2023/04/07 CASTLE/Re:BUILD
この間Diosというバンドのライブに行ってきた。告知後30分で予約に成功した奇跡の座席。ボックス席ラスト1つを独り占めすることができたのである。Twitterに齧り付いててよかった。
大阪の梅田駅というめちゃくちゃ栄えている場所にて電車を降り、Googleマップを頼りに会場へ向かう。ダンジョンの異名をとる梅田は地下に潜ると2度と出てこれなくなると分かっていたので、意地でも地上を歩いた。しかし道が車のために存在している街らしいので、横断歩道が無いこともしばしば。歩道橋も分かりやすい場所には存在しない。しっかり迷子になり、途中までイヤホンも付けて涼しい顔で歩いていたのに、最後は怖い顔をして爆速でビルの間を駆ける異常者だった。(余談だが梅田はグリコの看板のある場所ではない。あれは難波。) ライブ翌日にVocalのたなかも「梅田がラビリンスすぎる」というツイートをしていた。ただあの街は本当にダンジョンにしたら超面白いと思う。誰かゲーム化してくれないかな。
今日はこの話から始めようと思う。少し時間が経ってしまったが、それでも色褪せないほど濃密なひとときだった。
Bloom Mojito
会場の入り口付近には駅で見た人もいた。ドレスコードは青だったので、わかりやすく青い服を着ているグループは大方同じ目的であの迷宮を彷徨っていた。私も青いスーツに黒いズボンを穿き、パッチワークのアウターを羽織った。なんとなくDiosのライブにはスーツが合うかなと思い、それでもフォーマルになりすぎないよう、ズボンの方はゆったりとしたものをチョイス。周囲の人は私より断然オシャレな服を着ていたけど、見なかったことにした。
前述の通り、結構良い席を取れたので入場は早い方だった。チェックインを済ませて席まで案内される。想定外だったのはウェイターさんが忙しなく動き回っていたこと。「なんかすごくもてなされてない?」と思いつつ見やったテーブルにはメニューが置いてあり、やってきたウェイターさんに注文と会計のシステムを教わる。
以前行ったEveのライブ然り、ライブといえばフェスのようなものを想像していた私にとっては、食事をしたりお酒を飲んだりしながら観るライブというのは初めてだった。というかそんな贅沢なライブに来たという感覚はこの時まで無かった。スーツで来て良かった心から。風采の上がらぬ人間もとい妖怪も、スーツを着てれば幾分マシに見える……多分。
今日は物販もないし1円も使うまいと決めていたのに、流れるままにコラボドリンク「Bloom Mojito」を注文してしまった。1杯1400円(ノンアル1200円)と決して安くはないが、後から振り返っても後悔はしていない。今までに飲んだお酒、もしかすると飲み物の中で1番美味しかったかもしれない。部活終わりのアクエリよりも、小学生の時に飲んだヤクルトよりも、人の家で出てきたカルピスよりも、友達と会う口実だったタピオカよりも。タピオカは興味無くて飲んだことないけど。
新緑を思わせる綺麗な緑の通りミントが入ったカクテルで、香りも爽やか。5000円しか持っていかなかったのを心底悔やんだ。帰ってからモヒートの作り方調べるぐらいには最高のドリンクだった。最後の晩餐ドリンク編は絶対コレです。
CASTLE / Re:BUILD
持参した本を読んでいるうちに人も増えてきた。右斜め前の人が飲んでいるサクランボののったカクテルが可愛くて美味しそう。とか考えている間に照明が落ちた。
ササノマリイのしっとりしたピアノソロから始まった。当たり前といえば当たり前なんだけど、すぐそこを通って出てきて、すぐそこでピアノを弾いている。そしてIchika Nitoとたなかも登場した。こんなに近くで観れるのかと大興奮。しっとりしたピアノソロじゃなければ叫んでいたところだ。
1曲目は劇場。アルバムラストの曲を1番最初に持ってくるのってなかなかできることではないと思う。初手で「終わったら綺麗に消えよう」なんて言えるのはDiosだからこそだと思うし、そういうところを私は好きになった。なんだか歓迎されているという気持ちになれた。個人的に劇場好きなので嬉しかったというのもある。
未発表の知らない曲が挟まったこともあり、セットリストはほとんど覚えていない。なのでこれ以降は印象に残った曲を紹介していきたい。
まず外せないのはVirtual Castle。Diosには珍しいダンサンブルなナンバーで、たなかの言う人の醜さややるせなさ、頑なさを集めた薄暗い城が劇場に立ち上がる。
