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先月公開された"Spotify Platform Rules"を日本語で読み解いてみる

Spotifyの米国ポッドキャストにおける炎上騒動の発端は2021年12月。2022年1月には270名の医療従事者が公開書簡を発表し(原文はこちらを参照)、同月26日にはトップアーティストのニール・ヤングがSpotifyから撤退、31日には渦中のポッドキャストのホストであるジョー・ローガンがInstagramで声明を出したものの、株価へ大きく影響(-約20億ドル)したことで国内でも各大手メディアが取り上げる話題となりました。

(この件の詳細は例えば以下をご覧ください、この記事では割愛します)

さて、そこで世界の代表的な上場企業にもかかわらず素晴らしく迅速なスピードで公開されたのが、1月31日に制定された "Spotify Platform Rules" 、クリエイターに向けたコンテンツの方針ガイドラインです。

日本語版は利用規約については存在していますが、ガイドラインはまだ(作るとしたら言語だけでなく、別途ローカライズする必要あるかもですね)だったので、この記事では簡易的に和訳してざっくりどのようなガイドラインが制定されたのかを以下、読み解いてみます。

※下記の日本語訳は、Spotifyがどのような文脈のガイドラインを制定したのかを把握することを目的としたものであり、意訳が含まれるので、Spotifyに配信する上での正確な情報はこちらの原文を必ずご覧ください。

1. 危険なコンテンツ

■推奨:人々が創造し、表現し、耳を傾け、共有し、学び、刺激を受けること
■禁止:暴力の助長、憎悪の扇動、嫌がらせ、深刻な身体的危害や死の危険にさらす行動

■「深刻な身体的危害」とは?
・自殺と自傷行為を奨励、促進、称賛すること
・特定の標的または特定のグループへの身体に危害を与えること
・暴力的な過激主義組織を促進、支援

■「個人または特定可能なグループ」とは?
・人種、宗教、性同一性または表現、性別、民族性、国籍、性的指向、兵役経験の有無、年齢、障害の有無
・上記に対して暴力を称賛、支援、呼びかけること
・上記の特性に基づく個人orグループに関する非人間的な発言、憎悪を表す画像、シンボルを宣伝or美化すること

■「危険な欺瞞的な医療情報を助長するコンテンツまたは虚偽」とは?
・エイズ、COVID-19、癌、またはその他の深刻な生命を脅かす病気に対して、デマであるまたは本物ではないと主張する
・さまざまな病気や病気を治すために漂白剤製品の消費を奨励する
・地元の保健当局によって承認されたワクチンが、死を引き起こすように設計されていることを促進または示唆する
・COVID-19に対する免疫を構築するために、意図的にCOVID-19に感染するように人々を奨励する(例:「コロナウイルスパーティー」の宣伝または主催)

■「規制対象または違法な商品の販売を違法に宣伝するコンテンツ」とは?
・違法な銃器または銃器部品の販売
・違法薬物の販売
・絶滅危惧種または絶滅危惧種に由来する製品の販売

■「児童の性的虐待または搾取を助長、勧誘、または促進」とは?
・性行為に関する未成年の画像やヌード、未成年の性的な描写
・子供に対する性的虐待行為を促進する
・未成年者に対して成人の性的魅力を奨励or促進する
チャイルドグルーミング(大人が子どもに優しくしたりいい顔をして親しくなり信頼を得て手懐けて、性的な行為に及ぶ)を促進or正当化したりする

筆者補足:AppleやGoogleも、未成年へのポルノは非常に厳しく取り締まっています。例えば国内でも、DeNA社の今月の決算説明会にあったとおり、IRIAMがAppStoreでの提供を停止されたことも一例です。最新のIRIAMのガイドラインを見ると「ランドセル」や「哺乳瓶」などの小児である描写画像も削除対象とあり、toCアプリは取り締まりを保守的にしていく流れが起きています。

2. 欺瞞的なコンテンツ

次のような、他人を欺く悪意あることをしないでください。
(以下は例であり、これらだけに限定されません)

■欺くコンテンツ
・別の作成者と同じ名前、画像、説明を使うこと
・誤解を招く方法で他の人、ブランド、組織を装うこと
・元のメディアの意味やコンテキストを変えた状態で編集して真実であるとすること
・誰かが犯罪を犯したことを誤って示唆すること
・人工的に作ったにもかかわらず自然であると欺くこと

■選挙関連の操作/妨害系コンテンツ
・参加を思いとどまらせたり妨げたりする可能性のある、市民の選挙手順の不実表示
・有権者の選挙への参加を脅迫または抑制するために宣伝された、誤解を招くコンテンツ

