夏を降りて

相変わらず世間を降りている。もうすぐ二ヶ月半になる。大学一年、実家に帰省しまるまる夏休みの間パワプロをやっていた頃に匹敵する期間降りており、このままいけば当該期間を更新する見込みである。降りていると、一日が過ぎるのは遅いのに、一週間、一ヶ月はやたらと早く感じるという時間のねじれ、超ひも理論、六次元空間を体感することができる。

降りている間は文章をバリバリ書こうとして、「時間はあるんでやりまっせ」などと安請け合いをしたまでは良かったがこれがどうもエンジンが入らない。午後から一生懸命がんばろう、と昼飯につけ麺の大盛りを食べ、頭がボーッとしてきて横になっていたら日が暮れていてすっかりやる気がなくなっている。そのくせこんなnoteに逃げていて非常に申し訳ないのであるが、前もこんなことはあって、書けない時は銃口を突きつけられても書けないのであって、noteを書ける程度までは回復しているのでもう少し待ってください。すみません。

今日はショッピングモールをうろついてみた。うっすら「そういえば、ハンディの扇風機と首に巻く冷たいUの字のアレが欲しいな」と考えていたのでロフトに寄った。降りている奴がロフトなんか行くな。それはともかくとして、目立つ場所に「真夏の冷感フェア」として陳列されているハンディの扇風機はピンキリで高いもので八千円ぐらいする。サンプルで性能を試し、充分だったので最も安い千円のものを購入。首のUの字のアレも四千円ぐらいする。これは諦め、ダイソーに寄ってみるも取り扱いなし。ココカラファインで目的の商品を発見。千二百円。妥当かは知らないが四千円のものとどう違うんだろう。Uの字のアレのために相当な時間を割いたが、なんせ降りているから後悔はまったくない。

先日、三重県に行った(後日、まとまった文章にする予定)。平日ど真ん中だったので、観光スポットには人生そのものをやり切った末に降りている先輩たちと、授業をサボっているのだかコマを入れていないのだかの大学生がほとんどだったのだが、不思議なのが、高校生がけっこういた。

高校って、中間・期末テストの日の午後は授業がない。というのは経験したように思うのだが、わりと日ごろから日中遊んでいる高校生がいる。あれ?高校って昼までで終わりだったんだっけ。私自身の高校生活がほとんど記憶から剥離しているのであやふやになってしまっている。今日のショッピングモールでも高校生を見かけた。火曜から友達とモールの中のスタバで喋ってゲーセン寄って、勉強しろ!と大声を出したくなるが降りている身分で人に偉そうには振る舞えないし、捕まる。

降りていると言っても、やらなければならないこと、やりたいことはあるし、指一本でギリギリ世間にぶら下がっていると言えなくもない。完全に降り切る勇気もないし場合でもないから多少の焦りはあるのだけれど、先ほど、ゆるくカーブしたモールの吹き抜け廊下のベンチソファで、チラシを敷き、その上に腰掛けている赤いバンダナを巻いた五十歳前後の男性を目の当たりにし、私は驚愕した。「人はここまで降りれるのか」と。

両肩と頸部は弛緩しきっていて、視線は吹き抜けの間、中空あたりを漂っている。家族を待っている様子でなし、そもそも尻の下にチラシを敷いている意味がよくわからない。火曜日に。自分も「降りる生活」が板についてきたように自負していたけれどもまだまだだった。もう二十年降りたら、あの佇まいが身につくだろうか。色々な人がいる。降りている人も降りていない人も、夏を楽しんでください。


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