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航空業界の業績と今後について(ANA編)

今日は趣向を変えて、コロナの影響をモロに受けている航空会社について書いてみたいと思います。

1.Japan Timesの記事

早速ですが、Japan Timesで取り上げられていた記事から抜粋です(サマってそれっぽく和訳しています)。

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「日本を代表する2つの航空会社は、新型コロナウイルスの第二波の影響により需要が低迷しているため、来月の国内便を大幅に削減します。
JALは9月中、国内線を8,223便、つまり32%削減する予定であり、座席予約数は前年比で約30%にとどまっています。また、8月の後半に国内線で約30パーセントの削減を計画しています。
全日本空輸は8月に25%削減した後、来月国内線の便数を10,445(45%)削減すると発表しました。9月のピーク需要である9月22日までの4日間の週末にかかるフライトでも、予約が50%以上減少しているようです。」
※ JAL and ANA to make big domestic flight cuts as pandemic hits demand

2.ANAのIR資料からの分析

次に、ANAの決算短信から、ANAがどのくらいの固定費を抱えているかざっくりと計算します。
こちらのHPからデータを取れます。

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見えづらいので拡大しました。前年同期比で売上が約75%減少しています(500,508→121,608)。2019年と2020年の第1四半期の売上と原価を使ってざっくりと固定費率を計算したいと思います。
2019年:売上高500,508×変動費率A+固定費F=399,226
2020年:売上高121,608×変動費率A+固定費F=235,519
∴A≒43.2%、F=182,977 となります。

ここに、販管費で計上されている従業員給与及び賞与(本社人件費ですかね。。。)を加算します。2019年は8,618、2020年は7,055ですので、今後合理化が進むと仮定して2020年の7,055を使用すると、固定費は合計で約190,032百万円となります。約1,900億円です。これが1四半期分、すなわち3ヶ月分なので3で割ると、約633億円/月の固定費になります。これを1-変動比率で割り戻して損益分岐点を計算すると1,114億円となります。なので、月に1,114億円のキャッシュインが見込めるようになると、自前の営業キャッシュで回復に向かえることになります。四半期ベースでは単純に3ヶ月分の3,342億円が必要になります(※損益分岐点は通常PLの固定費と限界利益率から計算しますが、必要なキャッシュを計算するためにキャッシュフローに適用しています)。
一方で、以下の通り銀行から5,350億円の資金調達を行っています。

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では、手元の現金の状況はどうでしょうか。

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現預金は516,916あります。また、短期で回収されるであろう未収金が64,055あります。合計で580,971です。
では、負債サイドはどうでしょうか。

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未払金と1年内の短期借入や社債の合計が318,283です。
短期で決済に充当できる資産サイドの金額が580,971、一方で短期で決済しなければならない負債サイドの金額が318,283です。かなり単純化して考えるとこの差額である262,688、すなわち2,626億円が余剰のキャッシュになります。

では、今の状況が数ヶ月続くと仮定した場合のキャッシュアウトがどのくらいになるか見積もってみます。2020年第1四半期の営業損失が▲159,065であり、そのうち非資金損益項目と考えられる貸倒引当金繰入、賞与引当金繰入、退職給付費用、減価償却費の合計金額が9,295です。非資金損益項目を足し戻すと149,770となります。この1四半期分のキャッシュアウトを3ヶ月で割ると49,923、すなわち約500億円/月のキャッシュアウトです。

2,626億円を単純に月あたりのキャッシュアウトの金額で割ると、5.25ヶ月です。つまり、今の売上の状態が続き、かつ新たな資金調達が出来なければ、約5ヶ月~6ヶ月後にキャッシュがなくなってしまいます

3.分析からわかること

ANAの四半期報告書からもわかるように、当四半期で借り入れている5,350億円以外にも新たに3,500億円のコミットメントライン契約(融資枠の確保)を締結しているようです。これを加味すると、3,500億円は上記を前提にしても7ヶ月はキャッシュが持つという事になります。
このように考えると少なくとも今後12ヶ月(5+7ヶ月)はキャッシュの深刻な問題は生じないものと思われます。そして、今後1年間コロナの最悪期、およびその影響を受けた経済の最悪期が継続するかというと、そこまでは続かないのではないかと考えています。そして今後1年のうちに売上(によるキャッシュイン)が大体1,114億円付近にまで回復すれば、まずは危機を乗り越えられたと考えて良いのではないでしょうか。いずれにしても現段階で事業の継続に疑義が生じるような懸念はなさそうです。

次回はJALの分析もしてみたいと思います。JALは2010年1月19日に会社更生法の適用を申請して経営破綻しています。負債総額は2兆3200億円と事業会社としては過去最大規模でした。直近のJALの財務諸表を見ていないのでどんな数字になっているのだろうか。。。
こちらの記事に当時の概要があります。

読んで頂きありがとうございます。m(__)m


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