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留岡幸助

「感化院設立の急務」
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監獄雑誌8巻1号 明治30年1月



  教誨師として接した監獄を改良し、犯罪者を改過遷善する方途を求めて渡米し、ゼブロン・ブロックウェイ(Zebulon Reed Brockway 1827–1920)のエルマイラ監獄で学んで明治28年4月に帰国した留岡幸助(元治元年(1864)年―昭和9(1934))は、非行少年の感化事業を「一路白頭に至る」仕事(This one thing I do.)とすることを決意した。この文では、「悪少年」を教育する感化院が確立されず、監獄に収容するほかない刑法の一大欠点を指摘し、成人の犯罪者と「犯罪の未だ其形を成さざる」非行少年を改良することを比較して、犯罪傾向が固まった者を改良するのは難しく、犯罪の始まった初期に防止するのはやさしいとして、未成年の感化事業による犯罪の減少を図ることが急務と主張している。(注)

 この後、留岡は実践に着手し、明治32年に東京家庭学校(巣鴨)、大正3年に北海道家庭学校(遠軽)を創設した。

(注)私立の非行少年施設としては、留岡より前に、明治16年に池上雪枝により最初の感化院、明治18年に高瀬真卿による東京感化院ができてはいたが、法的に制度化されるのは明治33年感化法による。(監獄協会雑誌13巻3号) 


(参考)旧少年法(大正11年)までの犯罪・非行少年処遇の経緯
                  (根拠法令・収容要件・対象年齢)
明治5年監獄則
懲役場
懲治監 (1)刑余懲治 20歳以下の懲役満期に至りて悪心未だ改悛せざる
      又は貧営生の計なく再び悪意を挟む嫌いある者
    (2)情願懲治等 20歳以下 11歳以上

13年旧刑法/14年監獄則(共に15年1月施行)
懲役場  12歳以上(犯罪の責任能力)
     16歳未満の者 是非の弁別のあるときは減刑
    (ないときは責任能力なし)
     16歳未満ノ者ト16歳以上ノ者 監房ヲ・・・別異ス
懲治場 (1)不論罪懲治 
     ア.犯罪時8歳以上12歳未満 16歳まで留置 
     イ.犯罪時12歳以上16歳未満で責任能力なし 
       情状により20歳まで留置
   (2) 情願懲治 8歳以上20歳以下 尊属親の願出

(参考)私立の感化院
明治16年 大阪に最初の感化院 
      池上雪枝(文政9(1826)年―明治24(1891)年)によるもの 
明治18年 東京感化院 
      高瀬真卿(嘉永6(1853)年―大正13(1924)年)によるもの

22年改正監獄則 情願懲治の廃止

33年感化法公布
感化院   8歳以上16歳未満の不良少年
     民法882条 親権者は裁判所の許可を得て
       (明治41年 18歳未満 大正11年 14歳未満に)

刑法・監獄法(41年施行)
監獄   14歳以上(犯罪の責任能力)18歳未満
    「特ニ設ケタル監獄又ハ監獄内ニ於テ特ニ分界ヲ設ケタル場所」 
     20歳まで継続可(更に例外も)(2条)

大正11年旧少年法 矯正院法(共に12年1月施行)
矯正・多摩、浪速少年(12年1月)
   監獄については上の監獄法と同旨の規定(9条)23歳まで継続可
   18歳未満
   (1) 犯罪少年(触法少年を含む)
   (2) 準犯罪少年(刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年)



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