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亀と流儀

先日、目黒区のお祭りに出掛けました。矢庭に広がる屋台の連なりに御輿を見に来た事もあっさり忘れ、金魚の前にしゃがみ込みます。亀掬いなるものまであり、一瞬飼ってみようかなと思い、少年や売り子のお手本を観察。売り子は難なく掬うのに対し、少年らは寸分の余地もなく「ポイ」をダメにしている。そして、「掬えた亀、持って帰らない場合1000円で買い取ります。」との張り紙。高度な技術が要求されるであろうことが明白である以上財布の紐を緩める訳にはいかない。。手応えのない博打に手を出すより確実性をと気持ちを切り替え、そばで売っていた鮎の串打ちへと歩を進めました。一途に齧り付きます。頭の部分て脂の塊なんだねーと小さな発見を地味に盛り上がり、周りを見渡しました。

ふと薄暗い一帯がある事に気付き、吸い寄せられるようにそちらへ。裸電球がひ弱に感情のない顔で座り込むおばちゃんを照らしています。おばちゃんの手には長方形の小さくペラペラした板。もしやこれが俗にいう型抜きか!とやった事もないのに懐かしい気持ちになり、おばちゃんに100円を支払いました。簡易テーブルにケロリン椅子といった昭和感漂う雰囲気の中初挑戦。しかし、流儀を心得ていない者だけがするように、僕もやはりえいっ!と勢い良く画鋲を突き刺してしまった事は想像に容易いです。一瞬にして100円をドブに捨てるその隣で、慎重に削っている人達。自分の不甲斐無さに白けた瞬間でした。

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