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偶然の出会いから18年---初めてサカナクションのワンマンライブを見るために福岡まで行った話

( ※ 現在ライブツアー中なのでネタバレにならないように気を付けてはいますが、万全を期したい方は読まないほうがいいかもしれません)

サカナクションとの遭遇

いままでサカナクションのライブはフェスで2回見たことがありました。

最初に見たのはRising Sun Rock Festival(以下RSRと言います) 2006 in EZOにオーディション枠で彼らが出演したときのライブ。
次に見たのはRSR 2018 in EZOの一番大きなステージでのライブ。

2006年8月、RSR1日目の深夜。「GREEN OASIS」という、今はもう無くなってしまったやや小ぶりなステージで夜中の1時くらいからのライブでした。
友人の友人が「札幌のおもしろいバンドだから見た方がいいよ」とサカナクションのことを偶然教えてくれたのでじゃあ見てみようかと。教えてくれた当人はその時間テントで寝てました(笑)。結果としてこれが私にとってサカナクションとの初めての遭遇になりました。

今もRSRで続いている「RISING STAR」という若手オーディション枠でのライブが深夜の時間帯にあり、出演者が3組。サカナクションは最後の3組目として登場。後ろのほうで地べたに座って見ました。彼らの見た目や出で立ちは、みんなヒョロっとしてて大学の軽音サークルみたいな印象。5曲くらいやったかな。「白波トップウォーター」をやっていたような気がします。
技術的にどうだったとかは正直覚えていないですが、若いのにちゃんと曲にオリジナリティがあるなと感じたことはうっすら覚えてます。

それから12年。
出世魚のごとく大きな存在になってRSRに帰ってきた彼らが出演するのは当然のようにメインステージです。夜のSUN STAGEに5人は堂々と立ち、演出かと思うような雷光をバックに10曲以上のライブで大雨のスタンディングゾーンを沸かせる圧巻のパフォーマンスを見せてくれました。

博多どんたく真っただ中の福岡へ

それからさらに6年。
千葉県に住む私はなぜか5月の連休中の福岡にいました。

もともとそれほど熱心なファンではなかったはずなのに、どういうわけか「今回のライブツアーは絶対見るぞ」と考えていました。いま思い返してもなぜそう考えていたのかはよくわかりません。

我が家から自転車でも行ける幕張メッセでのライブに行こうと、毎週チケットの抽選申し込みをし、毎週外れて結局買えないままソールドアウト。そんなことをしているうちに他の会場のチケットも全部売り切れました。あーそんなもんか無理か残念、と思っていたらなぜか福岡会場だけまだチケットが買える。

福岡行くか。

連休中の飛行機代、ホテル代。
迷ってる間にライブのチケットよりも飛行機とホテルがリアルタイムで埋まっていきます。
しかもなぜかホテル代がやたらと高い。これは後から知ったんですが、連休であるのに加えてちょうど同じ日程で博多どんたく祭りがあるらしく、ホテルが高いのもライブのチケットが残っていたのもその影響のようでした。
ただ、ホテルの空きがないわけではなく、高めの料金さえ払えば泊まれる。

うおおお!これがどんたく・・!なんやこのピンクのやつ誰やおまえ

ライブのチケット、往復の飛行機、ホテル。
気づいたら全部押さえていました。

SAKANAQUARIUM 2024 "turn" マリンメッセ福岡A館 5/3 ライブの感想

前置きが長くなってしまいました。ライブの感想です。セットリストにふれずに感想を書くのはむずかしいですね。でも書いてみます。

サカナクションのライブというと「音の良さ」「音響システム」「スピーカー」といったものが真っ先に話題に上がります。それに加えて「光がすごい」「映像がすごい」「演出がすごい」という言及も多いです。

今回初めてワンマンライブに参加してみて、それよりも何よりも語るべきはまず曲の良さだと思いました。もはやそれはわざわざ言うまでもないことなのかもしれないけど、よくできた素晴らしい曲ばかりだと改めて思います。
「復活祭」というイメージで、サカナクション欲張りセットみたいなセットリストだったのでとにかく楽しいし、あれだけのお客さんを踊らせる曲を連発できるんだからすごい。アリーナのみんなはもちろん、スタンドのみんなもめちゃくちゃ踊ってました。巨大なクラブのフロアのよう。
(踊ってるお客さんの数÷全お客さんの数)×100
で「踊り率」を計算したらたぶん100%近くいってたと思います。
曲と曲の繋ぎ方もすごい工夫されてて見事でした。本編終盤、あの代表曲が始まったときの、会場内の温度が急に1.5℃くらい上がった瞬間の空気が忘れられません。最初から最後までずっと楽しかったな。

ライブ全体を通して一番印象に残ったのはボーカリスト山口一郎の歌唱力でした。すんごい声が出てるし伸びるし裏声もしっかり出てる。低い音域も高い音域も声量に差がなく、震えも少なく安定して出る。クセの無いストレートな歌唱法だ。すごい。
前の晩に、宿泊してるホテルからのYouTube雑談配信で「もろみ酢を入れたらチタンの容器は錆びるのか」という話をしてたのと同じ人とは思えないほどかっこよかったです。

