習慣化するための工夫

 暑い日が続いていますが、みなさんいかがお過ごしですか?さまざまな意見がある中ではありますが、オリンピックが開幕し自宅から観戦・選手を応援されている方も多いと思います。躍動感のある姿、あふれる笑顔に感動し、スポーツの良さを改めて感じています。適度な運動の必要性は理解できる一方で、ステイホームやテレワークによる外出機会の減少も重なり、運動不足だなと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 厚生労働省による「健康づくりのための身体活動基準2013」1)では、ライフステージに応じた身体活動基準が示されており、身体活動量を増加させることは糖尿病や循環器疾患、がん、ロコモティブシンドローム、認知症のリスクを軽減することに言及されています。また、令和2年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」2)によると、成人の週1日以上のスポーツ実施率は 59.9%で前年度(53.6%)と比べ6.3 ポイント増加しており、全ての年代層で前年度を上回っていました。一方で、「運動不足を感じる」と回答した割合は79.6%で前年度(78.7%)と比較して0.9ポイント増加していることも報告されています。
 「新しい生活様式」において体を動かす工夫」3)では、新しい生活様式における身体活動のポイントが紹介されるなど、様々な情報の入手が可能ですが、加えてそれを習慣化していくことが重要です。習慣化していくには、身近で取り入れやすいことが大切だと考え、近年私たちの生活の中で目にすることの多いソーシャルメディアを利用した介入研究のレビューを読んでみました。

成人における健康行動の変化、健康アウトカム、健康の公平性のために、対話型のソーシャルメディアを介して提供される行動的介入
Behavioural interventions delivered through interactive social media for health behaviour change, health outcomes, and health equity in the adult population
4)

 このレビューでは、対話型のソーシャルメディア・プログラムが人々の健康にどのような影響を与えるかについて、下記の視点で検討されていました。
 健康行動(喫煙、飲酒、母乳育児、ダイエット、身体活動、受診や医療サービスの利用など)
・健康(体力、肺機能、喘息のエピソードなど)
・メンタルヘルス(抑うつ、ストレス、コーピングなど)
・ウェルビーイング(心身のみならず社会的にも良好な状態)
・対話型のソーシャルメディア・プログラムに関連して、望ましくない効果が報告されたかどうか。
 レビューの主な結果として、ソーシャルメディア(FacebookやTwitterなど)上で身体活動の増加を目的としたプログラムは、人々がより身体活動をすることを助け、人々の幸福度を向上させる可能性があることが明らかとなっていました。しかし、このようなプログラムに参加することに関連した望ましくない効果の有無については報告がなく、さらなる研究が必要であることが述べられていました。
 また、今回のレビューにおけるエビデンスの信頼度は全体的に低く、実施方法が明確に報告されていないことや、研究対象者自身がどのプログラムに参加しているかを知っていることで研究結果に影響を与えた可能性が指摘されていました。

今回の文献では信頼度の高いエビデンスは報告されていませんでしたが、私達の身近にあるソーシャルメディアを利用した健康増進につながるアプローチは習慣化の一手段として大変興味深く、さらなる研究が期待されるテーマだと思いました。適度な運動も、研究も、日々の積み重ねていきたいなと思います。

1) 厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013(概要)」: https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xppb.pdf (2021年7月26日確認)
2) スポーツ庁「令和2年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」」: https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1415963_00004.htm (2021年7月26日確認)
3) e-ヘルスネット「「新しい生活様式」において体を動かす工夫」: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-09-001.html (2021年7月26日確認)
4) Behavioural interventions delivered through interactive social media for health behaviour change, health outcomes, and health equity in the adult population : https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD012932.pub2/full/ja

(文責:山田)

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