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文献検索をやってみよう

これまでの記事では、システマティックレビューの紹介とともに、エビデンスの大切さについてお伝えしてきました。今回は趣を変えて、臨床の現場で事例報告や研究活動をする時に困る、文献検索について考えたいと思います。

私たち看護師は毎日、患者さんやご家族のために色んなケアや処置を行っています。患者さんごと、その日ごとに違う結果に対して、柔軟に看護計画を修正し対応しています。そして、医師や薬剤師、事務の方たちと連携して、その患者さんにとっての最善を目指しています。患者さんが退院したら、また次の患者さんがやってきて、同じようで全く違う看護の提供が求められます。

そんな忙しい毎日の中で、やってくるのが事例報告や院内看護研究です。「文章を書くのが苦手だから嫌だ」、「研究なんてやりたくない」、「早く帰りたい」と思ったことはありませんか。私は結構あります。院内の看護研究のメンバーに、どうやったらならずに済むか、それは病棟中の看護師の本音かもしれません。それでも師長さんに指名され、断ることもできず、他のメンバーと相談しながら、なんとなくこんなことをやってみようかなと思って報告すると、「文献を探しなさい」、「先行研究を探しなさい」という指導を受けるでしょう。

さて、困りました。学生時代にやったような気はするが、どうやればいいのか覚えてない。研究指導者さんに聞いてみましょう。指導者さんに研究経験があればわかりやすく教えてくれるかもしれません。しかし、実際は研究指導者さんでも文献検索について指導するのは難しいと感じているのです[1]。

私は大学で学生の研究指導をする際、まず初めに、次の「気になることシート」を埋める作業をしてもらっています。これは研究のテーマの方向性を決めると共に、文献検索をするキーワードを探すために使います。​

図1

1.誰について
気になることは患者さんについてでしょうか?それとも、家族さんでしょうか?一緒に働いている看護師や医師についてでしょうか?
もし、患者さんなら、何の疾患や障害を持っている方でしょうか。小児でしょうか、高齢者でしょうか。家族さんなら、それは特に誰でしょうか。

2.何について
気になることは治療についてでしょうか?ケアについて?入院や退院について?インシデントについて?
もし、治療なら、それは手術ですか?それとも内服ですか?ケアなら、どんなケアでしょうか。

3.どういう状況、どこについて
気になることは病棟の中のことですか?ICUですか?それとも在宅でのこと?地域生活のこと?

例えばですが、こんな表ができあがります。

図2

初めにでてきた「きょうだい」という言葉を、もっと具体的に言い換えることができれば、かっこの中に書いてもらいました。赤字は教員が追加したものです。キーワード検索でのテクニックとして、略語(QOL、quality of life)や同義語・類義語(夫婦、配偶者、夫、妻)、漢字の違い(斎藤、斉藤、齋藤)、翻訳後の違い(ペプロウ、ペプロー、Peplau)を考慮することがあります[2]。こうすることでより広く文献を探すことができるでしょう。

実際にやってみましょう。検索するときは、枠の中の単語を「or」でつなぎ、枠同士を「and」でつなぎます。医学中央雑誌で検索をしてみました。(検索日:2021/01/18)

図3

注)ここではキーワード検索で入れた単語のままで表示しています。実際は/THや/ALで表示されます。

「障害児」AND「きょうだい」AND「気持ち」だけでは9件でしたが、具体性や類義語を混ぜることで39件がヒットしました。8番の「家庭 or 在宅」にこだわらなければ、128件です。39個の文献を確認してから、時間に余裕があるなら128件の方も見てみるといいかもしれません。

このやり方、実はシステマティックレビューをやる時の簡易版です。システマティックレビューを行うときは系統的検索と言って、検索単語についてもっと吟味することになります[3]。現在、私が行っている質的研究のシステマティックレビューでは、対象者(Participants)と興味のある現象(Phenomena of interest)、状況(Context)の3つを徹底的に吟味して検索をしています。

文献検索は奥が深いものです。詳しく勉強したい方は「看護研究者・医療研究者のための系統的文献検索概説」[2]を読んでみるといいかもしれません。または、JBIが開催しているシステマティックレビューのセミナーに参加するのもおすすめですよ。

(文責:古藤雄大)

1) 路璐, 姫野雄太, 北池正, 池崎澄江. 病院内看護研究指導者の看護研究能力と指導上の困難について. 千葉看護学会会誌 2020: 26巻1号; 19-27.
2) 諏訪敏幸. 看護研究者・医療研究者のための系統的文献検索概説. 近畿病院図書室協議会 2013. 第1版. 66-68.
3) Aromataris E, Munn Z (Editors). JBI Manual for Evidence Synthesis. JBI, 2020. Available from https://synthesismanual.jbi.global. https://doi.org/10.46658/JBIMES-20-01

写真提供:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com), photo by エリー

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