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海外動向 6/26〜7/2

当研究所では、ケーブル業界の独自の視点で放送・通信・メディア等に関する海外動向の調査・分析を行っております。このノートでは、おもに海外で一般に公開されたニュースや企業からの発信情報をもとに興味深いものをご紹介します。

◆ 今週の重要トピック

Charterが加入者向けにDisney+とParamount+を無料化した動きが広がり始めています。RogersがDisney+を、衛星TVサービスのDishがNetflixを無料でバンドルすると発表しました。背景にはテレビ加入者を巡る熾烈な競争があり、また配信サービスを束ねシンプルでリーズナブルにできるバンドル化の流れがあるようです。

◆ 業界動向

カナダのRogersがDisney+を無料バンドル

Rogersの固定ネットとTVサービス「Ignite TV」をセットで契約している加入者が対象です。Disney+の月額7.99ドルのプランが無料となります。記事では、まだ速報で確認されていないニュアンスとなっていますが、RogersのWebサイトにはすでにFAQが掲載されています。FAQによると、以前からDisney+を契約しているユーザーはRogersにコンタクトを取ることで無料にできると書かれています。

米国の衛星TVサービスDishがNetflixを無料バンドル

DishがNetflixの無料バンドルを開始。こちらは既存顧客が2年間の再契約を締結した場合に限られます。月額6.99ドルの広告付きスタンダードプランが無料になります。DishはTV契約者の解約が止まらず626万世帯まで減少しています。これを抑えるための措置。サービス面でもDishの多チャンネル放送とNetflixを統合し、両者の切り替えをシームレスにしています。

Verizon、固定ネットに配信サービスをバンドルした「myHome」を発表

モバイルネットに配信サービスをバンドルした「myPlan」を固定ネットユーザーに提供します。広告付きのNetflix・Maxセット、Disneyバンドル(Disney+, Hulu, ESPN+のセット)などがそれぞれ月額10ドルになるほか、AppleのバンドルサービスApple OneやApple Musicファミリープランも今夏後半に提供予定ということです。

Comcastが法人向けサービスで5年間の価格固定キャンペーンを実施

米国では固定ネットも値上げが頻繁に行われていますが、これを逆手に取ったキャンペーンです。法人向けのサイバーセキュリティサービスと固定ネットサービスを6月24日から8月21日までの期間に新規に契約した顧客が対象です。

NetflixがMicrosoftとの広告分野でのパートナーシップ契約を延長

Netflixは5月に独自の広告プラットフォームを2025年末までに構築すると発表していましたが、軌道修正が入ったようです。広告主はMicrosoftのAdvertisingネットワーク(システム)を通じて広告の出稿管理を行います。

Liberty Broadbandが8億ドルのシニア債の募集を計画

償還期限は2054年で、CharterのクラスA普通株式と交換が可能です。債券販売による収入は既存債務の返済、および一般的な企業活動に用いるとしています。Liberty BroadbandはCharterやアラスカGCIを傘下に持ち、時価総額は75億1000万ドル、2024年第1四半期(過去12ヶ月)で75%という堅調な売上総利益率を誇ります。

米国、7月1日から地上波でFASTを「放送」

全米に多くの放送局を持つE.W. Scrippsが、地上波でIon PlusのFASTを放送します。Ion Plusは引き続き配信でも提供されます。米国では徐々に放送、配信の境目が曖昧になりつつあるようです。

◆ メディア

米国では配信サービスへの支払額が月額63ドルに減少

Parks Associatesによる調査レポート「Video Services Dashboard」によるもの。これによると2021年の90ドルから30%減少したとあります。過去1年以内に配信サービスを契約した世帯に理由を尋ねたところ、32%が家計支出の削減を挙げています。このほか、価格の安い広告付きプランへの移行やFASTの普及も要因のようです。

