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矢田〜河内天美

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ビールケースをひっくり返したような近鉄矢田駅から一駅の河内天美駅まで歩いた。前日に雨がまとめて降ったせいか、いやらしいほどの晴天だった。矢田は異様に家賃が安くて、ワンルームなら平気で3万を切る。阪南大学生、芸短(大阪芸術短期大学)生が一人暮らししていたり、中国の小金持ちが日本の愛人にマンションを買い与えたりしている。高架下は半円に石型のベンチが設置されていて、等間隔に腰掛けたおじいさんたちが皆アルコールを摂取していた。お互いに口を利いているふうでもなかったから、各々が単身で集ってシャドーボクシングに勤しんでいるようだ。灼熱の高架下でワンカップを飲みながら、らくらくスマホでFANZA動画をチェックするのもオツなものである。

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『熱血格闘伝説』でこんなステージがあったような気がする。この辺りは昼間だからまだ平気だが、日が暮れてくると本当に怖い。矢田という場所は、西成の次にあまり治安がよろしくないとまことしやかに囁かれている。西成は道端に人体が転がっていたり盗品が売っていたりするからビジュアル的にわかりやすいが、矢田は人間の根源に訴えかけるような、物陰からカマイタチが現れて足首切られるんじゃないかというような「おっとろしさ」があって、長居してはいけない、と本能的にその場から逃れたくなる。ただ、3本5000円のメガネ屋や、関西で一番洋酒が充実している酒屋なんかもあるから懐が深い。

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大阪市と松原市を区切る大和川を渡った。橋を渡る近鉄電車を拝むにはベストスポットだが、わざわざ橋の途中で立ち止まる人間は私の他には一人もいなかったから遮蔽物の一切ない直射日光の下で近鉄電車が通過するのを待って写真を撮った。河川敷のグラウンドでは少年野球をやっていた。自粛期間中にどこほっついてたんだというくらい日に焼けた蛍光色のタンクトップの親父が腕を組んで試合の行く末を見守っていた。子どもの時分は心底苦痛だった少年野球だが、今けっこう野球やりたいし、何と言ってもバーベキューがやりたいのだ。気合いを入れてアロハシャツを買ってしまったが、袖を通すことなく火にくべることになるかもしれない。

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阿麻美許曽(あまみこそ)神社を詣でた。河内源氏の由緒からか、全く知識がないから知らないけれどもけっこう寺社仏閣がある。境内に響き渡るほどの柏手を打ってお参りをするおばあさんがいなくなるタイミングを見計らって手を合わせてきた。掲示板には、夏祭りは神社庁からの指示でコロナ警戒のため中止することになりましたと貼り出しがされていた。

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河内天美駅までたどり着いた。松原市まで来るのは初めてである。flumpoolを輩出したことでお役目を果たした大阪府松原市である。駅前で早々、ポルノたばこののぼりが靡いており期待が高まる。ケツかなり出てる女性がうつ伏せでタバコを巻いている。

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幅1.5メートルほどの商店街がしばらく続いていた。駅側は果物屋や魚屋が営業していたが、奥に進むにつれほとんどシャッターだった。日曜日だからか平常運転なのか。

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松原名物、『だるまや』に入った。串カツ一本40円から、とほとんど慈善でやっている店なのだが、5本単位で注文しなければならず、「肉」と「なすび」を選択した。なすびが尋常じゃないくらい熱く、噛んだ瞬間フレアが溢れ出て喉の深層部を火傷した。串カツだけの予定だったが、テーブルがイコール鉄板で、焼き物を頼まなければ後悔する気がしてミックス焼きそばも注文。イカがウレタンくらい弾力があり、おいしかった。串カツ10本食べ、焼きそばとハイボール1杯で1,410円だった。なかなかよく食べてしまったが、後から入店してきたボーダーのポロシャツを着た工務店風情のおじいさんが、「肉」「ウインナー」「モダン焼き」「チューハイ」を組み合わせていて、ゴールドロジャーかと思った。

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