航空業界の業績と今後について(JAL編)

先日ANA編を書きましたので、今日はJAL編を書いていきます。分析は結構緩めですし、ほぼBS/PL/CFからしか見ていないので、定性情報やその他詳細情報にご興味があればこちらのJALのHPから詳細確認できます。

早速ですが、まずは財務諸表を見ていきたいと思います。

1.JALのPL分析

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JALはIFRSを適用しており、原価と販管費の区分がわかりにくいで以下に前連結会計年度の有報を貼り付けました。

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これを見ると営業収益が14,872億円から14,112億円に760億円減少しているのですが、事業費が10,752億円から10,761億円に微増しています。損益分岐点分析をせずに、粗利率を見てみます。19年3月期が27.7%、20年3月期が23.7%です。3月にコロナの影響が若干出ている、と解釈すれば良いのかもしれません。営業利益率としては、それぞれ11.8%、7.1%となっています。実はANAと比べると若干高い営業利益率となっています。ANAは19年3月期が8.0%、20年3月期が3.1%です。また、ANAの粗利率は19年3月期が24.2%、20年3月期が19.8%となっています。

まとめると以下のようになります。

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売上規模に関してはANAが年間で1.9兆円から2兆円くらい、JALは1.4兆円から1.5兆円くらいです。ANAの方が売上規模が大きいものの利益率が若干低いという事で、ANAが拡大路線というざっくりとしたイメージを持ちました。

次に、BSの方を見てみたいと思います。

2.JALのBS

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現預金と短期債権を合計すると2020年6月末で468,874です。では、短期負債はどうでしょうか。

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その他の金融負債は、ざっくりと全部計算に含めてしまいます。そうすると、営業債務、有利子負債、その他金融負債の合計の2020年6月末の残高が154,604となります。資産側の468,874とネットすると314,270となります。結構現金残高ありますね、という感じなのですが、やはりJALも借入を行っているようです。以下に示すように230,323の長期借入です。

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改めてJALの営業キャッシュフローに目を向けると、以下の通り2020年第1四半期では▲130,211となっています。単純に3ヶ月で割ると@43,403/月のマイナスです。

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こう考えると、上記で計算した手元のキャッシュである314,270をひと月当たりの営業キャッシュのマイナス43,403で割ると7.2ヶ月で資金が枯渇することになります。そして、やはりJALもコミットメントラインを締結しており、金額は150,000です。

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これも踏まえると150,000を43,403で割ると約3.5ヶ月となります。上記の手元の金額と合わせると10.7ヶ月になり、今の苦しい状況が10ヶ月続いても凌げる見込みがあるという事になります。概ねANAと同じような状況かと思います。

3.ANAとJALは結局どうなるのか

今後コロナによる経済的なダメージがどこまで続くのかが読めない中では、何とも言えない状況が続きそうです。ただ、現時点で言えることとしては、10年前のJALの経営破綻時と比べると、資金繰りの状態から判断してまだそこまでは逼迫した状況ではないかと思います。

ただ、今後という意味ではかなり大規模な改革が求められるのではないかと思います。特にビジネス利用の観点からは、出張が今後も減少したままという事が十分にあり得ますし、少なからず公共性もあるビジネスなので簡単に不採算路線を撤退できないという事もあるのではないかと思います。今回見てきたようにANAやJALが短期のうちに経営破綻する可能性は低いと思われるものの、繰り返しになりますが、今後の航空業界においては大きな変革が生じる可能性が高い、あるいは変革を実行出来なければ生き残っていくことが難しいと考えて良いのではないでしょうか。

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