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ゲームデザイン

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#マジックザギャザリング

Magic: The Gatheringのリミテッドが初心者に向いていない理由

Magic: The Gatheringの初心者に対して、ブースタードラフトやシールドなどのリミテッドフォーマットを勧めるべきという主張をたまに目にします。 筆者はこの主張にはまったく賛成しておらず、リミテッドは初心者には不向きなフォーマットだと考えているのですが、その理由を掘り下げてみると「ゲームの『初心者向け』とは何か?」というより広いテーマに関するヒントが得られたため、ひとまず考えたことをメモしておきます。 リミテッドが初心者に向いていない理由・選択が多すぎる ・選

デッキの「多様性」ってどういうこと? - 環境を多様に見せる手法を考える

TCGのゲームバランスにおいて重視される要素に「多様性」があります。 「デッキが多様であることは望ましい」という見解を、多くのタイトルが公表しています。「デッキが多様である」とは、様々なアーキタイプ(デッキタイプ)が試合で活躍できる状態を指しています。この状態が望ましいことは、多くの人が同意するのではないかと思います。 ここで思考実験をしてみます。例えば『Magic: The Gathering』に以下のようなカードがあるとしましょう。 平たく言えば「引けば勝つ」カード

TCGの未来 - AIとビッグデータはゲームデザインをどう変えるか

トレーディングカードゲーム(TCG)のデジタル化は、ゲームデザインに大きな影響を与えています。この影響は今後さらに大きくなり、デジタルゲーム全般と連動した変化につながる可能性があります。 この記事では、AIなどの技術がTCGのデザインに与える影響を分析し、TCGの未来像を予測します。 TCGのデジタル革命は始まったばかりこれまで筆者のnoteでは、TCGのデジタル化がゲームデザインに与えた影響を論じてきた。 これらはデジタル化によって起こり得る変化のうち、ごく一部に過ぎ

ゲームの面白さとは何か? - 7つのエレメントと対応するゲームジャンル

世の中には様々なゲームがあり、ゲームごとに多様な面白さがあります。面白さの追求や議論には「面白さ」とは何か正確に把握することが不可欠ですが、「面白さ」は人によって捉え方の異なる概念です。 この記事ではゲームの面白さをいくつかの構成要素に分解し、ゲームジャンルを構成要素の組み合わせとして捉えることで、多くの人が合意できる面白さの正体に迫ります。 また、構成要素に対する個人の好みの違いが何によって生じるかを掘り下げるとともに、製品やプロモーションの実例に当てはめます。 面白

デジタルカードゲーム時代にデッキ構築を面白くする手法を考える

デッキ構築はTCGの中心的な要素でしたが、インターネットやSNSの普及、TCGのデジタル化によって存在感が薄れつつあります。 この記事では現代のデッキ構築が置かれている問題と、DCG開発会社が試みた対処法を分析し、新しい対処法を提案します。 対人ゲーム3要素の1つ「研究」前回の記事では対人ゲームの3要素のうち「技術」と「意思決定」を取り上げた。 今回は「研究」、その中でもTCGの象徴である「デッキ構築」について掘り下げたい。 元来TCGはデッキ構築の「研究」と試合での

Magic: The Gathering vs Hearthstone ゲームデザインに潜む2つのゲーム観

TCG・DCGの世界にはMagic: The Gatheringを始祖とするギャンブラー的ゲーム観と、Hearthstoneを始祖とするアスリート的ゲーム観があり、両者の違いはゲームデザインのあらゆる部分に影響を与えています。 興味深いことに、この違いはTCG・DCGのプレイヤーやデザイナーの間でも十分に言語化されておらず、整合性のない設計によってプレイヤー体験が悪化する事例が見られます。 この記事では2つのゲーム観を比較し、実際のカードデザイン事例と照らし合わせることで

Legends of Runeterraのカードデザイン方針を分析する

Riotの新作DCG、Legends of Runeterraの第2回プレビューが、11月15日から20日にかけて行われました。 この記事では、Legends of Runeterraのカードデザインの傾向をほかのカードゲームと比較し、デザイン方針を分析します。 システムとカードをつなぐ「データベース構造」カードゲームや、ほかのゲームを設計するとき、まず重要になるのはゲームシステムだ。10月に行われた初回プレビューのときは、Legends of Runeterraのゲームシ