暗人、現る

引き続き降りている。酷暑も過ぎ、秋も深まって年の瀬が近づいてきた。春から半年以上降りていて、いい加減、世間の潮流に戻らないと金銭的にも社会の立場的にも危うい。と、ぼちぼち就職サイトにも登録しモニタ画面の前でぶつぶつ求人内容に文句をつけながら活動している最中、友人から「人手不足で困っている、すぐにでも戦力が欲しいから、仕事を紹介したい」と声がかかった。

私はとにかく「なんでも、なんぼでもお仕事やらせてくらはい」状態であったので二つ返事で承諾、諸々の書類を送り、面接を終えた。友人曰く「話は通してあるし、おそらく形だけだから問題ない」と告げられており、所属可能なタイミングも聞かれ、ようやっと”浮かべる”と安心した。周囲にも「もう仕事決まるから安心してくれよナ」と言いふらしていた。

しかし先日、希望の会社からメールにて「ご希望にそぐわない結果となりました」「左様なら」「色々あるかもしれへんけど、せいぜいがんばりなはれ」と通達されたのだった。「人手は足りてないが、お前だけは勘弁してくれ」とも読めた。私も面接に落ちるぐらいは何度も経験しているので、布団でガーッと一発叫べば気分ぐらい元に戻す技は心得ているのだが、今回は経緯が経緯だっただけに油断しており、目を丸くした。

しばらくして、よくよく友人から経緯と原因を聞くと、担当者いわく「暗いから」とのことであった。

暗いから。

昏いから。

冥いから。

暗人(あんじん)だから。

そう、よくよく思い返せば、人間を「明人(めいじん)」と「暗人(あんじん)」を二種類に分けたとして、私は完全無欠の「暗人」だったのである。三十歳を過ぎてからだいぶマシになってきたと自覚したのだが、世間のグラデーションと照らし合わせた際、今なおもってはっきりと「暗人」なのである。

じゃあ、しょうがないか。だって「暗人」とは働きたくないものな。

客先に出ていくことの多い業務内容、と聞いていたので、暗人を大事な顧客のもとに派遣するわけにはいかないのである。「あ、もしもし。なんかおたくのJETさん、暗いんですけど」「すみません。暗人なもんで」「暗人なんかうちに寄越さないでくれる?」などといったやり取りが交わされるに違いなく、人様に迷惑をかける前に面接時点で食い止めてくれて良かったのである。

そうはいっても、暗人だって働かないと、勤労しないと食べていけない。サラリーマンも9年やってみたが、向いていないのではないかと言われた。サラリーマン以外の職業なんて一体何があっただろう。Jリーガー、パチプロ、銅線泥棒ぐらいしか思いつかず自分にやっていける気がしない。ともかく、何らかの生きる方法を模索中です。暗中模索。暗人だけに。ありがとうございました。

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