米国、配信サービスの視聴でテレビを最も使うユーザーが55%という調査結果

広告関連企業であるMolocoが調査会社YouGoVと共同で発表した調査レポート「Consumer Perceptions of Ads on Streamers Survey 2024(配信サービス上の広告に関する視聴者の意識調査)」によるもの。1000人以上から調査した結果です。これによると配信サービスの視聴で最もよく使うデバイスはスマートテレビが55%でトップ、続いてモバイルデバイスが24%、PC 13%となっています。また調査対象の42%が従来のTVサービス(放送、ケーブルの他チャンネルなど)を使っておらず、さらに22%が使用中止を検討していると答えています。

米国、NetflixがTV(放送・配信)サービスブランド調査で5年連続の1位

Solutions Research Groupが5月に12歳以上の1400人を対象にした調査結果です。放送やFASTを含む配信サービスが対象。2位以降はABC、Amazon Prime Video、CBS、FOXと続きます。FASTのランクが上昇しているのも特徴で、Tubiが28位から14位、Pluto TVが35位から20位になっています。放送チャンネルも数多くランクインしていますが、対象を25〜54歳の女性に限るとトップ10中7つが配信サービスとなります。

米国での配信サービス、Apple TV+がParamount+を抜きシェア6位に

9to5Macによる2024年第1四半期のレポートによると、Apple TV+は第1四半期からシェアを1%増やし、Paramount+を抜いたということ。トップはAmazon Prime Videoの22%、続いてNetflix 22%。ただNetflixの方がシェアを増やす動きが強いということです。表記では小数点以下が省かれているためわかりにくくなっていますが、小数点以下の僅差で差があるようです。

配信サービス大手の番組制作数の推移、AmazonとNetflixで過半数を上回る

Ampere Analysisによる2024年第1四半期までの調査結果です。制作費ではなく制作数、公開数ではなく発注数です。ワーナーやParamountが制作数を削減しているのに対し、AmazonとNetflixは第1四半期に急激に数を増やした結果です。

米国、子供番組の視聴スタイルがケーブルからYouTubeへ

Precise TVとGiraffe Insightsによる調査結果です。どの時期、期間の結果かは書かれていませんが、YouTubeを利用する子どもが30%増加した一方、それ以外の有料配信サービスは53%減少、無料配信サービスも40%減少したということ。この有料・無料配信サービスにケーブルでの視聴が含まれるようです。

E-SportsのワールドカップをDAZNが配信

7月4日からサウジアラビアで開催される第1回大会がDAZNのプラットフォームを使い無料で配信されます。8週間に渡り22のゲームが行われ賞金総額は6000万ドルと大規模なものです。

◆ インフラ

2024年第1四半期での世界の5Gモバイル契約者は17億人

Ericssonによるレポートです。第1四半期には5Gユーザーが1億6000万人の増加、2028年には4Gを抜き、2029年には56億人、全モバイル契約の60%を占めると予測しています。5Gの普及率は2023年末の時点で北米が59%、北東アジア41%、GCC 34%、西欧 26%。これが2029年には北米が90%、GCC 89%、西欧 86%。北東アジアがどうなるかは書かれていません。

GCC:Gulf Cooperation Council、湾岸協力理事会。サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、オマーン、カタール、クウェートの6カ国で構成。

米国、モバイルのネットのみで映像視聴するユーザーが6%に

記事はOoklaが発表した5Gサービスのネット速度の推移についてですが、興味深いのは5Gが普及・高速化することで、家に固定ネットを引かず、FWAも使わず、モバイルのネットサービスのみで映像視聴などを行う世帯が増えていることです。なお、モバイル3社の5G速度比較ではT-Mobileがトップ、続いてVerizon、少し離されてAT&Tという結果になっています。

カリブ海地域のブロードバンド事情

Ooklaが2024年第1四半期のレポートを公表しています。これによると同地域はネットの高速化が急速に進展しており、ダウンロード25Mbps、アップロード3Mbpsを超える計測数(OoklaのSpeed Testによる計測結果)は、2020年の45.3%から2024年には73.3%に増加しています。ネットの平均ダウンロード速度が最も速いのはトリニダード・トバゴで110.26Mbps、逆に遅いのはキューバの2.72Mbps。この地域の特色とも言えるのが衛星ネットの位置付け。Starlinkを使った計測数がこの1年間で85.8%増と急激に増えており、また平均速度も固定ネットより衛星ネットの方が速い地域が多いということです。