■コミュニティを悪意もって利用するコンテンツ
・コンピューター、ネットワーク、システム、またはその他のテクノロジーへの不正アクセスや、妨害しようとするマルウェア、またはその実装に関する指示を投稿、共有、または提供すること
・機密情報を欺くように勧誘または収集するフィッシングなど
・ギャンブル、詐欺、ねずみ講などの投資や金融詐欺を助長したり、(偽りで)他人に金銭を手放すことを奨励したりすること

3. センシティブなコンテンツ

次のような、過度に暴力的なコンテンツを投稿したり、性的に露骨なコンテンツを投稿したりしないでください。 (以下は例であり、これらだけに限定されません)

■ 暴力、流血、またはその他の衝撃的な画像
・ひどく切断または切断された体
・動物虐待や拷問を助長する

■性的に露骨な内容を含むコンテンツ
・性的満足を目的として提示された性器、ヌード、視覚的描写
・レイプ、近親相姦、または獣姦に関連する性的テーマを擁護または称賛する配信

筆者追記:AppleやGoogleと比べると少なく、緩和されている印象です。そういえばRadiotalkでは、服と体が一体化したイラスト(胸や性器は描かれていない)のアイコンですら、TOPに表示されたことでGoogle Playから配信停止処置を受けたことがありました。トークはまだしも、音楽となると際どい画像のジャケットもアートとして少なくないはずなので、アーティストサイドでセンシティブ判定をチェックしたりするのかも?(Twitterは画像ごとに本人がセンシティブ判定をONにできるようになりましたね)

4. 違法なコンテンツ

法は法です。 あなたが何者であろうと、適用される法律や規制を遵守するのはあなたの責任です。  (以下は例であり、これらだけに限定されません)

■輸出規制に準拠していないコンテンツ
■あらゆる種類の違法行為を助長または犯すことを目的としたコンテンツ
■他者の知的財産権を侵害するコンテンツ(例)

・必要な権利許諾を得てしていないコンテンツ
・サードパーティの著作権または商標を侵害するコンテンツ

5. 違反者はどうなる?

Spotifyはコンテンツの文脈を念頭に置き、真剣に審議します。 ルールに違反すると、違反コンテンツがSpotifyから削除される可能性があります。 違反が繰り返されたり、悪質な違反があったりすると、アカウントが停止または終了される可能性があります。

6. その他 / 問題を報告するには? 

・これらのルールは、オープンで安全なプラットフォームであり続けるために活用されます。 今後も必要に応じて評価・更新を行いますので、頻繁にご確認ください。 
・問題を報告するには、ここから報告してください。
通報フォーム 

筆者追記:通報フォームの内容を調べるために、(実際に送信しない範囲で)試してみたところ、通報者のメールアドレス送信&認証コードによる本人確認が必要、となっていました。例えば下記YouTubeの権利侵害報告フォームを見るとわかりますが、通報が攻撃に使われる(例:自身が著作権を侵害されたわけではないのに、権利者になりすまし侵害されたと偽って報告することでアカウントを削除させようとする)ことも重要な問題だと捉えられていることが確認できます。

(参考:「権利侵害の報告フォーム」YouTubeの場合)

タイムリーな記事ですが、国内のTwitterでも虚偽の通報攻撃に対して警察が動くようになってきたようですね。

------------日本語訳は以上-------------

Spotify初版のガイドラインは第1項目にあるウイルス関連の厚さが象徴的となりました。

メディアではなくプラットフォームである以上、コンテンツの権利者&責任者は会社ではなくユーザー(クリエイター)としていることが多く、プラットフォームはすべての事象に規約として「OK or NG」の白黒をはっきりさせることは難しいものです。だからこそプラットフォームの指針は「白黒」だけではなく「ベクトル」を定めることが重要になり、規約以外にガイドラインが存在します。つまり「こっちを善しとし、こっちを悪しとする方向性」といった思想の軸です。

たとえばRadiotalkのコミュニティ・ガイドラインでは「批判よりも『好き』『楽しい』『おもしろい』を広める活動を推奨する」と定めています。これは批判がNG(削除対象)、という意味には決してなりません。ただし、Twitterやはてな等とは異なる世界となる、(どちらが良い悪いではなくて)独自の軸です。

ガイドラインは指針であり、重要なのはその更新性だと考えています。有事の際や新しいユーザー動向、トレンドに追いつかせることです。軸さえ共通していれば、中身はプラットフォーム側は恐れず積極的に更新させていく姿勢が重要になりそうです。


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