めちゃくちゃ凝った映像がばんばん使われていたのも楽しくて良かったです。特に最初のほうで使われた、復活を高らかに宣言する映像が印象的でかっこよかった。電気グルーヴとかCorneliusとかTESTSETとかもそうですけど、映像に力を入れている人達のライブは、演奏と映像の両方が楽しめることもあり、満足度が高いです。
すごい数のレーザーも飛びました。後ろのほうの席だったのでレーザーが飛び交う全体像が良く見えて、すごくてすごかった。
ラストの曲の後ろで流れるエンドロールの映像。初めて見たけどあれとてもいいアイディアだと思いました。

そしてやはり音響ですね。
初めてサカナクションのアリーナライブでの音響システムを体験しました。
クソデカスピーカーシステムがステージのLRにあって、低音域用のスピーカーがあって、さらにはスタンドの近くの天井にもスピーカーをたくさん吊っててすごい。会場によってはディレイ対策の中間スピーカーも置くらしい。

音の指向性、音の減衰、音の到達速度、音の反射・吸収等々、PAチームが相当研究しているのだと思います。確かに後ろの方でもきれいに大きくクリアに、しかも遅延なく聞こえました。
なるほど山口一郎さんが自信満々に語っていた音響システムはこういうことかと感心したし、とにかく会場中に等しく音を届けるんだという執念を感じます。新しいテクノロジーと優秀なエンジニアとデジタルの力で、お金さえかければここまでできるんだと見せつけてくれました。

この音響システムのおかげで、音に関してはどこにいてもほぼ差がない状況を作り出せるので、チケットの価格差をステージからの距離の違いだけにしてしまう画期的な手法だと思います。客としてはすごくありがたいけど、これってやる方にとっては手間と費用ばかりかかってメリットが無いですね・・ライブの収益性を落としてでも音を届けることにこだわるなんて普通はなかなかできないことです。

山下達郎さんが2000人くらいの規模のホールでしかやらないのも、大瀧詠一さんがヘッドフォンコンサートという試みに挑んだのも、音の質に徹底的に拘るが故の結論だと思うし、もし大瀧さんが生きていたらアリーナでここまでの音響を組めることを称賛してくれたかもしれないななんて思いました。
ミュージシャンが売ってるものは音なので、音の質にこだわる音楽家は信用できます。大瀧さんと山口一郎さんの対談なんて聞いてみたかったな。

アンコール有りでした。本編ではほぼMC無しでアンコールのときだけ少し話をしていました。その話も良かったな。特に「せっかく同じ時代に生まれてきたんだから」っていうお話。

結論としては「本気のサカナクションはやばい」という一言に尽きます。

ライブ以外のこと

ライブの内容以外で会場に着いてから感じたのは、とにかくあらゆる面で行き届いているなということで、LINEを利用したグッズ販売の整理券やフォトスポット整理券のシステムがあったり、親子席や託児所があったり、子供用イヤーマフのレンタルがあったり、クロークがあったりと、ストレスをなるべく少なく、そしていろんな人に来てもらいたいという考えが至るところに見えました。普段1万人クラスのアリーナコンサートへ行く機会がないのでそういった仕組み等があるのを知らなかっただけかもしれないですが、驚くことが多かったです。

グッズ売り場は整理券制で快適

そういえばチケットの売り方も車椅子の人、親子の人、海外の人、みたいにネットでの販売の入口が最初からちゃんと分かれててわかりやすくていいなと思いました。

あとツアーのグッズがいいですね。デザインが洒落てて種類も多くて、そこまで高価でないというのもありがたいです。しかもTシャツとかのグッズが入ってる袋が普通のビニール袋じゃなくてジップロックみたいなリユースできそうないい袋だし「Sakanaction」とロゴの入ったメッシュのエコバッグみたいなやつもくれるしすごく気が利いてます。整理券方式で一度に売り場に入ることができる人数を絞っていて、わりとゆっくり見ることができたのも良かったです。ゆっくり見ていたせいでうっかりいろいろ買ってしまいました(笑)。
かなりの数を用意してくれたのか、終演後でもTシャツ等の人気アイテムを除いて、まだ買えるものがけっこうありました。

ライブの二日後、山口一郎さんの鬱病との苦闘から復活までを追ったドキュメンタリーを見ました。山口一郎という稀有な才能が潰れずに復活できたことは本当に良かったと思います。みんなの前に戻ってきてくれてありがとう。そしてすごいライブを見せてくれてありがとう。「あのときのライブ良かったな」と、この思い出を糧にまた何年か元気に生きられそうです。同じ北海道出身の人間として誇らしいです。
私は今回のライブで新しくサカナクションのファンになりました。

ただ復活しただけでなく「変わらないまま変わっていく」「新しいサカナクションがこれから始まります!」と高らかに宣言したサカナクション山口一郎さん。
あの18年前の偶然の出会いからは想像もできないほどのスケールのバンドになったサカナクションが、誰も聞いたことのない新しい音楽をまた生み出してくれるのを待っています。
そしてこのツアーが無事に完走できることを祈っています。

うっかり買ってしまったサカナクションなわとび

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