そしてBloom。先のモヒートはこの曲を冠している。アルバムが発表された時には1番聞いていた曲で、歌詞世界に魅了される。
個人的には天国を聴けたのがとても嬉しかった。サビの歌詞が最高すぎる。「世界で」のところの高音も生で聴いたからこそたなかの声の繊細さが感じられた。私も逃げ場を失った(と思って)頑張っている身なのでそれも刺さる点。
他にも逃避行や未発表の新曲「渦」、ほのぼのしたMC (Ichika Nitoが長尺で話している声を聴けたのがとても嬉しかったし、ササノマリイが癒しキャラなのが意外だった。) を挟んだ後のMisery、人気のナンバーダークルームも良かった。全編通して特にたなかの繊細かつ力強い歌声と、ベースとドラムに心臓をガッチリ掴まれたかのように釘付けにされた。
高音域もちゃんと出るけど、低音域がしっかり力強くて芯の太い音。そういうのが好きなんだと思う。女性ボーカルのアーティストをほとんど聞かない、聴くとしても声が低めなのもこれで説明がつく。
声でいうとササノマリイがハモリパートを担当して歌っているのを聴くこともできた。「自傷無色」のセルフカバーでしか聴いたことなかったけど、アルバムにササノマリイコーラスで収録しても良いんじゃないかと思うほど完成度が高かった。(上から物を言っている感じになっているけど、本当に「これが正規品なんじゃないかと思った」が正直な言葉だから許してほしい。)
そしてライブの最高ポインツはフライディ・チャイナタウンだ。本人Twitterに映像が上がっているので最初の10秒だけでも聴いてほしい。
曲そのものはかなり古い曲なのに、アレンジのなせる技なのか、最近の流行り曲なのかと思わされた。(実際TikTokで流行っているらしいが。) 個人的にはこれが最高点。円盤で出してほしいし、これが聴けるならどんな時もどこへでも何度だって足を運びたいと思う。これを聴いている時の私は、多分目をかっ開いて腕を(少し)大きく振っていたんじゃないかな。「じゃないかな」というのは曲に魅了されすぎてこの時ばかりは自分のことなんてまるで意識の上になかったから。これを書いているうちにもあの情景とそこで感じた激情が蘇ってくる。「ブチ上がる」というのはああいう体験のことを言うんだろう。何度でも聴きたい。切実に。
最後の曲は「裏切りについて」。アルバムには収録されておらず、もしかしたらやらないのかな?と思っていたところに「幸せになることをあまり躊躇わないでほしいという歌です。」というMCが入り、感嘆のため息が出た。
私はライブの2日前までこの曲を聴いたことが無かったが、初めて聴いた時から完全に虜にされた。
こんな歌詞を書けるのはDiosしかいないと思うと同時に、私も「過去の自分の悲観的な期待(=呪い)を裏切れば良い」と考えていたところがあるので、共鳴するところがあった。やはり私の孤独な心に1番寄り添ってくれる(と勝手に感じられる/信じられる)のはDiosなんだなと思う。受験期からずっと、お世話になりっぱなしで、この先も長い間そうなっていくことだろう。
「幸せになろう私も。悲観的過ぎた過去の私を裏切ってしまおう。未来に是非とも愛されてやろう。」そう思えた。
Eveは私の中で「大好きな世界」で具体的には「色彩も表情も豊か。でも陰影も濃く在る世界」。言わばずっと追いかけている漫画のような風にして私の日常に存在している。
一方でDiosは「心に深く響く言葉」「ただただ心を優しく包むだけ」だ。大仰な言い方をすれば聖典と言ってもいい。私が辛い時にも力を貰える。与えてくれるのでは無く貰えるのだ。彼らの言葉や音楽はただそこにあるだけで、それをこちらは勝手に自分の心にインフラとして接続する。そうして孤独な心をすこしだけ癒すことができる。そういう存在なのだ。
もちろん日常に深く根を下ろしているものではあるのだけど、私の人生の悲哀に満ちた部分とか閉じていく景色とか、そういう暗澹たる側面にこそ、Diosはよく馴染んでいるしそこにこそ必要なんだと自覚した。そしてより一層好きになった。
Diosのメンバー3人はもちろん、ベースのオオツカマナミさん、ドラムのさのみきひとさん、そして会場で私やお客さんにドリンクを給仕してくださったウェイターさん、当日一緒に盛り上がったファンの方々、あのライブに関わった全ての人にはちゃめちゃに大きな敬意と感謝を伝えたい。決して忘れない、日常の中の最高の1ページになりました!
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