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ドラマ「ライオンのおやつ」を視聴して3
ドラマ「ライオンのおやつ」を視聴して1
ドラマ「ライオンのおやつ」を視聴して2
先週の日曜日、NHKプレミアムで放送されていた「ライオンのおやつ」というドラマが最終回を迎えた。
あんまりドラマなど見ない私だが、非常に色々なことを思い出させてくれた良いドラマだった。
最期は穏やかに天国に旅立った若き主人公、雫さん。思わず私も病室で一緒に看取ったような気持ちになった。
実際に病床にいらっしゃる患者さま、ご家族には見るのもつらいという場面もあると思う。しかし「旅立つ準備をしている方」を出来るだけ忠実にドラマ化しているなと私は感じた。
ドラマの中では、音楽や動物がそばで寄り添うことも場面として出てくる。今日はそんなお話を書いてみようと思う。
私が勤めていた病院(ホスピス)には、音楽療法やドッグセラピーが週に一度あった。
それは患者さまやご家族の楽しみであると同時に、私たちスタッフにも安らぎを与えてくれた。
ドッグセラピーに関しては、長くボランティアとしてドッグセラピーのスペシャリストが関わってくれていたため、本当にワンコたちはみんなの癒しだった。白いモフモフのワンコたち。いつもバギーにのせられてやってくる。
彼らはセラピー犬として病院では絶対に吠えないし、人を噛んだりもしない。人を癒す訓練をきちんと受けているプロフェッショナルのワンコたちだった。しかし旅立つ人のそばに寄り添うということは大変なことなので、ワンコたちにも引退があり、代々その役目を受け継いでいるそうだ。
私もワンコたちに癒やされていた一人。元々実家でモフモフの犬を飼っていたのと、彼らに触れるだけで、なんだかイライラや忙しさが和らぐ感じがした。
ある時ボランティアさんが、生後2ヶ月くらいの子犬を4匹バギーにのせてやってきたことがある。もうみんなで抱っこしたり撫でたり、メロメロになった。
ふと「もしお願いできるのならこの子達をある方のところに連れて行っていいですか?」と私が提案した。
ある患者さんに子犬を見せてあげたいと思ったのだ。
入院されてからお話はしてくれるけれど、あまり笑顔を見せることなく過ごされていたのが、私は少し気になっていた。
私とボランティアさんと4匹の子犬で病室を訪れ、一気にベッドの上に子犬たちを乗せてみたのである。
すると子犬たちは一斉にベッドの上を歩き回り、患者さんはびっくり仰天!しかし今まで見たこともないような笑顔で子犬たちから溢れる愛を受け取っていたようだった。触ったり抱っこしたりしてすごく喜んでくれた。それ以降、少しずつではあるが冗談を言ったり、笑ってくれたりする機会が増えたと感じた。
音楽療法士さんは病室に電子ピアノを運び、お部屋で演奏したりしてくれていた。ある部屋からは演歌、ある部屋からは歌謡曲、ホールからはクラシック・・・・そんな風に音でその方の人となりを感じることができた。時には一緒に歌の会に参加し歌った。歌や音楽は不思議だ。自然と心が通じ合う感覚を持てる。そして声を出すことで少しだけ元気を取り戻せる。ちなみに私は毎日歌を歌うことにしている。あまり話す機会もないので発声の練習になるし、自分が歌で元気になれるからだ。
私が「音楽」と聞いて一番思い出に残るエピソードがある。
ある患者さんのお部屋に牧師さんが訪問した時、部屋にはその方が好きだった音楽が静かにかかっていたそうだ。私の尊敬する先輩看護師に「あの曲がお部屋に入ったら聞こえてきました。誰がかけてくれたのかな?」と牧師さんが伝えたところ、
「私です。あの患者さまにとって今必要なのは、音楽と祈りだけですから」
という返答がサラッと返ってきて、すごく感動したと仰っていた。
音楽と祈り。
その感性にいつも私は感服する。ケアをする側としてはアレもやってあげたい、これもやってあげたいと思う。そしてそれがいつしか押付けのようになっていなかっただろうかと自分のケアを振り返ってみた。これから天国に旅立たれる方には音楽と祈りだけだという先輩の言葉は、その人にとって本当に必要なことは何かを思い出させてくれる。
ドラマの中で「よく生き切ったね」と雫さんが夢の中に出てきた亡き母に言われる場面がある。雫さんは「味わい深い人生だった」と振り返る。そんな風に自分の人生を振り返るまでのどれだけの葛藤を味わったことだろう。その言葉に涙が溢れた。
看取りの場所は現在、病院だけでなく在宅、または施設と幅が広がってきた。その背景にはコロナの影響や医療・介護制度の変革により、住み慣れた我が家で人生を全うするという選択をする方が増えてきたからではないだろうか。
しかしどの場所でも忘れてはならないのは「その人の人生を生き切る」ようにサポートしていくことだな、と感じる。どんな人でもそんな最期が迎えられたらいいのにな。
本当に心が温まる良いドラマに巡り会えた。原作はこれから読む予定だが、非常に楽しみにしている。
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