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住之江ボートレース

2023年2月11日(土)に宮本牛乳さん(以下、宮牛さん)、水筒さんと共に住之江ボートレース場に出かけた。当日は暖かくよく晴れていた。

私はギャンブルにいい思い出がなくて、競馬は昔ガクヅケの木田君に連れられウインズ難波で「オッズが1.何倍のガチガチの馬にセコく賭け、浮いた小銭でラーメンを食う」といったせせこましい勝ちパターンを教えられたのだがその馬が沈んで3千円少々をスって「もう二度とやるか」と見切りをつけたし、パチスロも服が煙草臭くなるわ五月蠅いわで一回こっきりでやめている。ただ然し人のギャンブルのエピソードには興味があり聞くのが好きで、大勝ちも大負けも面白くそして自分に多少なりともハクを付けたいと2人を誘ったのだった。

おそらく宮牛さんもギャンブルに関しては私と同程度に素人だと思うのだがノリが良いので誘いやすかったし、人生経験豊富な水筒さんは心得があるので「居といてください」と声をかけた。あまり書くと本人が嫌がりそうなので詳細は省くが、私の出会った人間の中で水筒さんは群を抜けて奇人という印象があって文章もずば抜けて面白い。あまりガツガツやりたくないタイプの人のようなので細々書き続けてほしい。


茶碗蒸しもつけちゃった

お昼に現地に集合したが、レース開始は14時だった。私たちは腹ごしらえと作戦会議を兼ねて近くの「和食さと 住之江公園店」に立ち寄った。ゲン担ぎに私はとんかつ定食を注文したのだが2人は蕎麦を選んでいた。(宮牛さんは1人カツを食べればグループ全体にバフがかかるとよくわからない理屈を述べていた)そこで作戦もそぞろに雑談をしていたのだが、最近switchを買った、という水筒さんに「スプラトゥーンはやってますか?」と問うと「売った」と即座に回答された。スプラトゥーン売る人っているのか。


住之江ボートレース場入り口

ついに第一レース開始の時刻が近づき、再びボートレース場に足を向けた。アジア丸出し、といった様子の信じられない量の自転車が駐輪場に所狭しと停められていた。のちのち判ることだが、数百円が一瞬で数万円に化ける可能性もあるし、片道のバス代・電車代すらも惜しがる人が多いのもうなづける。


北京?



百円で入場券を購入して場内に入ると、人間1人がちょうど収まるサイズのブースに幽閉されて予想を売っているおじいさんが3名ほど居て、あの人たちはどのような雇用形態であそこに立っているのか疑問に思った。

私と宮牛さんはマークシートの書き方すらままならないので、水筒さんに手ほどきを受けつつ見様見真似で舟券を購入した。いわく、内側にいる1号艇から順に有利な仕組みになっているので、1を軸に予想を組み立てるのが安定していて良いとのことだった。とりあえずオーソドックスに1−3の2連単と1−2−3の3連複を購入。


ライフの2階で流れているような妙に間の抜けたBGMが聴こえてきたかと思うとそれがレース開始の合図で、会場の席に観客が集まりだしてきた。競艇はゲームの特質上、逆転が起こりにくく第1コーナーでおおかたの趨勢が決してしまうから、買った艇がスタートに失敗するとその時点で諦め、次のレースに頭を切り替える人も多いらしい。ただ、第1コーナーで自分の予想した展開になろうものならテンションの高揚は凄まじく、一気に前のめりになってしまう。しかも1ー2あたりを固く押さえておけば傷口もある程度拡がらずに済むので精神衛生面上も健康的でもある。初めてのレースは1号艇から6号艇まで順位がそのまま並び、私はほんの一千円程度だったが初勝利を手にした。しかも次のレースが三十分後には始まるので余韻に浸っている時間はさほどない。このテンポの良さが癖になり、「は、はよ次の舟券を買わせてくらはい」となるのだ。住之江競艇はナイターもあるから、昼間に仕事をサボってちびちびと舟券を買い、夜まで粘るのも悪くないんじゃないかと思えた。水筒さんには「パソコン持ってきてここで仕事すれば良いじゃないですか」と言われた。

そして第2レースでいきなり事件が起きた。宮牛さんが120倍ほどになる5−6の2連複を的中させたのである。基本的に何をやっても要領の良い人で羨ましい。200円の舟券が1万数千円に化け、我々は宮牛さんの背後を護衛しながら、引き換え機から吐き出された万札を見て興奮がピークに達した。


宮牛さんのツイッターより

実際に「勝つ人」を目撃してしまうともう冷静では居られないようになり、第3レース以降はもう3人で喋る時間も短くなり券売機とレース上を往復する人型の虫になっていた。会場の中では売店でビールを買ってうまそうに飲んでいる人もけっこういて、たしかにビールは飲みたいが、ここでアルコールを入れてしまうと判断に支障を障す可能性があるな、と紙コップのオロナミンCを購入したのだが、レース上に予想新聞を敷いてあぐらをかいている「舟で飯食ってます」風のヌシのようなおじいさんがかたわらにオロCを2つ置いていて、「私の判断は間違っていなかった」と嬉しくなった。

しかしその先は勝ったり負けたりで、私は千五百円〜二千円程度のプラマイをうろちょろしながら結局マイナスで終わってしまった。水筒さんもそうだったらしい。宮牛さんは一万円の勝ちを少し削りながらも死守し初の競艇を見事プラスで終わらせていた。


第6レースを最後にしようと、倍率高い買い方で一発でかいのを狙いませんか?と3人で百円を出し合い、2ー4ー5の3連単を購入した。的中すれば300倍くらいになる舟券で、これで勝ってうなぎでも食い行きましょう!肝吸いもつけましょう!と顔中脂ぎりながらレースの開始を待っていたのだが、始まった瞬間に2号艇が沈み即座にジ・エンドとなった。競馬より「人」に賭けている実感が強いから、期待していた選手が拍子抜けの結果に終わると「お前、マジで……。」とヘイトを抱きそうになってしまいそうになり競艇選手という職業はよっぽどメンタルが太い人でないと務まらないだろう。意外とおじさん観客たちは大人しく勝負を見守っていて、若い大学生ぐらいのあんちゃんたちのほうがイキが良かったが口汚く選手をののしっているような輩は居ないようだった。

個人的には競馬やパチスロよりも面白く、たまに遊びにいくぐらいなら十分アリだと思ったし、尼崎やびわ湖など別の会場にも足を運びたいとさえ感じた。その後は大国町まで引き返し、勝った宮牛さんにタカり、大阪王将で飲み食いして帰った。カキの天ぷらが異様に旨かった。


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