ドイツ、「5G放送」への高い関心が調査結果から明らかに

調査会社Kantarがドイツ国営放送ARDの協力を得て実施した調査結果です。2024年4月末から5月初めにかけて16歳以上の2000人からの回答を分析した結果です。5G技術を使った放送サービス「5G Broadcast(5G放送)」に対して66%がネットを使う配信サービスの代替手段として関心を示しています。

衛星ネットサービスKuiperのサービス開始が2025年に遅延

SpaceX(Starlink)の競合で、こちらはAmazonによるもの。元々は2024年前半に3200基以上の衛星を打ち上げVerizonなどのモバイル事業者とのベータ試験を目指していましたが、今回の発表では10月からの3ヶ月間で最初の量産衛星を打ち上げるとなっています。

◆ 業界再編(M&A)

IACがParamountの買収を検討

まだ噂・憶測の段階です。IAC(InterActiveCorp)は米国のメディア企業で2010年まではLiberty Mediaが筆頭株主でしたが、その後、離脱しています。

Nokia、光ネットワークのInfineraを23億ドルで買収

Nokiaが事業の再構築を進めています。Infineraは米国企業でWDMベースの光伝送装置などISP向けの通信機器ベンダーです。

Chicken Soup(チキンスープ)が経営破綻

意味不明のタイトルになっていますがChicken Soup for the Soul Entertainmentという会社が連邦破産法の申請を行なったものです。この会社はメディア事業を行なっており、自販機を使い24時間DVDをレンタルできる事業を展開しているRed Boxを2022年に3億7500万ドルで買収していました。このRed Boxは、ハンバーガーチェーンのマクドナルドが事業拡大策として創業した会社です。

◆ その他

Netflixが企業行動指針をアップデート、さらなる高みへ

共同創業者で前CEOのReed Hastingsが15年前に初版を公開、以後、4回目の更新です。一つ前の版は2022年5月に公開されており、それより4割ほど短くなっています。内容は引き続きとても特徴的で日本の一般的な企業が定義する行動指針の対極にあるといっていいほどです。

Netflixで働く人たちのことを「talented overachievers(他人より優れた才能ある人)」と位置付け、「super-direct in its feedback and doesn't foster a ton of job security(上下階層の少ないフラットな組織で雇用があまり保証されていない)」会社であるとしています。このため社員には自由が与えられると共に自己責任が求められます。たとえば休暇などは自由に取得でき、経費をいくら使うかも自由ですが、その結果、会社が求めるパフォーマンスを発揮できなければ雇用は維持されないというもの。発想の根底には「今日を最悪と考え、明日にはこれを改善できる人」があるようです。これらを「Netflixはプロスポーツチームのようなもので家族ではない」とまとめています。

米国のメディア業界で法務責任者に最も高給を払っているのはNetflixとDisney

少し変わった切り口の記事です。メディア各社の法務責任者の年収が書かれており、それによるとNetflixの社内トップ弁護士は1370万ドル、Disneyの法務部長は1170万ドル。これに続くのがComcastの1120万ドルです。ただ、この3社が際立って高給を払っているというわけではなく、記事中のリストでは最も給料の低いBuzfeedの110万ドルまでなだらかなカーブとなっています。

英国でのTaylor SwiftのコンサートによりEEのモバイルトラフィックが記録更新

英国のモバイル事業者EEによる公式プレスリリースで発表されています。6月21日から3日間、Wembleyスタジアムで開催されたコンサート中に記録されたもの。最も多かったのが6月22日で5.57TBに達したということです。以前、ポルトガルのVodafoneも同様の公式発表をしていました。ヨーロッパのモバイル事業者はテイラーネタがお好きなんでしょうか。

監修者・執筆者:J:COM あしたへつなぐ研究所 編集メンバー

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