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目の前の邪魔者を排する話

 昨日、皿洗いをしました。
 このときは洗い物がちょっと溜まっていて、流しが埋まって洗うためのスペースがない状態でした。皿や器が積み重なり、一番上には大きなやかんがあって、コンロの方にも洗い物があるというような状態です。
 しかし私はそれなりに皿洗いスキルを磨いてきたので、こんなもので怯むことはありません。まず一番上のやかんを洗ってタオルで拭いて片づければ、もう洗い場は作業スペースが確保されています。

 普段は、洗い物をするときには小物から先に洗います。それは洗ったものを重ねて伏せておく関係で、小物を下に置いたほうが安定するからです。ただそれも状況によるので、洗い場のスペースが足りないときは、まず大物を片付けてスペースを確保するのです。
 もっと状況がひどいときには、洗い場を埋めている器などを洗わずにコンロの方へ避けてしまって、作業スペースを確保するということもします。大切なのはまず洗い場のスペースを確保することなので、それで良いのです。
 作業スペースが無いと洗い物をするのが大変だなーと思いますが、まず何らかの方法でスペースをつぶしている邪魔者を排することができれば、物事はどんどん改善していくのです。

 ITエンジニアとして運用業務に携わっていたとき、とある現場のリーダーがとても優秀な方でした。
 それまで作業量の多さにメンバーが疲弊してオペミスが続くような状況だったところに着任し、自動化することで作業量とオペミスの低減をしようと考えたそうです。そこはわりと普通の発想だとは思うのですが、そのためにまずやったことが「人員を増やしてメンバーの時間を確保する」だったそうです。
 人員を増やせば当然コストが高くなり売り上げが落ちる(もしかしたら赤字かも)わけですが、それでもまずは今現在メンバーを苦しめている「作業量による疲弊」という邪魔者を取り除く必要があったわけです。
 そうして現場は平常業務と並行して業務を自動化するツール開発を行うことができるようになり、それが現場の文化として定着していきました。その後、作業量が減ったことで新たに請け負う業務を増やすこともでき、増えた業務をメンバーが次々と自動化していくというサイクルが生まれました。増えた業務の分だけ運用請負の会社の売り上げ・収益が上がったようです。

 Twitterなどで、乳幼児の子育てをしている母親が協力的ではないパートナーに対してブチ切れている言葉をよく目にします。日本は子育てに対する意識の低い男性も多く、そこへの怒りはもっともなのですが、問題解決のために私は意識改革よりももっと具体的な実行すべきことがあると思います。
 1つは、男女両方の育児休暇を取得することです。もちろんそのためには制度として認めさせることが必要なわけですが……。日本の労働環境は劣悪なので、およそ仕事しながら家庭のことなんてできません。料理が好きな私も会社勤めだと外食だらけでした。まず仕事という大きな邪魔者を取り除かなければ話が始まらないのです。
 もう1つは、ベビーシッターを利用することです。私は母親が子育てのすべての責任を負う存在だとは考えませんし、子どもをシッターに預けて母親が仕事をするのも欧米ではごく普通のことと聞きます。子どもの世話が負担になっているのだから、その負担を軽くするのはごく自然な改善策だと思われます。家庭によっては祖父母が役割を担ってくれることもありますが、ベビーシッターがもっと日本で利用しやすくなると良いなぁと思っています。
 経済的な問題に目をつぶって書いていますが、仕事や育児の過剰なタスクから解放され負担が軽くなって、そこで初めて子どもをどう育てていくか、子どもとどう向き合っていくかを考えられるのではないでしょうか。

 勤労世帯が直面する問題の多くは、実際のところ仕事を辞めたらほとんどが解決するんだろうな、というのをずっと思っています。鬱でも腰痛でも肥満でも、です。
 お金を稼がないと生きていけない世の中ではありますが、お金を稼ぎながらお金より大事なものを犠牲にしていることも多いような気がします。
 何か自分の状況がやばいなと感じたときは、目の前の一番の邪魔者を見つけて排除することが状況改善の第一歩になるかもしれません。


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