識別証も身分証明書もなく宮島へ入島できました

かねてから「問題あり」とお知らせしてきたことが、今日18日の正午から始まりました。
G7広島サミットの開催に関連した「宮島への入島規制」です。
これまで、廿日市市やサミット県民会議事務局、外務省などに対し、入島を制限する法的根拠などを問い合わせてきた私たち市民4人は、きょうからの措置を確認するために現地に出向きました。
そして、識別証も持たず、本人確認のための証明書も提示しないで、何の規制も受けずに、宮島に渡ってきました。

<この事実は、何を物語るのか>
いくつかの問題点があると思います。
きょうの外務省の対応を見て感じるのは、「強制的な入島規制は、法的な根拠がないので強制できない」という判断を、責任官庁である外務省自身は初めから持っていた?

では、なぜ、私たちは、「事前に識別証を取得した者しか入島できない。それ以外の者は入島したらいけない」という風に、受け止めてしまったのか?

メディアの報道を見てそう感じた?
では、メディアは、なぜそのように報道し続けたのか?
外務省の意向を受けた地元自治体が、よりオーバーな発表をしたのではないか?
発表を受けたメディアは、「大本営発表」よろしく、何の疑問も持たず、発表の通りに伝えた?

これらの疑問について、皆さんはどう受け止めますか?

<きょうの現地でのやり取りを、簡単に振り返ってみます>

研究者2人と、フリーのジャーナリストを自任する2人、の計4人は、午前11時40分ごろ、宮島に渡るフェリー乗り場の改札口前に集まりました。

まだ規制がかかっていない正午前だったので、まずは島に渡って、島内の様子を見てみようとフェリーに乗りました。

島内の様子を視察して、13時ごろ本土側に戻り、食事をした後、14時ごろ、今度は入島制限の措置が実施された後のフェリー乗り場に再び向かいました。

いよいよ、入島規制現場でのやり取りです。
改札口の前のチェックポイントで、「私は識別証を持っていない」「本人確認できるものも持ち合わせていない」ということを伝えたうえで、「宮島に渡りたい」「なぜ渡れないのか」というやり取りを窓口で続けました。やがて外務省の職員が出てきました。

私たちは、次のように言いました。

◆外務省が、私たちをあくまで「法的根拠はないけれども、入島はさせない」と言い張るのであれば、「あなたは入島できません」という一文を書いて私たちに渡してほしい。
◆今後、私たちは法的な措置をとるかもしれないので、外務省は私たちの入島を許さなかった、という証明になるものがぜひ欲しい。だから、書いてほしい。そのメモを渡してもらえば今日は引き揚げる
と主張しました。

この私たちの主張に対し、外務省の職員は、「私たちがやっていることは、あくまで要請です。宮島に渡らないでほしい、というお願いです」と繰り返しました。
再び、やり取りが続き、14時半を過ぎました。
この時点で、外務省の言い分は、「識別証はなくても、保安検査(荷物チェック)をしたうえで本人確認ができれば、入島できる(=入島を認める)」という言い方に変わりました。

私たちは、「外務省が、『これは要請=お願いであって入島禁止措置ではない』というのなら、私たちはあくまで、法的な根拠にもとづかない、そのような要請は受け入れられない」と伝え、行動に移りました。荷物検査をスルーし、改札口でチケット代を支払い、そのままフェリーに乗りました。
何の規制を受けることもありませんでした。
島に渡り、とんぼ返りで宮島口に帰ってきたのは、3時半ごろでした。

以上が、宮島入島に至る簡単な報告ですが、午前中も午後も、本土側のフェリー乗り場や宮島の島内には、多くのTVクルーや報道カメラマン、記者たちがいました。

どうやって島に渡ったの?と尋ねると、「規制がかかってない午前中に早々と島に渡り、取材を済ませた」「私たちは、識別証を持っていないので・・・」という返事でした。

私たちが、「僕たちも識別証は持っていない。でも、本人確認もしないまま、島に渡れたよ」と伝えると、ポカンとした感じでした。

蛇足ながら、以前に、識別証を申請して外務省に拒否された記者の話を聞いたことがあります。

記者いわく。「取材をするために、早い段階(3月?)で識別証を申請したのだけれども、地元自治体からの問い合わせに対し、外務省が『取材記者に識別証は出すな』と指示したため、私たちには識別証が与えられず、取材で島に渡れない。私たちこそ最大の被害者だ」というものでした。

これって、いったい何なのでしょう。

「法の支配の確立」をうたうG7広島サミットのために、主権者たる国民・市民の移動の自由・交通の自由が、法的根拠が一切ないままに奪われる事態が起こったのです。

その事態を認めるような報道をメディアがしたために起きた事態とも言えます。
しかし、メディア自身も「報道の自由」「国民の知る自由」を損なわれるような事態を自ら招き、それを甘受している。

憲法違反の事態が、サミットを契機に、広島で堂々と起きているのです。

黙っていては、私たちの権利が、支配者によってどんどん奪われてしまう、ということではないでしょうか。(難波健治)

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