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「ロランバルトにとって小説とは」!

 ロラン・バルト(Roland Barthes)にとって、小説は「実在するものを模倣する手段ではなく、現実を作り出す一つの方法」として捉えられています。
 彼の理論において、小説は読者にとっての「テクスト」であり、それは単に物語を伝えるだけのものではなく、読者自身が意味を生み出し解釈する活動的なプロセスを含んでいます。

 バルトは「作家の死」という概念を提唱しました。
 これは、作品が公になることで作家の意図が重要でなくなり、読者が自らの経験や知識を用いてテクストから意味を引き出すという考え方です。
 したがって、小説は読者によって無限の解釈が可能な「書かれたテクスト」として存在し、それぞれの読者が独自の「読み」を生み出すことで、テクストは生き続けるとされています。

 バルトはまた、「プレジャー」と「ブリッス」という二つの読書体験を区別しました。
 「プレジャー」は伝統的な物語の楽しさや快適さを指し、一方で「ブリッス」は読者が言語の限界を超えて新たな意味を見出す深い喜びを指します。   小説はこのようにして、単なる娯楽を超えた深い精神的な体験を提供することができるとバルトは考えていました。

 バルトの小説観は、文学作品とその読者との関係性、テクストの多義性、そして読者の主体性を重視するものであり、現代文学批評において重要な位置を占めています。
 彼の理論は、小説だけでなくあらゆる文学テクストに対する我々の理解を深め、解釈の多様性を認めることで文学の豊かさを広げるきっかけを提供しています。

ロランバルトの水彩画

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