不正入手した東北電力のポイントを電子マネーに交換して加熱式たばこのカートリッジを購入で逮捕

 不正に入手された東北電力の会員ポイントを電子マネーに交換した後、加熱式たばこのカートリッジを購入した男女2名が逮捕されました。

 この男女は指示役の男から連絡を受け、電子マネーで加熱式たばこのカートリッジを購入するいわゆる「買い子」役だと思われます。

 この男女2名は、組織犯罪処罰法違反の被疑事件として逮捕されていますが、「犯罪収益処分の仮装の罪」で逮捕されています。

本件の犯罪行為

 東北電力の会員制Webサービス「よりそうeねっと」に不正アクセスを行い、44人分のポイントを、イオンが提供する「WAONポイント」に交換し、その後、同社が提供する電子マネー「WAON」にチャージしました。
 今回の男女2名はこのチャージされたWAONを使って加熱式たばこのカートリッジを購入したものと思われます。

組織犯罪処罰法10条

 組織犯罪処罰法を見てみましょう。条文は10条です。

10条 犯罪収益等(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律第3条第1項若しくは第2項前段、第4条第1項又は第5条第1項の罪の未遂罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。以下この項において同じ。)により提供しようとした財産を除く。以下この項及び次条において同じ。)の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者は、5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。犯罪収益(同法第3条第1項若しくは第2項前段、第4条第1項又は第5条第1項の罪の未遂罪の犯罪行為により提供しようとした財産を除く。)の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
3 第1項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 10条の「犯罪収益等(略)の取得若しくは処分につき事実を仮装し(略)た者」に該当するとのことです。

組織犯罪処罰法における犯罪収益等

 「犯罪収益等」とは何かについて、2条2項1号イにあります。

第2条第2項 この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
1号 財産上の不正な利益を得る目的で犯した次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
イ 死刑又は無期若しくは長期4年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪(ロに掲げる罪及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成3年法律第94号。以下「麻薬特例法」という。)第2条第2項各号に掲げる罪を除く。)

 本件は、不正アクセスを行い、ポイントを窃取しています。これは、刑法246条の2の電子計算機使用詐欺罪に該当します。

第246条の2 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。

 そうすると、10年以下の懲役は、「長期4年以上の懲役」の刑が定められている罪に該当し、「当該犯罪行為により得た財産」に該当します。

組織犯罪処罰法10条の「仮装した」

 組織犯罪処罰法10条の「犯罪収益等(略)の取得若しくは処分」のうち、今回は「処分」に該当すると思われますが、電子計算機使用詐欺罪によって得られたWAONポイントをWAONにチャージした電子マネーを使って、男女2名が加熱式たばこのカートリッジを購入したのは、これらの処分をしようとしているといえます。そして、このカートリッジを売却して金銭に変えようとしたと考えられますので、取得した犯罪収益等をカートリッジを購入したように処分して金銭に変えようとしていたので、これはあたかも犯罪収益等を処分した事実を仮装して、金銭に変えようとしていたと思われますので、「処分につき事実を仮装し(略)た者」に該当すると考えられます。

組織犯罪処罰法10条違反の刑罰

 この罪を犯した者は、「5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」ことになります。

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