風が流れた。

連日の最高気温は沖縄県で31℃。毎朝ニュースで連日の夏の暑さの報道が続く。部屋では扇風機が忙しく、首を左右に振り続けていた。瓶製の1リットルの炭酸飲料はなかなか蓋が開かなかった。開けられた時のパキパキという小気味の良い音が好きだった。おつかいで空瓶を酒屋さんに届けて、1本5円の臨時収入。宿題はなかなか手がつかなかった。良く理由は分からなかったけど、ラジオ体操は行く様に言われた。

眠い目を擦りながら、出席の判子を貰い、学区の端に住む我が家に帰った。

ダイヤルのチャンネルが付いているテレビをガチャガチャ回す。テレビの画面を叩くのが好きだった。軽いカンカンという音が小気味良かった。じっと画面を眺める。小さな赤と青と緑がところ狭しと並んでいた。それが堪らなく不思議で眺めていた。

ご飯食べたら宿題ね。母が言う。

えー!?なんて言える訳もなく、返事の変わりにご飯を口へとかきこんだ。

分からなかった漢字を見つけ、辞書を開いて探す。まずは部首、画数、様々な手掛かりで見付け出す。ノートへ書き込む。終わる頃には鉛筆を持つ手が痛かった。

一息つこうと漫画雑誌を開いた。かわいい女の子がニッコリとしていた。少年が真剣な顔をして戦っていた。吹き出し、集中線、迫力のあるシーンを目で追った。心がワクワクと踊っていた。

連日の最高気温は34℃前後。毎朝ニュースでは熱中症の注意喚起が成されていた。部屋ではエアコンが静かに冷風を送り、外には暖気を送り続けている。ベランダは連日とても暑かった。飲み干したジュースはリサイクルの為に分別廃棄。宿題はなかなか手がつかなかった。ラジオ体操は特に行かなかった。

行かなくていいのかな。布団から出て、朝日を眺めている母に聞いた。別に大丈夫。分かっていたけどそれがいつもの母の答えだった。

リモコンのオンボタンを押す。陸上トラックの上をランナーが必死に走っていた。眺めていると眩しくて後ろに下がって座る。カランカランカラン。アナウンサーの実況に熱が帯びる。フィニッシュ。どうやらレースが終わった。

ご飯食べたら宿題ね。母が言う。

うぇー!?やだー!!ご飯もそこそこに文句が飛ぶ。細やかな抵抗。やらなきゃいけないのは分かっているから。

パソコンを開いて、学習サイトを開く。指先でなぞり、タッチ。課題クリア。終わる頃には擦れた指先が痛かった。

近くに置いてあったスマホを手に取り、お気に入りのアプリを開いた。かわいい男の子や女の子がコケティッシュな表情をし、時にコミカルに踊ったりしている。ここの世界はいつでも楽しそうだ。

歩いているとボーッとしてくる。傍らの自販機でしばしの涼を買い求めた。

アブラゼミが鳴き、入道雲が白かった空は急速に暗くなりで存在を示してきた。実ったベランダのミニトマトは赤く、枝が揺れる。

雨が降るな。

ゴロゴロと遠雷が聞こえる。ゲリラ豪雨。いつから名付けられてたっけ。雨上がり、見上げると2重の虹が掛かっていた。

#カクカタチ


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