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いま自民党政権を倒さないで、いつ倒すのか?

2つの市長選の結果が示したもの

2月4日投開票の京都市長選に注目した。自民党派閥の政治資金パーティーによる裏金問題が投票結果にどう影響するか。投票6日前の読売新聞は「自民、立憲民主、公明、国民民主の4党が推薦する元内閣官房副長官の松井孝治氏(63)と、共産党が推薦する弁護士の福山和人氏(62)が横一線で競り合い」と書き、世論調査で「自民派閥による政治資金規正法違反事件を投票の判断材料にするかを尋ねたところ、『する』が51%、『しない』が44%」だった、と報じたからである。

与野党4党対共産1党の構図で、結果は、松井氏17万7454票、福山氏16万1203票。投票率は41・67%で、前回・4年前の選挙より0・96ポイント高かった。

同じ4日に投開票されたもう一つの市長選挙の結果にも触れておきたい。群馬県の県都・前橋市。こちらは、はっきりした与野党対決の構図で、無所属新人で立憲、共産など野党側が支援した小川昌氏(41)が、自民党と公明党が推薦した現職の山本龍氏(64)を破った。6万486票対4万6387票。投票率は39・39%で、前回・4年前を3・77ポイント下回った。

群馬と言えば、福田赳夫、中曽根康弘、小渕恵三、福田康夫という4人の総理大臣を輩出し、県内選出の国会議員は、衆院5選挙区、参議院の2議席すべてを自民が独占する〝保守王国〟である。

これら首長選挙の結果をどう見るか。私は、自民に対する立憲の立ち位置に注目した。今後の分析や動向を見守りたい。 

「幕引き」ありえない。派閥「解散」も効果なし

「裏金問題の『幕引き』と派閥『解散』」をテーマにした出稿を依頼された。その後の経過も踏まえると、「幕引き」は決してできないだろう。幕引きのために岸田文雄首相が仕掛けた「派閥解散」は、表明した途端、「これは目くらましだ」と多くの市民から見透かされた。

2月5日付の中国新聞が、3、4両日に共同通信社が実施した世論調査結果を載せている。裏金の使途について「説明する必要がある」との回答が84・9%に上った。内閣支持率は24・5%で、前回調査(1月13、14両日)を2・8ポイント下回った。岸田内閣としては最低水準だ。裏金事件を受けた党改革中間報告で、自民が「信頼回復できる」は9・7%、「信頼回復できない」は87・0%だった。 

パーティー券事件の真相・深層

事件の経緯を振り返ってみる。そもそも検察を動かしたのは、「しんぶん赤旗日曜版」の調査報道と、これを受けて自民党の派閥ごとに告発状を作成し、検察庁特捜部に送り続けた上脇博之・神戸学院大教授だ。

その上脇教授は「自民党の派閥収支報告書を見て驚くのは、政治資金パーティーが占める割合の多さだ」と語る。

政治資金パーティーとは、世に言うパーティーとはまったく違う。券の購入者は、その場で提供される飲食などに期待するのではなく、最初からお金を寄付するつもりでパーティー券を買う。

寄付の場合、1年間にその額が計5万円を超えるとそれぞれの寄付額について、いつ誰がいくら出したのか。その明細を提出しなければならない。

ところが、パーティーだと、この透明度が極端に低くなる。1回のパーティー券購入費が計20万円をこえなければ明細はいらない。個人で政治家を支援したくて2万円の券を1枚、自腹で買う人もいるが、ほとんどは企業とか業界の政治団体がまとめて買うのが通例だ。

そうすれば、こんなやり方がまかり通る。政治家が年に5回パーティーを開き、ある企業に毎回20万円ずつ、計100万円買ってもらったとする。買った会社の名前はどこにも出ないのだから、会社名を書きたくない、書くのがまずい企業は、パーティー券を介して政治家とウィンウィンの関係がつくれる。寄付だと年間6万円でも名前が出てしまうのに、20万円ずつ分けてパーティー券を買えば、政治家と企業との関係を隠せるのだ。

このようにして巨額の裏金をつくっていた。収支報告義務のない企業団体はどれだけパーティー券を買ったのか闇の中。「だからいまわかっている金額は、『氷山の一角』である可能性が高い」と上脇教授は指摘する。 

これは30年前の「政治改革」の失敗だ

こんな仕組みはいつできたのか。あらためて考えてみる必要がある。
研究者や評論家のには、30年前の「政治改革」の失敗を指摘する人が多い。1994年に成立した政治改革4法のことだ。小選挙区比例代表並立制と政党助成金の導入を柱とする「政治改革」だ。この「改革」は当時、政党助成金について「国民一人当たりコーヒー一杯分で、きれいな政治が実現する」と喧伝された。実際にはその裏で長年にわたり、自民党組織を挙げて裏金づくりが続いていた。

国会でのやり取りで岸田首相は、浮かび上がった改革の課題について、「真摯な議論」「各党と協議」のフレーズを繰り返すばかりである。「連座制」の導入には口をつむぎ、政策活動費の使途の公開にも慎重で予防線を張るのに懸命だ。問題の根源ともいうべき、企業・団体献金の廃止は真っ向から否定している。 

「政治とカネ」は「政治の〝金持ち支配〟」

裏金問題に耳目が集まる中、最近、岸田派による新たな疑惑が浮上したのをご存知だろうか。

一つは、『週刊ポスト』2月2日号が報じた「内閣総理大臣を祝う会」が岸田首相の政治資金集めの闇パーティーだったのではないかとの指摘だ。

発起人には広島県知事、広島商工会議所会頭など地元政財界の有力者11人が名を連ね、会費は1万円。飲食は一切なく、リーガロイヤルホテル広島の会場は満席で約1100人が集まった。この祝う会から岸田首相の政党支部に約322万円がその後寄付されたが、その代表者として名前を記載された人物は「パーティーンには出席したが、寄付など預かり知らんことだ」とコメントしている。

もう一つは、昨年12月に都内のホテルで開く予定だった会費2万円の「岸田文雄と国政を語る会」。裏金疑惑で延期したが中止はせず、「振り込み済みの会費は、日程が決まり次第、延期後の開催分とします」と連絡した(「しんぶん赤旗日曜版」2月4日号)。開催せず返金もしなければ、パーティー券収入は寄付となる。どの企業がいくら購入したのか。報告書で明らかになることを逃れるために、中止ではなく延期にしたのではないか、と国会で追及された。

首相が、自身のパーティーを中止にせず延期している意味は重い。それはパーティー券購入を含む企業・団体献金の禁止に切り込むつもりがないことを示している。〝やってふり改革〟にすぎないことは明らかだ。

広島でいわゆる「河井疑惑」が発覚して以来、私が考え続けていることがある。「政治とカネ」の問題とは、公職選挙法違反の買収とか、政治資金規正法に違反したカネのやりとか、違法行為に本質があるのではない。背景に「カネで政治を動かす」仕組みがあり、それは「政治の〝金持ち〟支配」につながっている。こんな風土からは、庶民や弱者を救済する政治は生まれない。私たち主権者は、深く自覚する必要がある。 

次は市民の出番だ

今回明らかになったのは、与党・自民党が組織的に延々と、堂々と、明白な違法行為を繰り返し、隠れ政治資金をつくってきた「構図」である。これだけの構造悪が私たちの眼前に突き付けられたのだ。

次に問われるのは、私たちの政治への向き合い方である。選挙で政治家を選べる有権者が、この状況をどう改めていくか。野党共闘のあり方を含めて問われている (難波健治 2月5日 記 反戦情報No473掲載)

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