『ロマンスの神様』

先日、広瀬香美の『ロマンスの神様』を改めて聴いて感じた印象をここにまとめる。

"勇気と愛が 世界を救う 絶対いつか出会えるはずなの
沈む夕日に淋しくひとり こぶし握りしめる私"

大前提として、この歌は「生命讃歌」だと認識している。世を力強く生き抜く上での心構えを歌っている。「勇気と愛が 世界を救う」と大上段で始まるのは、人生をやっていくことの全肯定である。主人公の「生命力の強さ」「生きてこその精神」がこの後も存分に発揮される。

"週休二日 しかもフレックス 相手はどこにでもいるんだから
今夜飲み会 期待している 友達の友達に"

『ロマンスの神様』のwikipediaには、会社勤めの経験がない広瀬香美が、雑誌を読んで学んだ当時流行りのビジネス用語として「週休二日」「フレックス」のフレーズを取り入れたとある。さらに、スキー洋品店『アルペン』と所属事務所『ビクターテインメント』の費用折半でリリースされたとのことであるから、つまり「いろんな大人」が関わっている。いろんな大人が、「今っぽいフレーズを取り入れなさい」などとと好き放題注文をつけた結果出来上がった曲らしく、広瀬香美本人も「これ私の歌か?」と当時は疑問を持っていたという。

類推ばかりで申し訳ないが、この曲は生命讃歌であると同時に、「フラストレーションの爆発」だとも思う。「なめんなクソ大人」という、広瀬香美の中に溜まっていたガスに火花が引火した結果の奇跡の産物なのではないか。ただ、広瀬香美は2014年のインタビューで"奇っ怪でおもしろくて、歌って楽しい。みなさんのおかげです。自分の力だけではこうは仕上がらなかった"と語ったというから、改めて振り返った時のこの曲の面白さを味わっていると考えると嬉しい。"奇っ怪"と感じているのもいい。

"目立つには どうしたらいいの 一番の悩み
性格良ければいい そんなの嘘だと 思いませんか?
Boy Meets Girl 幸せの予感 きっと誰かを 感じてる
Fall In Love ロマンスの神様 この人でしょうか"

で、サビに入るわけだけれども、やはりここのキモは「性格良ければいい そんなの嘘だと 思いませんか?」である。性格さえよければ容姿は問わないと誰もが本音でしゃべるわけはなくて、というのも、「性格が合う」ということ、お互いに敬意を持つことは「相手にとってふさわしい容貌・容姿を整える」努力にも繋がるわけであるから、ありのままの自分を受け入れて欲しいとの願望は甘えであるのではないだろうか。この主人公はもうゴリゴリに自分を仕上げまくり、かつ生命力あふるる人なので、一生努力するし、それに実力の伴うパートナーを探しまくるのではないか。

"ノリと恥じらい 必要なのよ 初対面の男の人って
年齢 住所 趣味に職業 さりげなく チェックしなくちゃ
待っていました 合格ライン 早くサングラス取って見せてよ
笑顔が素敵 真顔も素敵 思わず見とれてしまうの"

場所はゲレンデだろうか?ともかく、サングラスをかけている男性は「笑顔が素敵 真顔も素敵」だったのである。ここで第一印象はがっちりハマった。すかさず、ノリと恥じらいも計算で演じている。私自身、「生き抜く力の強い女性」に惹かれていて、女性があまり打算的に動くと男性に拒否されてしまうのだろうが、自分自身が生きていく上で条件がより整っていた方が絶対に得なわけで、であれば、年齢も住所も趣味も職業も調べ上げた上で、共にこの世を生き抜ける確率の高いパートナーを選ぶ必要がある。

"幸せになれるものならば
友情より愛情 「帰りは送らせて」と
さっそくOK ちょっと信じられない

Boy Meets Girl恋してる瞬間 きっとあなたを 感じてる
Fall In Love ロマンスの神様 願いをかなえて
Boy Meets Girl恋する気持ち 何より素敵な宝物
Fall In Love ロマンスの神様 どうもありがとう"

この歌は、"恋する気持ち 何より素敵な宝物"と「恋」と「打算」と「生命力」の入り混じったすさまじい爆発力・推進力を産んでいるところが白眉なのだと思う。私がHello!projectの楽曲に強い魅力を感じるのもここにつながっていて、「生きねば。」精神の濃いものにどうしても惹かれる。

"よくあたる星占いに そう言えば 書いてあった
今日 会う人と結ばれる 今週も 来週も 再来週もずっと oh yeah!
Boy Meets Girl 土曜日 遊園地 一年たったら ハネムーン
Fall In Love ロマンスの神様 感謝しています
Boy Meets Girlいつまでも ずっとこの気持ちを忘れたくない
Fall In Love ロマンスの神様 どうもありがとう"

「土曜日 遊園地 一年たったら ハネムーン」に対しては「いや早い早い早い」である。恋する女性の時間感覚のねじれも、スケールの拡がりを生んでいて、螺旋にうなりながらこっちに向かってくる硬球のような印象を抱く。

ただしかし、どこまでもの研鑽の結果「ロマンスの神様」に縋るに至った精神・姿勢が尊いのではないか?

ともかく色々書いたけれども、一度聴いてみていただき各々の感想を是非コメントでお聞かせください。


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