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カップラーメンはなぜ「3分」なのか!?カップラーメンの待ち時間から学ぶ一流の仕事術

 みなさんはカップラーメンの待ち時間がなぜ「3分」かご存知でしょうか?

 実はカップラーメン、技術的には1分で作れるそうです。ですが、わざと「3分」に設定しているのだそうです。

 ではなぜ1分でも作れるのに「3分」も待たせるのか?

 それは、「一番美味しく食べられる時間が3分」だからだそうです。

 1分では早すぎて気分が上がらない、5分だと長過ぎる。
 つまり、適度に焦らされて食べるカップラーメンが一番美味しいということなのです。

 本題はここからです。

 相良奈美香氏の著書「行動経済学が最強の学問である」によると、人には「時間をかけたほうが価値がある」と感じる認知のクセがあるそうです。
 この現象を「デュレーション・ヒューリスティック」といいます。

 デュレーション・ヒューリスティックとは、「サービスの内容よりも、かかった時間で評価してしまう認知のクセ」のことを指します。
 例えば、あなたはオートロックのマンションに住んでいるとします。あるとき、鍵を室内に置いたまま外に出て、ドアを閉めてしまいました。(中略)仕方なく、専門の技術者に来てもらい技術者の手にかかればものの3分で解錠できましたが、料金として2万円かかりました。
 このときあなたはどう感じますか?「たった3分で2万円も取られてしまった」と思う方が大半でしょう。

相良奈美香氏「行動経済学が最強の学問である」

 私の解釈ですが、3分で解錠しても2万円、30分で解錠しても2万円だったら、30分で解錠してもらった時のほうがありがたみを感じてしまうクセを人は持っているということだと思います。(もちろん急用のときは3分のほうが価値が増しますが。)

 このように人は待たされた方が価値があると思ってしまうクセを持っているのだそうです。

 確かに有名店や人気アトラクションの行列待ちでようやくありつけた時は、すごく価値があるように感じてしまいますよね。

 話を戻すと、本来カップラーメンは1分で作れるはずなのに、あえて3分待った方が美味しいと感じてしまうのは、「時間をかけた方が価値がある」と感じてしまう人間の認知のクセを応用したからなのでしょう。

 

 ではカップラーメンの待ち時間と一流の仕事にはどういう関係があるのか?

 私の好きな西野亮廣氏の「夢と金」に好きなエピソードがあるので引用させていただきます。少し長い引用ですが、下手に私の解釈を入れて誤認識があると嫌なので、4ページ分まるごと書かせていただきます。

 都内にある超高級ホテルに泊った時のことだ。
 超高級ホテルの正体を知るには1日では足りなさそうだったので、僕は3日間ほど予約してみた。まぁ、勉強代。
 初日。
 部屋に通され、さっそく仕事をしようと思ったら、スマホの充電器を自宅に忘れてきたことに気がついた。
 一晩ぐらいなら乗り切れそうだけど、今日から3日間お世話になる。
 これでは仕事にならない。
 僕は大きく溜め息をつき、近所のケータイショップを検索した。
 どうせ充電器はすぐに寿命がくるし、スペア用に買っておこうと考えたわけだ。
 ところが、そのケータイショップは、歩くと遠く、タクシーを拾っていくほどは遠くない位置にある。
 これではタクシー代がもったいないし、それに、こんなことでタクシーを使ったら、「充電器を忘れた」というミスが際立ってしまうので、負けじゃん。(#負けなのか?)
 スマホを閉じて、もう一発溜め息をこぼした後、「ホテルのフロントに言えば貸してもらえるかも」と考えた西野は、すかさずフロントに連絡を入れて「スマホの充電器を忘れて困ってるんです。お借りできますか?」とお願いしてみた。
 そこから、ものの1~2分で充電器を持ってきてくださり、飛び上がって喜んだ西野は「ありがとうございます!助かりました!」とホテルのスタッフさんに何度も頭を下げた。おかげで、そこから3日間は実に快適に過ごすことができましたとさ。
 さて。
 これは「充電器を忘れたお客さんのためにスペアの充電器を用意していたホテルってイケてるよね。」という話じゃない。
 僕が気になったのは、「僕がスマホの充電器を忘れた、お客さん第一号なわけがない」という点だ。
 過去、数百人、数千人のお客さんが、スマホの充電器を忘れ、そして、僕と同じようにフロントに駆け込んでいっただろう。
 ならば、最初から部屋の中にスペアの充電器を置いておけばいいじゃないか?
 実際、部屋の中(鏡台の前など)にスペアの充電器が置かれているビジネスホテルは少なくない。
 「配慮が行き届いているサービス(正しいサービス)」は明らかにそっちだ。
 だけどどうだろう。
 僕がスマホの充電器を自宅に忘れたことに気がついた、あの時。
 部屋の中にスペアの充電器が備えてあったら、僕は溜め息をこぼすこともなく、感情の針を動かすことなく、そのまま3日間を過ごしていただろう。
 ホテルのスタッフさんとコミュニケーションをとることもなければ、ホテルのスタッフさんに救われ、感謝することもない。
 あの時、僕は一度谷に落ちた。
 そこにホテルのスタッフさんが颯爽と現れ、救いの手を差し伸べてくれて、僕を谷から引き上げてくれた。
 そもそも「谷」などなければ、僕が谷に落ちることもなかったわけだが、だけど僕の目の前にはそのホテルのスタッフさんがヒーローに映った。
 「この人(この人が働くホテル)に何かの形でお礼をしたいな」と思った。それは「恋」に近い感情だ。
 「不自由のない正しいサービス」と「不自由があるが惚れるサービス」。
 より高い値がつくのはどっちだ?

西野亮廣氏「夢と金」

 もし充電器が部屋にあったら、わざわざ持ってきてくれたホテルの方に感謝の気持ちを抱くことはなかったでしょう。

 注目したいのは、「わざわざ持ってきてくれるという行為」「喜びという感情を演出している」という点です。もし格安ホテルなら、初めから置いてある方が満足度は高いかもしれないですがそこは高級ホテル。もしかすると、「高いお金を出しているんだから、これくらいのサービスがあって当たり前だよね。」そう思ってしまうかもしれない。つまり同じ「充電器を貸し出す」というサービスでも一方は当たり前一方は感謝されるということです。

 これがホテルの意図だったのかはわからないですし、西野氏の感性が優れていることも要因だと思いますが、この瞬間、間違いなく「デュレーション・ヒューリスティック」が発動していたと思います。

 前置きが長くなりましたが、このようにお客様を喜ばせる満足体験を演出できるというのが一流の仕事だと思います。カップラーメンの3分もお客様を喜ばせる体験を演出しています。

 
世の中には、パフォーマー、お笑い芸人、スポーツ選手、YouTuber、ブロガー、寿司職人など数えきれないほどの職業がありますが、その道の一流の方や一流の組織というのは、魅せ方にまで心配りがあるのだと思います。喜ばせる体験を演出したり、そもそも設計されていたりする。私たちは、知らず知らずのうちにその体験に魅了され、感動し、またそのサービスを受けたいと思う。そして、これこそが一流の仕事術なのだと思います。

 私たちが覚えておかなければいけないことは、人にはデュレーション・ヒューリスティックという認知のクセがあることを理解した上で、早くて正確な仕事だけがお客様を喜ばせるわけではないということだと思います。

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