平均以下の快適さです。

プロモーションは、ゲームがひっそりとリリースされ、そこまで話題になっていないことからも分かるように、大した予算をかけられていない雰囲気があります。
驚いたこととして、『Magic Spellslingers』の公式Twitterアカウントが英語アカウントしかなく、そのアカウントは「アカウント作成しました。ベータテスト中です」「リリースされました」の2Tweetしかしていません(553フォロワー)。

記事執筆時点で、サービスに何らかの障害が発生しており、試合が始まらないという現象がTwitterやゲーム内チャット、公式バグレポートなどで話題になっているのですが、それに対する反応もありません。

これは「売る気がない」と評されても致し方ないでしょう。開発費はそれなりにかかっていそうですが…全体的にWizards of the CoastのMagic: The Gatheringスピンオフゲームは、成功・失敗以前に全然話題にならないことが大半なので、個別のゲーム云々より上位のレイヤーに問題がある気がしてなりません。

総括

というわけで全体的にネガティブなことを多く書きましたが、初期段階でそこそこ強いデッキを使用でき、プレイも難しくなく、デッキ構築も簡単というのは『Magic Spellslingers』の大きな長所で、DCG初体験の人が触ってみるタイトルとしては悪くないかもしれません。

お金を払わずにすぐ遊べることから、DCG経験者も触ってみて損をすることはないと思うので、少しでも興味を持った方はプレイしてみてはいかがでしょうか。

8月21日追記

ミシックまでやりました。

無題

ダイヤモンドまでチャンドラ

開会式をチャンドラで周回

ラルでダイヤモンドからミシックまで

という感じでした。「今開催されているイベントが美味しいらしい」と書きましたが、実際しばらく周回すれば大抵のデッキを各色1つずつ作れるので、最初はゲームに慣れるついでに周回するのがいいかもしれません。

相変わらずゲームスピードはちょっと速い気はしますが、ラルはランダム生成が多いせいで単調さが緩和される印象はありました。スペルスリンガーのスキルを強くすることで、アーキタイプ(デッキの型)を明確にし、デッキの特色を強調するとともにデッキの構築難易度を下げる方針は、Hearthstone以降のDCGのトレンドとは合致しているので、試みとしては分からなくもないです。

個人的には全員にカードやデッキ情報が生き渡ったときのプレイ感や、今後の拡張性が気になるので、プレイ頻度は下げつつ見守っていきたいと思います。

(使ったデッキを貼っておきます)

## スペルスリンガー: チャンドラ
## 土地: 活火山
## カード: 2, ショック
## カード: 2, 飛びかかるキツネザル
## カード: 2, 怒り狂うゴブリン
## カード: 2, アズラの紅蓮術師
## カード: 2, 短剣爪のインプ
## カード: 2, ゴブリンの近道抜け
## カード: 2, 膨れ上がったイグアナ
## カード: 2, 炎の精霊
## カード: 2, 剣の砲手
## カード: 2, 怒り駆け
## カード: 2, 叩き伏せ
## カード: 2, チャンドラの炎技
## カード: 2, 襲撃するミノタウルス
## カード: 2, 火炎弾
## カード: 2, 溶岩の斧
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## スペルスリンガー: ラル
## 土地: トレイリアのアカデミー
## カード: 2, 天才の火花
## カード: 2, ショック
## カード: 2, 炎のこじ開け
## カード: 2, 送還
## カード: 2, 予期
## カード: 2, 等時の王笏
## カード: 2, 加速
## カード: 2, マナのうねり
## カード: 2, 予言
## カード: 2, 炎のコイル
## カード: 2, 紅蓮地獄
## カード: 2, 混沌の稲妻
## カード: 2, スコアボード
## カード: 2, 火想者の稲妻
## カード: 2, 水跳ねの海蛇
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