私の海外赴任体験記(前編)

今週は前回に引き続きサステナの記事でも書こうと思ったのですが、今の私の知識経験では基準の切り貼り以上のバリューを出せる自信がないため、てりたま氏の下記記事に乗っかり、私の監査法人での米国赴任時の思い出話でもしようと思います。雰囲気だけでも掴んでいただけますと幸いです。
個人的経験に過ぎない上、もう10年程前の話なので、今の運用と異なる点が多々あり得る点はご容赦下さい。

こちらは4年以上前ですが、Xで以下の投稿をしたこともあり、宜しければ合わせてご覧下さい。

(あと、昔は以下のテーマをmomentに纏めたのですが、この機能は廃止になり見れなくなりましたね…。)


概要

所謂駐在員ではなく、若手向けの派遣プログラムで、期間は2年程度と短めでした。
一応ジャパンデスクの一員でもありましたが、てりたま氏のように日系企業を幅広くサポートする役割ではなく、現地の監査チームに放り込まれて普通に監査の仕事をしていました。
営業活動的なことは、赴任期間を通算して数時間程度だったと思います笑

どうしたら赴任の機会を得られるかに関しては、同じくてりたま氏の以下のNoteでほぼ網羅されています。敢えて付け加えるなら、現地の監査現場に放り込まれる分、英語力の要素が若手派遣の方が高いかな…という印象です。

仕事

前述の通り監査部門の一員として派遣されたのですが、私の赴任地は日系企業もそれなりにあったので、まずは日系企業の監査チームに入りました。
上司は日本人中心、スタッフは日本人以外も割と入る感じです。大都市であれば日系企業も日本人スタッフも多く、雰囲気が日本寄りなことが多いようです。一方、日系企業の閑散期においては、紆余曲折ありながらも現地の監査チームにも、日本人1名で放り込まれました。
日米の監査実務は昔より近づいてきたとは思いますが、当時私が感じた主なギャップは以下の通りです。

文書化!文書化!文書化!

ちょうどReview ControlやIPEが盛り上がっていた頃でもあり、ただでさえ英語なのに文書化のボリュームがとんでもない事になっており、前期調書の内容を掴むだけで1日が終わることもありました。
要求事項自体は正論なので、何とかするしかなかったのですが、Controlの深堀をしようと思っても「そんな事考えているわけないだろメーン」的な感じでドヤ顔をされる経理Manager等もいて、どう終わらせようかと頭を抱えることも多かったです。

一方、ボリューム満点の調書もよく見ると出来レース的というか、分析の推定値をあれやこれやと理屈を付けたと思いきや、結果は推定値通りで問題なし、みたいなものも散見され、一体何のための仕事なんだろうと思ったこともあります。

干される日々

日系企業の繁忙期までは忙しくもずっと仕事が続いたのですが、6月から急にアサインが空っぽになりました。
冷静に考えれば当然なのですが、聞いたこともない英語が中途半端な日本人で、担当クライアントは過去日系企業ばかりとなると、ただでさえ予算に厳しいチームに入れようとは思わないでしょう。

当時は毎週のようにアサイン担当者と面談して、とにかく仕事が欲しい、私はこれだけの経験があるんだとアピールをしていました。
その結果一瞬入るアサインも、次の日には担当チームの判断でリリースされ、いかに自分が無価値なんだと感じる日々でした。

最終的には、私も大好きになった現地のチームに固定で入ることができたのですが、その前は基本干され、入ったとしてもMaterial Weakness & GC疑義 & 大型M&A直後という、割とブラックな案件で夜中まで働く日々でした笑

欧米では~WLBが整っていて~とは?

個人的な感覚ですが、フルタイムに限定すると日本は平均的によく働きますが、米国はかなりバラつきがある印象です。
監査人(英語で"public accounting"と言うみたいです。最初は公会計のことかと思っていました)は上から下まで皆がむしゃらに働いている一方、彼らの中の少なくない人が、早くこの苦行を抜けて、事業会社(こちらは"industry"と言っていました)のAccounging Managerになり、9時5時の生活を手に入れる、なんて言っており、日本の多忙な経理職の方々を見てきた自分としては、こんなに違うんだなあと思ったものです)。

監査人の大変な日々は、youtubeで"public accounting busy season"なんて検索すると、色々臨場感のある話が出てきます笑
(例えば以下の動画は、古いので表現が色々アレですが、忙しい時はチームでこの動画を見て、まだ大丈夫だと笑いながら慰め合っていました)

スタッフのレベルのバラつき

人間である以上、仕事の出来不出来は相性等も考慮すると出るものだとは思いますが、米国においてはより顕著でした。
米国ではスタッフ2年、シニアスタッフ3年、マネージャー3年、シニアマネージャー●年、が基本的なキャリアパスだった気がしますが、5年でシニマネに上がる人もいれば、2年目の人事評価で躓き残念ながら早々に辞めざるを得ない人もいます。
基本的に仕事には前向きで賢い人が多かったのですが、時々外れ値的に両者に欠けている人がおり、そういう人が若くして去ることが多かったです。

なお、よく言われるように、会計基準に対する知識量は日本の会計士の方がずっと上です。
ただ、個人的な観察では以下の観点から、特に日系企業以外においては、そもそもその点に重きが置かれていないのでは?と思っていました。

  • 豊富なリソースにアクセス可能なので、監査上の論点になってからそれを使ってじっくり考えることが可能

  • 日本に比べて、会計相談対応が監査人の期待値としては低め(アドバイザリー側か、それ専門のコンサルに相談している?)

待遇面

監査法人の海外派遣の待遇が悪すぎるという話はよく聞きますし、実際に皆様がイメージされるような華やかな海外生活とは縁がありませんでした。
とはいえ、出国時帰国時の一時金や航空券等の諸々のコストは負担してくれますし、家賃補助もちゃんと出ます。

これは一部地域、かつ監査部門だけかもしれませんが、私の経験上ではBig4の給与テーブルが現地のFortune500企業等の大手優良企業に比べて低く(パートナーを除く)、スタッフは実家暮らしorルームシェアが一般的でした。

要は、派遣されているのはそういう場所なわけですし、日本企業の駐在と異なり、特に若手の派遣の場合は赴任地も含めてかなり希望を聞いてくれる環境にあるわけなので、補助の多寡は自由と引き換えなのでは?と思っており、合理的な水準ではないかなと個人的には考えています。

敢えて言うなら、上記のような自由意志が相対的に小さいジャパンデスクの駐在員に関しては、補助等のレベルが若手の派遣と同じレベルなのであれば、もう少し考慮してもいいかもしれません。

まとめ

かなり端折って書きましたが、この時点で3,000文字に近づいてきたので、前編はここまでとします。
後編では仕事の面をもう少し具体的に深堀しつつ、もう少しテーマを広げて、米国での日々で印象に残ったことを記載したいと思います。